体質が変わったので

JUN

文字の大きさ
上 下
880 / 1,046

チビッ子編 👻 バディ誕生(1)たんぽぽ幼稚園

しおりを挟む
 怜達の近所にある公立幼稚園「たんぽぽ幼稚園」は、古い。そのせいかどうかわからないが、クラスの名前が、少々変わっている。竹組、菊組、花組、松組、梅組、星組。何とも渋い。
 怜は竹組になった。
 怜は水色のスモックに紺色の帽子を被り、黄色い鞄を肩から斜めに掛け、司を見上げた。
「兄ちゃんも幼稚園行こうよ」
 司は「うん」と言いたいのを堪えた。
「兄ちゃんは学校で勉強」
「じゃあ、僕も学校に行く!」
「怜は幼稚園な」
 怜が途端に目をうるうるさせるのを見て、司は心を鬼にした。怜は近所の同じ年頃の子と比べても、お兄ちゃんべったりで、すぐに泣く。このままではまずいので、そろそろ突き放すべきと家族会議で決定したのだ。
「友達になれそうな子、いるだろ?」
「兄ちゃんがいいもん」
「……友達もいるぞ?怜にどんな友達ができるか、兄ちゃんも楽しみだなあ」
「楽しみ?」
「ああ。誰とどんなことをしたか、帰ったら教えて欲しいな」
「……わかった。仕方ないから、幼稚園でがまんする」
 怜は不承不承納得し、司は後ろ髪をひかれる思いで登校した。
「怜。今日はお弁当よ。どんなお弁当か楽しみにしててね」
 母が言い、怜は新品のお弁当箱を思い出して、少しだけ幼稚園に行く気になったのだった。

 午前中、園児達は思い思いに庭で遊んでいた。
 ブランコは競争率が高く、ジャングルジムはいじめっ子的なガキ大将が占有していたため、怜は大人しく、花壇の前にしゃがみ込んで四葉のクローバーを探していた。
 見つかったら、兄に渡す気である。
「見つかった?」
 覗き込んで来たのは、同じ竹組の町田 直だ。
「ううん」
「一緒に探そう」
「うん」
 怜と直は、並んで四葉のクローバーを探し始めた。
 しかし、中々見付からない。そのうち、不意に現れたそれに、2人の目は釘付けになった。
 唐草模様の風呂敷を持って、コソコソと幼稚園に入る男だ。
「直君。あれ……」
「うん。あれ、泥棒の模様だよね」
「泥棒かな?先生に言わないと!」
「静かに、そうっと行こうね、怜君!」
 2人はそっと忍び足で、男の入って行った部屋に近付いて行き、中を覗き込んだ。
 男は笑いながら、先生と何か話している。
「先生が、騙されてるよ、直君!」
 怜が涙目で言うと、直はううむと腕を組んで唸った。
「まずいよう。ボクらが何とかしないとね、怜君」
 2人は泥棒をどうやって追い出すかと、考え始めた。

しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

異世界転生令嬢、出奔する

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:9,648pt お気に入り:13,937

泣き虫龍神様

キャラ文芸 / 完結 24h.ポイント:363pt お気に入り:158

継母の心得

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:71,414pt お気に入り:24,137

素材採取家の異世界旅行記

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,867pt お気に入り:32,984

転生令嬢は庶民の味に飢えている

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7,704pt お気に入り:13,926

一条春都の料理帖

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:1,790pt お気に入り:239

ごきげんよう、旦那さま。離縁してください。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:9,274pt お気に入り:342

処理中です...