体質が変わったので

JUN

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即身仏(3)道連れ

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 手早く片付けて、掘り返さないといけない。
「子供を引きずり込んだのか」
 それは、顔を歪めて嗤った。

     ハコニトジコメラレテ
     ウメラレタ 
     キキンガオサマルヨウニ
     ヒトバシラニナレッテ
     コワイッテ イヤダッテ
     ダシテクレッテイッタノニ
     イキテルッテ カネヲヒッシニナラシタノニ

「だからって子供を引きずり込むなんて。
 あなたはもう、死んでいるんですよ。自由になっていいんです」

     オナジメニ アワセテヤル
     コノムラノヤツハ
     オモイシレ!

 そう言って、実体化を始める。
「だめだな。時間もかけられないし、祓うしかないな」
「OK」
「さあ、逝こうか」
 僕は刀を出し、直は札をきって、石室をそれから守るようにした。

     クライ コワイ クルシイ
     シネ オマエモコイ
     イッショニシネ

 泣きわめきながら、鐘を振り下ろす。それを避け、腕を斬る。
 飛んで行った鐘を目で追い、取りに行こうと体の向きを変えるそれを、きれいに寸断する。

     カネヲ ナラシテ ヨバナイト
     タスケテ たすけて
     死にたくない

 それを最期に形を崩し、それは消えて行った。
 そこまで見届けると、僕達は急いで電話を取り出した。

 掘り返した痕も全くないのに、その下の箱からは行方不明の子供が現れた。衰弱はしていたが、大丈夫らしい。
 ただ、閉所恐怖症とか暗所恐怖症にはなっているかもしれない。
「子供が見つかって良かったな」
 兄がホッと息を吐く。
 井戸の所に避難してもらっていた兄達も、事件を知って安堵していた。
「それにしても、どうして旅行って、こう、妙な事件が絡んで来るんだろう」
「いや、普通は絡んでこないよねえ」
「そうか?そう……だよな。やっぱり」
 僕と直は、申し訳なくて、落ち込んだ。来年の夏休みは、僕達抜きで行ってもらった方がいいかな。そんな事を考えていると、凜が抱っこをせがんで来たので、抱き上げる。
「ん!ん!」
 すると、にこにこしながら頭を撫でてくる。
「ん?」
 累はと見ると、やはり直の頭を撫でていた。
「ええっと?褒めてくれてるのかねえ?」
「偉い偉い」
 美里が笑う。
「助けたから、褒めてるのね」
「あらあ。直君も怜君も感激?」
 千穂さんはニヤニヤとする。
「な、泣いてなんかないよう」
 敬と優維ちゃんはにこにこしながら、
「怜君と直君に拍手ぅ」
と手を叩く。
「へへへ。照れるねえ、怜」
「そうだな。うん」
 兄と冴子姉も、笑っている。
 と、美里が笑いながら言った。
「本当に、旅行の度に何かあるわね。飽きないわあ。次は何かしら」
「もうこれ以上はいいよ。平和な普通の旅行でいいよ。面倒臭い」
 本心からの言葉なのに、なぜか大笑いされたのだった。


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