2 / 4
第一章 心優しき聖女
00
しおりを挟む
「こりゃ酷い‥」
茶色のロングコートを着ている強面の男がデウセスの死体を確認に顔を引き攣らせる。口には硬い物を無理矢理捩じ込まれている為、顎は外れ、歯並びはおかしくなり所々抜け落ち。ベットには血肉が散乱しており酷い匂いを放っていた。
「うっ!!!」
スーツ姿を着た茶髪の青年は、悲惨すぎる光景と当たりに充満している悪臭に耐えきれず急いで部屋から飛び出す。その様子を見て強面の男はため息をつく。
「仏さんの前で失礼だろ。あいつ。」
髪をかき上げデウセスの死体を凝視する。男の瞳にはまるでゲーム画面のような表情が写っている。画面を慣れた手つきで触り"死因"を調べる。
『抵抗は‥出来なかったのか。腕と足に少量の魔力が付着してる。縛られてから口に凶器を捩じ込まれ死亡。十中八九、あいつの仕業だな』
近年、転生者達が何者かに暗殺されている。しかも殺されているのは転生者の中でもレベルの高い《救世主》と呼ばれる者達だ。
「デウセス‥‥」
男はデウセスの瞳孔の開いた瞳の瞼をそっと下ろし、口に回復魔術を行う。デウセスの顔はには固まった血は付着しているが生前の綺麗な顔に戻った。
「これくらいしか出来ない俺を許してくれ」
顔に白い布を被せ男は部屋を後にする。次に向かったのは妹エリシアの部屋だ。
「可哀想に‥」
まだ12歳だった少女の額には小さな穴が空いている。けれど死に顔はとても綺麗で今にも動き出しそうだ。
「あのぅ‥じ、ジャックさん‥」
「小峠。オメェは遺族の方々に今朝の事聞いてこい」
「は、はい!!」
男の名はジャック・ボーダイム。異世界初の探偵だ。さっきほどの茶髪の青年は小峠陽一。ジャックに命を救って貰った青年だ。この二人にはある共通点がある。それは──────《転生者》だ。
ジャックはこの世界に転生し45年。小峠は一年前に転生してきたばかりの新参者だ。けれど二人は《救世主》と呼ばれる程強力な力は持っていない。
『まあ、俺ら見たいな弱輩者を狙わないのは後から始末出来ると踏んでいるか──あるいは眼中にないかだな』
ジャックはポケットに入れた拳に力を入れる。探偵として働きはや20年。浮気調査やペットを捕まえるといった平和な日常を送ってきた彼だったが、一年前から発生している《救世主殺し》の犯人の捜索を親友の《救世主》に任され何度も現場に入った。けれど‥犯人はまだ見つかっていない。
「必ず見つけるからな。お嬢さん」
冷たくなった頬に触れ能力を発動させる。彼女の死因と何時何分何秒に殺されたのかは分かるが──殺人犯の部分はバグっており何が書いているか分からない。
『やっぱ分からんか。くそ‥』
エリシアの頬から手を離し踵を返す。次は遺族から聞き込みを────
「「いい加減にしてよ!!」」
下から半狂乱した女性の声が聞こえジャックは急いで遺族と使用人達が集まっている談話室に向かう。ドアを開けると二人の母リーゼ・ローゼンタールが花瓶を地面に叩きつけた後だった。
不規則な呼吸、美しい顔には血管が浮き出ており唇からは血が垂れている。メイドと陽一が落ち着くように説得しているがリーゼの怒りは止まらない。
「許さない!!あ、あ、あ。あの子達が何をしたって言うのよ!!許さないわ!!絶対に!!見つけたら拷問にかけてやるぅぅぅぅ!!!あ"あ"あ"あ"あ"あ"」
「奥様!!落ち着いてください!!」
「そ、そうですよ!リーゼ様!!。と、とりあえず座りましょう?ね?手とか口から血が出てますし!!」
「何があった!!小堺!!」
「ジャックさん!!」
ジャックは急いで小堺の側に近寄り状況を聞く。どうやら急に暴れ出したらしい。先程までは父レイス・ローゼンタールと同じく傷心しており小さな声で、何度も、何度も、何度もデウセスとエリシアの名前を呟いていたのだが急に────
「エリシア?デウセス?あ、ああああ!!!痛かったわね?!辛かったわよね?!」
と立ち上がり発狂してしまった。
