3 / 4
第一章 心優しき聖女
01
しおりを挟む
馬車に揺られテオは新聞を読んでいた。そこには‥‥
『ローゼンタール夫婦。二人の愛子に会う為後追い自殺?!』と不謹慎極まりない見出しが一面を飾っている。
「酷い‥」
「ああ、胸が苦しいよ。」
金髪の鎧をきた男性と青い柔道服を纏った黒髪の女性が呟く。テオは羽織っているローブで口元と目を隠し物思いに耽る。エリシアから言われた『魔王』が頭から離れない。
『俺が‥やっている事は‥』
「お前は神の贈り物だ」父はテオを抱きしめる。「貴方は私達の希望よ」母はエルピスの頬にキスをした。他の者達はテオを「勇者」や「救世主」と呼び崇めていた事を思い出す。少年はそうやって育てられた。別の世界現れ絶大な力を使い皆を救う存在《転生者》。けれど、自分を育てた人々は彼等彼女等を《魔王》と呼ぶ。だから戦う、だから殺す。だってそれが────────
『みんなの願いなんだ。』
ギュとローブを掴み体を埋める。少女言葉が頭の中から消えない。消えてくれない。間違ってない。俺は頑張ってる。皆んなを助けなきゃ。そうやってテオは自分に暗示をかけながら薬を飲む。
言葉が頭から消えてゆく。父と母。皆んなの声援が聞こえる。ローブで隠れた口の口角が少し上がり、目を閉じようとした時、
「ねぇ、貴方‥」
「!!!」
顔を上げると嘆いて女性がテオに話しかけていた。何故、話しかけられたのか理解出来ないテオは黙り込む。
「体調悪いの?もし良かったら治療するよ?」
「こら、千歳!!お前また、力を」
「でも、体調悪そうなんだもん!!」
テオは千歳に──スキルを使う。結果は《転生者》。《救世主》───ゼロ。鑑定結果を確認し瞼を閉じる。二人の言い争う声が聞こえる。
どうやら千歳は聖女らしいのだが力を使うと発熱を起こし三日は寝込んでしまうらしい。確かにそれでは《救世主》になれない。とテオは納得する。
「お前この前も使って寝込んだじゃないか」
「だって、ほっとけない‥。」
「別にいらないです」
「「え?」」
二人の喧嘩に嫌気がさしテオは口を開く。
「でも、顔色も悪そうだし‥!!」
「余計なお世話です。そもそも、赤の他人に治療して貰うなんて死んでもごめんです」
「な!お前!!」
「リック!!」
千歳は小さく「私は平気だから」と言ってリックを落ち着かせる。座ったリックを見てローブに隠していたナイフを収める。
「さっきはごめんね。君辛そうだったから‥」
「辛そう?」
「うん、顔も汗も凄い流れてたし。体震えてたんだよ?。」
ありえない。と言いたげな表情で千歳を見つめる。見開かれた赤い瞳を見て千歳はテオを抱きしめる。
「ちょ!、千歳!!」
「大丈夫。ここには"貴方を怖がらせる人はいないから"大丈夫だよ」
緊張の糸が切れたようにテオは意識を失う。千歳は彼を寝かせ光の魔術をかける。その様子をリックは不満そうに見つめていた。
「んで、助けるだよ。」
「‥‥似てたからかな」
「前に言ってた助けられた子供に?」
「うん、それもあるけど。あんなに"怯えてる顔"みたら咄嗟に体動いちゃって。私変かな?」
「‥‥まあ、いきなり抱きしめたのには驚いたけどよ。‥‥?!こいつよく見ればガキだぞ!?」
「背丈見れば分かるでしょ‥。15歳前後の子供だよ。」
スゥスゥと寝息を立てている少年にリックは驚く。先程の彼から感じた力は紛れもなく《救世主》レベルだ。肌もよく見れば千歳に近い色をしている。ならば彼は転生者なのだろうか?。───いや、違う。
確かに力も肌の色も転生者に似ているが女神の加護を受けていない所か違和感を感じる。なんだがこの少年を見ていると心臓を掴まれているような感覚にリックは襲われる。
「お、おい。その坊主なんだがやば‥「何してる」
「あ、起きた?」
「‥‥治療してたのか。俺を」
起き上がってテオは体から疲れが抜けていることに気づく。千歳は少し怒ったようにテオに質問を始める。
「君、しっかりご飯食べてるの?。休息は?。」
「食べ物は一昨日食べた。休息は一週間前に取ってる」
「な!!駄目よ!!死んじゃうわ!!」
「何で驚くんだ?。食べていたし休息だって取っているぞ」
「あのな。坊主。それは食べたとも、休息共言わん。」
「?」
「はぁぁ‥君予定とかあるの?」
何故そんな事を聞く。テオは疑問に思いつつ「ない」と答える。それを聞いて千歳はテオの両肩に手を置き
「なら、私達の住む村に来なさい!!」
外から業者の大きな欠伸と馬のけたたましい声が馬車に響いた。
『ローゼンタール夫婦。二人の愛子に会う為後追い自殺?!』と不謹慎極まりない見出しが一面を飾っている。
「酷い‥」
「ああ、胸が苦しいよ。」
金髪の鎧をきた男性と青い柔道服を纏った黒髪の女性が呟く。テオは羽織っているローブで口元と目を隠し物思いに耽る。エリシアから言われた『魔王』が頭から離れない。
『俺が‥やっている事は‥』
「お前は神の贈り物だ」父はテオを抱きしめる。「貴方は私達の希望よ」母はエルピスの頬にキスをした。他の者達はテオを「勇者」や「救世主」と呼び崇めていた事を思い出す。少年はそうやって育てられた。別の世界現れ絶大な力を使い皆を救う存在《転生者》。けれど、自分を育てた人々は彼等彼女等を《魔王》と呼ぶ。だから戦う、だから殺す。だってそれが────────
『みんなの願いなんだ。』
