体質が変わったので

JUN

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やりなおし(4)こんなはずじゃなかったのに

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 玄関の所にいた刑事達も、嘆息して、上司に連絡を取り始めた。
 そのそばを、すり抜けて現れる霊体がいた。香坂さんだ。
「華子!」
 香坂さんは無表情のまま、峰倉さんと睨み合う位置で立ち止まった。
 泣いていた峰倉さんも、立ち上がり、香坂さんと睨み合う。
 そんな2人を見て、おろおろとしているのが瀬田川さんだ。
「あなたが嘘をつかなければ」
「何よ。あんたが死んだのはあんたの勝手でしょ?知らないわよ。それより私が殺されたのよ。あんたが死んだせいじゃない。どうしてくれるのよ」
 原因は何か、こんがらがって来そうだ。
「待って、落ち着いて」
 止めに入る瀬田川さんに、香坂さんは目を向けた。
「浩さんがあと10分早く来てくれれば死ななかったのに」
「え!?あ、ごめん。渋滞してて」
「痛いから景気づけにって先にワインを飲んだせいで血流が良くなってしまったのよ。ああ。死ぬはずじゃなかったのに」
 え。狂言自殺をするつもりだったのか。
「狂言自殺ぅ!?汚い事するじゃない!」
「あなたに言われたくありません」
 女2人は掴み合いのケンカを始め、瀬田川は割って入ろうとはしてもできず、おろおろ、うろうろとしている。
「直。あの世へ3人一緒に行ったら、賑やかになりそうだな」
「これも、縁があったって事かねえ。後悔してやり直すって所まで一緒だし、気は合うのかもねえ」
「絶対に認めないだろうけどな」
「だよねえ」
 香坂さんと峰倉さんは肩で息をしながらケンカをしており、そろそろ止めないと、周囲に影響が出そうだ。
 直が札をきって、2人を拘束した。
「はい、そこまでですよぉ」
「香坂さんは自殺。その遺体を発見した瀬田川さんは、峰倉さんを殺して自殺。間違いないですね」
 それに3人共、
「はい」
と頷いた。

「嘘が産んだ悲劇ですか」
 柏餅を食べながら、僕達陰陽部一同はその事件の話をしていた。
「峰倉静香も、大概ですね。大体、脅して結婚しても、夫婦として上手く行くと思ったのかなあ」
 下井さんが悲しそうに言うのに、氷室さんがそう言う。
「取り敢えず行き遅れなく結婚できればいい、何とかなるっていう短絡的な考えでしょう」
 村西さんが冷たく言う。
「後悔ねえ。『こんなはずじゃなかった』か」
 沢井さんが言う。
「ぼくは、今日の定食にそう思いますね。迷って頼んだのに、出て来たら思ってたのと違ってて。カツ丼って言っても、ハムカツ丼じゃないんだよ、食べたかったのは」
 茜さんが怒りながら言うと、赤嶺さんが吹き出し、下井さんが力強く頷いた。
「あそこでしょ、4丁目の。あれは詐欺だ。あそこは学生向けに安くしてるから。あそこのうな丼もなんちゃってだから気を付けて」
「嘘!?絶対に行かねえ!」
 それで皆、わいわいと「後悔」「嘘」を言い始めたが、他愛もないものばかりだ。
「後悔かあ」
「怜は何か後悔とかあるかねえ」
「僕?まあ、ほどほどにはな。直は?」
「あるねえ。
 実は近い所では昨日なんだけどねえ。そろそろ危ないかもっていう気はしたんだけど、残ってた煮豆を食べたらお腹壊しちゃって。昨日の夜中は大変な目に遭ったんだようぉ」
 それに各々、「ご愁傷様です」などと言いながらも、その程度の後悔ならかわいいのに、と思った。

 
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