「はな、離しなさい!!お前達ね!!お前達が私の愛しい二人を!!殺してやるぅぅ!!」
「小堺!!」
「へ?え?」
「"緩め"でやれ」
「‥‥うっす」
小堺は空手の構えを取り息をフッー‥と吐く。周囲の魔素が一気に薄くなりその場にいる者達は息苦しさを覚える。小堺の額から2本の赤い角が生え球結膜【きゅうけつまく】が白から黒に変わる。その姿はまさしく鬼だ。
「すんません‥少し寝ててください」
小堺の言葉がリーゼの耳と共に彼女は二人の愛しい子の呟きそのまま意識を失った。「フゥゥゥ‥」と角に溜めていた魔素を解放した小堺は尻もちをついた。
「あいつつつ‥」
「立てるか?」
ジャックが小堺に手を伸ばす。小堺を「あんがと」と言って手を掴みジャックの力を借り立ち上がる。メイド達はいきなり眠ってしまったリーゼを見てアタフタし始めている。
「眠っているだけなんで、すぐに起きますよ。えーーと三十分後くらいかな?」
「おま‥!?吸いすぎた馬鹿!!」
「‥吸う?」
「えっと‥俺は人のマナ?とかオド?を吸えるスキル持ってて。リーゼさんのマナをすこ~し吸いました。あ、ちゃんと戻したっすよ?!」
「す、凄い‥流石転生者様だわ」
「い、いやぁ~それほどでも」
照れている小峠に。照れてる場合か。とジャックは言いそうになったが唾と共に飲み込み、メイド達に昨夜の話しやその前に起きた出来事を聞く。───が誰一人として「"何もなかった"」と聞き二人は屋敷を後にする。
「あと一時間で医療班が来るってよ」
「じゃあメイコいるかなー」
「なに呑気な事言ってんだ。"また犯人が見つからなかったんだぞ"」
「‥‥だよな。ごめん」
小峠は屋敷をチラリと見やる。窓からリーゼが涙流しながら花園を見つめている。その様子を見て胸が苦しくなり目を逸らす。
「早く‥見つけよね。ジャックさん」
「たりまえだ。」『じゃねえとこいつが殺されるかも知れねぇからな』
夕日に照らされた二人は犯人を探す為また旅に出るのでだった。
茶色のロングコートを着ている強面の男がデウセスの死体を確認に顔を引き攣らせる。口には硬い物を無理矢理捩じ込まれている為、顎は外れ、歯並びはおかしくなり所々抜け落ち。ベットには血肉が散乱しており酷い匂いを放っていた。
「うっ!!!」
スーツ姿を着た茶髪の青年は、悲惨すぎる光景と当たりに充満している悪臭に耐えきれず急いで部屋から飛び出す。その様子を見て強面の男はため息をつく。
「仏さんの前で失礼だろ。あいつ。」
髪をかき上げデウセスの死体を凝視する。男の瞳にはまるでゲーム画面のような表情が写っている。画面を慣れた手つきで触り"死因"を調べる。
『抵抗は‥出来なかったのか。腕と足に少量の魔力が付着してる。縛られてから口に凶器を捩じ込まれ死亡。十中八九、あいつの仕業だな』
近年、転生者達が何者かに暗殺されている。しかも殺されているのは転生者の中でもレベルの高い《救世主》と呼ばれる者達だ。
「デウセス‥‥」
男はデウセスの瞳孔の開いた瞳の瞼をそっと下ろし、口に回復魔術を行う。デウセスの顔はには固まった血は付着しているが生前の綺麗な顔に戻った。
「これくらいしか出来ない俺を許してくれ」
顔に白い布を被せ男は部屋を後にする。次に向かったのは妹エリシアの部屋だ。
「可哀想に‥」
まだ12歳だった少女の額には小さな穴が空いている。けれど死に顔はとても綺麗で今にも動き出しそうだ。
「あのぅ‥じ、ジャックさん‥」
「小峠。オメェは遺族の方々に今朝の事聞いてこい」
「は、はい!!」
男の名はジャック・ボーダイム。異世界初の探偵だ。さっきほどの茶髪の青年は小峠陽一。ジャックに命を救って貰った青年だ。この二人にはある共通点がある。それは──────《転生者》だ。
ジャックはこの世界に転生し45年。小峠は一年前に転生してきたばかりの新参者だ。けれど二人は《救世主》と呼ばれる程強力な力は持っていない。
『まあ、俺ら見たいな弱輩者を狙わないのは後から始末出来ると踏んでいるか──あるいは眼中にないかだな』