ギュとローブを掴み体を埋める。少女言葉が頭の中から消えない。消えてくれない。間違ってない。俺は頑張ってる。皆んなを助けなきゃ。そうやってテオは自分に暗示をかけながら薬を飲む。
言葉が頭から消えてゆく。父と母。皆んなの声援が聞こえる。ローブで隠れた口の口角が少し上がり、目を閉じようとした時、
「ねぇ、貴方‥」
「!!!」
顔を上げると嘆いて女性がテオに話しかけていた。何故、話しかけられたのか理解出来ないテオは黙り込む。
「体調悪いの?もし良かったら治療するよ?」
「こら、千歳!!お前また、力を」
「でも、体調悪そうなんだもん!!」
テオは千歳に──スキルを使う。結果は《転生者》。《救世主》───ゼロ。鑑定結果を確認し瞼を閉じる。二人の言い争う声が聞こえる。
どうやら千歳は聖女らしいのだが力を使うと発熱を起こし三日は寝込んでしまうらしい。確かにそれでは《救世主》になれない。とテオは納得する。
「お前この前も使って寝込んだじゃないか」
「だって、ほっとけない‥。」
「別にいらないです」
「「え?」」
二人の喧嘩に嫌気がさしテオは口を開く。
「でも、顔色も悪そうだし‥!!」
「余計なお世話です。そもそも、赤の他人に治療して貰うなんて死んでもごめんです」
「な!お前!!」
「リック!!」
千歳は小さく「私は平気だから」と言ってリックを落ち着かせる。座ったリックを見てローブに隠していたナイフを収める。
「さっきはごめんね。君辛そうだったから‥」
「辛そう?」
「うん、顔も汗も凄い流れてたし。体震えてたんだよ?。」
ありえない。と言いたげな表情で千歳を見つめる。見開かれた赤い瞳を見て千歳はテオを抱きしめる。
「ちょ!、千歳!!」
「大丈夫。ここには"貴方を怖がらせる人はいないから"大丈夫だよ」
緊張の糸が切れたようにテオは意識を失う。千歳は彼を寝かせ光の魔術をかける。その様子をリックは不満そうに見つめていた。
「んで、助けるだよ。」
「‥‥似てたからかな」
「前に言ってた助けられた子供に?」
「うん、それもあるけど。あんなに"怯えてる顔"みたら咄嗟に体動いちゃって。私変かな?」
「‥‥まあ、いきなり抱きしめたのには驚いたけどよ。‥‥?!こいつよく見ればガキだぞ!?」
「背丈見れば分かるでしょ‥。15歳前後の子供だよ。」
スゥスゥと寝息を立てている少年にリックは驚く。先程の彼から感じた力は紛れもなく《救世主》レベルだ。肌もよく見れば千歳に近い色をしている。ならば彼は転生者なのだろうか?。───いや、違う。
確かに力も肌の色も転生者に似ているが女神の加護を受けていない所か違和感を感じる。なんだがこの少年を見ていると心臓を掴まれているような感覚にリックは襲われる。
「お、おい。その坊主なんだがやば‥「何してる」
「あ、起きた?」
「‥‥治療してたのか。俺を」
起き上がってテオは体から疲れが抜けていることに気づく。千歳は少し怒ったようにテオに質問を始める。
「君、しっかりご飯食べてるの?。休息は?。」
「食べ物は一昨日食べた。休息は一週間前に取ってる」
「な!!駄目よ!!死んじゃうわ!!」
「何で驚くんだ?。食べていたし休息だって取っているぞ」
「あのな。坊主。それは食べたとも、休息共言わん。」
「?」
「はぁぁ‥君予定とかあるの?」
何故そんな事を聞く。テオは疑問に思いつつ「ない」と答える。それを聞いて千歳はテオの両肩に手を置き
「なら、私達の住む村に来なさい!!」
外から業者の大きな欠伸と馬のけたたましい声が馬車に響いた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
愛娘(JS5)とのエッチな習慣に俺の我慢は限界
レディX
恋愛
娘の美奈は(JS5)本当に可愛い。そしてファザコンだと思う。
毎朝毎晩のトイレに一緒に入り、
お風呂の後には乾燥肌の娘の体に保湿クリームを塗ってあげる。特にお尻とお股には念入りに。ここ最近はバックからお尻の肉を鷲掴みにしてお尻の穴もオマンコの穴もオシッコ穴も丸見えにして閉じたり開いたり。
そうしてたらお股からクチュクチュ水音がするようになってきた。
お風呂上がりのいい匂いと共にさっきしたばかりのオシッコの匂い、そこに別の濃厚な匂いが漂うようになってきている。
でも俺は娘にイタズラしまくってるくせに最後の一線だけは超えない事を自分に誓っていた。
でも大丈夫かなぁ。頑張れ、俺の理性。
【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)
幻田恋人
恋愛
夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。
でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。
親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。
童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。
許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…
僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる