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新人(2)初のガサ入れ
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戻って来た鍋島さん達は、十条さんはとにかく謝り、松島さんは怒りまくり、奈良さんと目黒さんは苦笑しながら2人をなだめ、鍋島さんと茜屋さんは困ったような顔をしていた。
内線電話で事の次第は聞いていたので、僕達は、
「お疲れ様」
と心からそう言った。
十条さんに目黒さんが、
「まあまあ。ぼくも驚いたし。でも、1度見たから、今度は大丈夫だよね。多分」
と言って慰めると、松島さんがチッと舌打ちし、十条さんが涙目で委縮した。
縦社会、階級社会の警察官で、松島さんは珍しいタイプに違いない。
「松島さんも、誰だって、ねえ」
奈良さんがにこにこしながらとりなすと、松島さんは不機嫌そうに鼻から息をはいた。
「もっと早くやるべきじゃなかったんですか。プロの霊能師ならこんなにモタモタしてませんよ。警察官がやらなくても、霊能師が事に当たればいいのに」
それに、少なくない皆がムッとした顔をする。
「それはどうかな。ねえ、御崎君」
徳川さんが、何食わぬ顔で振って来た。面白がっているんじゃないのか、この人は。
「霊というものが多くの人に認知され、公の場で取り上げられるようになって、色々な問題が持ち上がった。霊絡みの事件だ。霊が関係しての事件には法律、捜査、逮捕といった事も絡んで来るようになった。その為には、警察官が必要となる。協会との協力体制は必要だし、現在でも協力を仰いでいるが、全面的に頼るのは、職務上機密事項に触れることもあって好ましくない。民間人に、もしもの時の為に、職務の宣誓や服務規程の順守を強要するのはどうだろう?
それに、警察は祓っておしまいじゃない。事件の証言となるなら、それを引き出してから祓うのが望ましい」
松島さんは、膨れっ面を押し隠すようにしかめっ面をしていた。
「それでも数的には厳しいんだけどねえ」
直が言い添え、沢井さんが付け加えた。
「3係は、エセ霊能師の摘発や、陰陽課に持ち込まれる事案の調査を主に担当する。霊現象と思われる事象に遭遇しても、慌てず冷静に、先入観なしに対処してもらいたい」
これに新人達は「はい」と返答し、それでその場は終わった。
新人達は、コンビを組む先輩と組み合わされた。
奈良さんは小牧さんと。公安コンビとでもいうべきだろうか。2人共にこにこと穏やかで、一見刑事コンビに見えない。
目黒さんは千歳さんとだ。穏やかで真面目、フレッシュなスポーツマンコンビという感じだ。
十条さんは美保さんとで、何だか落ち着きがないコンビという気がしないでもない。それでも、美保さんは刑事としては優秀だ。例え幽霊が好きすぎて、遭遇した時の挙動がおかしかろうと。
松島さんは芦谷さんとだ。芦谷さんは顔が怖いが、小動物が好きだ。上下関係などにはうるさいだろうが、後輩の育成はしっかりとしてくれるに違いない。松島さんは、小柄で童顔な小動物系だし。
これが、沢井さんがひねり出したコンビだった。
「大丈夫だろうか。何か、胃が痛い……」
沢井さんは、ひっそりとそう呟いた。
まず3係全員で、エセ霊能師と思われる人物の所のガサ入れに行った。一応のアドバイザーとして、僕と直も同行する。
本当ならどこかの班に任せても良かったのだが、B班もC班もD班も事件を抱えていたり書類作成があったりして、行けそうなのが僕と直だったのだ。
それに、今回の新人達は、問題児の予感がした。
被疑者天紫院龍源、本名菊沼勇夫。予言や除霊と称して金品をだまし取っている疑いがある。
そう陰陽課で説明を受けてから行ったのに、十条さんがパニックだ。
「私がエセ霊能師だと?フン!ならば言ってやろう。お前はこの1週間以内にケガをしただろう!先祖霊が言っておる!」
「ひえええ!?当たりました、どうしましょう!?」
十条さんが慌てふためいた。
「落ち着いて、十条さん。ここに来てからの様子で、十条さんが、その、アレだよ。あわてんぼうなのは誰にでもわかる事だし。十条さんの指に血がにじんだ絆創膏が貼ってあるから、先祖霊に関係なく、シャーロック・ホームズでなくともわかる事だよ」
美保さんがそう言って落ち着かせる。
「わあ。儲かってるんですねえ」
「定価なんてありませんからね」
奈良さんと小牧さんはのんびりと帳簿を見て会話し、
「あ。電気が点滅する仕掛けや冷気が出る仕掛けがある」
「舞台に凝ってますね」
と目黒さんと千歳さんは、真面目に仕事をしながらも、和気あいあいとしている。
そして松島さんは、
「何が先祖霊よ。笑わせるわ。ついているのは彼女じゃなくて――」
とフンと鼻で笑い、芦屋さんに
「やめ!ネタバラシは後で!言質を取ってから!」
と頭をはたかれている。
「……大丈夫か、本当に」
「……まあ、一日目だしねえ」
僕と直は、不安を感じながら彼らを見守っていた。
しかし本当の混乱は、この後だった。
内線電話で事の次第は聞いていたので、僕達は、
「お疲れ様」
と心からそう言った。
十条さんに目黒さんが、
「まあまあ。ぼくも驚いたし。でも、1度見たから、今度は大丈夫だよね。多分」
と言って慰めると、松島さんがチッと舌打ちし、十条さんが涙目で委縮した。
縦社会、階級社会の警察官で、松島さんは珍しいタイプに違いない。
「松島さんも、誰だって、ねえ」
奈良さんがにこにこしながらとりなすと、松島さんは不機嫌そうに鼻から息をはいた。
「もっと早くやるべきじゃなかったんですか。プロの霊能師ならこんなにモタモタしてませんよ。警察官がやらなくても、霊能師が事に当たればいいのに」
それに、少なくない皆がムッとした顔をする。
「それはどうかな。ねえ、御崎君」
徳川さんが、何食わぬ顔で振って来た。面白がっているんじゃないのか、この人は。
「霊というものが多くの人に認知され、公の場で取り上げられるようになって、色々な問題が持ち上がった。霊絡みの事件だ。霊が関係しての事件には法律、捜査、逮捕といった事も絡んで来るようになった。その為には、警察官が必要となる。協会との協力体制は必要だし、現在でも協力を仰いでいるが、全面的に頼るのは、職務上機密事項に触れることもあって好ましくない。民間人に、もしもの時の為に、職務の宣誓や服務規程の順守を強要するのはどうだろう?
それに、警察は祓っておしまいじゃない。事件の証言となるなら、それを引き出してから祓うのが望ましい」
松島さんは、膨れっ面を押し隠すようにしかめっ面をしていた。
「それでも数的には厳しいんだけどねえ」
直が言い添え、沢井さんが付け加えた。
「3係は、エセ霊能師の摘発や、陰陽課に持ち込まれる事案の調査を主に担当する。霊現象と思われる事象に遭遇しても、慌てず冷静に、先入観なしに対処してもらいたい」
これに新人達は「はい」と返答し、それでその場は終わった。
新人達は、コンビを組む先輩と組み合わされた。
奈良さんは小牧さんと。公安コンビとでもいうべきだろうか。2人共にこにこと穏やかで、一見刑事コンビに見えない。
目黒さんは千歳さんとだ。穏やかで真面目、フレッシュなスポーツマンコンビという感じだ。
十条さんは美保さんとで、何だか落ち着きがないコンビという気がしないでもない。それでも、美保さんは刑事としては優秀だ。例え幽霊が好きすぎて、遭遇した時の挙動がおかしかろうと。
松島さんは芦谷さんとだ。芦谷さんは顔が怖いが、小動物が好きだ。上下関係などにはうるさいだろうが、後輩の育成はしっかりとしてくれるに違いない。松島さんは、小柄で童顔な小動物系だし。
これが、沢井さんがひねり出したコンビだった。
「大丈夫だろうか。何か、胃が痛い……」
沢井さんは、ひっそりとそう呟いた。
まず3係全員で、エセ霊能師と思われる人物の所のガサ入れに行った。一応のアドバイザーとして、僕と直も同行する。
本当ならどこかの班に任せても良かったのだが、B班もC班もD班も事件を抱えていたり書類作成があったりして、行けそうなのが僕と直だったのだ。
それに、今回の新人達は、問題児の予感がした。
被疑者天紫院龍源、本名菊沼勇夫。予言や除霊と称して金品をだまし取っている疑いがある。
そう陰陽課で説明を受けてから行ったのに、十条さんがパニックだ。
「私がエセ霊能師だと?フン!ならば言ってやろう。お前はこの1週間以内にケガをしただろう!先祖霊が言っておる!」
「ひえええ!?当たりました、どうしましょう!?」
十条さんが慌てふためいた。
「落ち着いて、十条さん。ここに来てからの様子で、十条さんが、その、アレだよ。あわてんぼうなのは誰にでもわかる事だし。十条さんの指に血がにじんだ絆創膏が貼ってあるから、先祖霊に関係なく、シャーロック・ホームズでなくともわかる事だよ」
美保さんがそう言って落ち着かせる。
「わあ。儲かってるんですねえ」
「定価なんてありませんからね」
奈良さんと小牧さんはのんびりと帳簿を見て会話し、
「あ。電気が点滅する仕掛けや冷気が出る仕掛けがある」
「舞台に凝ってますね」
と目黒さんと千歳さんは、真面目に仕事をしながらも、和気あいあいとしている。
そして松島さんは、
「何が先祖霊よ。笑わせるわ。ついているのは彼女じゃなくて――」
とフンと鼻で笑い、芦屋さんに
「やめ!ネタバラシは後で!言質を取ってから!」
と頭をはたかれている。
「……大丈夫か、本当に」
「……まあ、一日目だしねえ」
僕と直は、不安を感じながら彼らを見守っていた。
しかし本当の混乱は、この後だった。
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