ジャックはポケットに入れた拳に力を入れる。探偵として働きはや20年。浮気調査やペットを捕まえるといった平和な日常を送ってきた彼だったが、一年前から発生している《救世主殺し》の犯人の捜索を親友の《救世主》に任され何度も現場に入った。けれど‥犯人はまだ見つかっていない。
「必ず見つけるからな。お嬢さん」
冷たくなった頬に触れ能力を発動させる。彼女の死因と何時何分何秒に殺されたのかは分かるが──殺人犯の部分はバグっており何が書いているか分からない。
『やっぱ分からんか。くそ‥』
エリシアの頬から手を離し踵を返す。次は遺族から聞き込みを────
「「いい加減にしてよ!!」」
下から半狂乱した女性の声が聞こえジャックは急いで遺族と使用人達が集まっている談話室に向かう。ドアを開けると二人の母リーゼ・ローゼンタールが花瓶を地面に叩きつけた後だった。
不規則な呼吸、美しい顔には血管が浮き出ており唇からは血が垂れている。メイドと陽一が落ち着くように説得しているがリーゼの怒りは止まらない。
「許さない!!あ、あ、あ。あの子達が何をしたって言うのよ!!許さないわ!!絶対に!!見つけたら拷問にかけてやるぅぅぅぅ!!!あ"あ"あ"あ"あ"あ"」
「奥様!!落ち着いてください!!」
「そ、そうですよ!リーゼ様!!。と、とりあえず座りましょう?ね?手とか口から血が出てますし!!」
「何があった!!小堺!!」
「ジャックさん!!」
ジャックは急いで小堺の側に近寄り状況を聞く。どうやら急に暴れ出したらしい。先程までは父レイス・ローゼンタールと同じく傷心しており小さな声で、何度も、何度も、何度もデウセスとエリシアの名前を呟いていたのだが急に────
「エリシア?デウセス?あ、ああああ!!!痛かったわね?!辛かったわよね?!」
と立ち上がり発狂してしまった。
「はな、離しなさい!!お前達ね!!お前達が私の愛しい二人を!!殺してやるぅぅ!!」
「小堺!!」
「へ?え?」
「"緩め"でやれ」
「‥‥うっす」
小堺は空手の構えを取り息をフッー‥と吐く。周囲の魔素が一気に薄くなりその場にいる者達は息苦しさを覚える。小堺の額から2本の赤い角が生え球結膜【きゅうけつまく】が白から黒に変わる。その姿はまさしく鬼だ。
「すんません‥少し寝ててください」
小堺の言葉がリーゼの耳と共に彼女は二人の愛しい子の呟きそのまま意識を失った。「フゥゥゥ‥」と角に溜めていた魔素を解放した小堺は尻もちをついた。
「あいつつつ‥」
「立てるか?」
ジャックが小堺に手を伸ばす。小堺を「あんがと」と言って手を掴みジャックの力を借り立ち上がる。メイド達はいきなり眠ってしまったリーゼを見てアタフタし始めている。
「眠っているだけなんで、すぐに起きますよ。えーーと三十分後くらいかな?」
「おま‥!?吸いすぎた馬鹿!!」
「‥吸う?」
「えっと‥俺は人のマナ?とかオド?を吸えるスキル持ってて。リーゼさんのマナをすこ~し吸いました。あ、ちゃんと戻したっすよ?!」
「す、凄い‥流石転生者様だわ」
「い、いやぁ~それほどでも」
照れている小峠に。照れてる場合か。とジャックは言いそうになったが唾と共に飲み込み、メイド達に昨夜の話しやその前に起きた出来事を聞く。───が誰一人として「"何もなかった"」と聞き二人は屋敷を後にする。
「あと一時間で医療班が来るってよ」
「じゃあメイコいるかなー」
「なに呑気な事言ってんだ。"また犯人が見つからなかったんだぞ"」
「‥‥だよな。ごめん」
小峠は屋敷をチラリと見やる。窓からリーゼが涙流しながら花園を見つめている。その様子を見て胸が苦しくなり目を逸らす。
「早く‥見つけよね。ジャックさん」
「たりまえだ。」『じゃねえとこいつが殺されるかも知れねぇからな』
夕日に照らされた二人は犯人を探す為また旅に出るのでだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる