体質が変わったので

JUN

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サバイバルゲーム(3)向こうのルール

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 おかしい。それが、第一の感想だった。気配を探ろうにも、放つ気が戻って来ないとでも言えばいいのだろうか。
 式を飛ばしてみたら、数メートル先で力を失って落ちた。
「結界にしても、知らないタイプだな」
「何だろうねえ、これは。霊能師殺しの結界かねえ?」
 試しに刀を出してみた。
「ああ、これはいけるな。ほんの自分の周りには力が及ぶのか。
 なら、接近して直接浄力を叩き込めばいいんだな」
「それはできそうで何よりだねえ」
「この中に現れる我々以外の者は、敵です。ここに引きずり込まれた時点で、交戦規程はクリアしていると考えて下さい」
 言うと、皆はそれを受け入れた。
 と、1人が反応し、
「隠れて」
と小声で言い、全員が即座にそばの木立の陰に隠れる。
 向こうの方に、辺りを警戒しながら移動する迷彩服の人影が現れた。こちらとは迷彩の種類が違う他、右腕に赤い腕章を付けている。
 そして、それが生者ではないと、僕と直にはわかった。あれがアンノウンか。
 隊員はそのアンノウンにライフルを向けていたが、1発で当ててみせた。
 そのアンノウンは両手を上げ、
「ヒット」
と言いながら消えて行った。
 それを見ていた1人が、怪訝な表情を浮かべた。
「ヒット?サバゲーでもしているつもりなのか?」
「あ!思い出しました!」
 別の1人が声を上げる。
「何だ」
 隊長に訊かれ、答える。
「はい!以前、自衛隊員とサバイバルゲームのチームとで、対戦をした事がありました。それがお互いにためになったからと、時々、交流会をする事になったのですが、会場に向かうバスが土石流に巻き込まれてサバゲーチームが全員死亡したという事故がありました。
 このフィールドは、その時に予定されていたフィールドにとてもよく似ています」
 それで皆何となく、辺りを見回した。
「じゃあ、何か?あれはその時のチームのメンバーで、ここで自衛隊員相手に、サバゲーをしている?」
 僕が訊くと、彼は首を傾けながら、
「さあ、そこはわかりませんが……」
と答えた。
「そうだとすると、ゴールというか、決着というのか。それはどういう事になりますか?」
「はい。色んなルールがあるそうですが、その時のもので言うと、向こうのチームと自衛隊のチームとで攻守を決め、この先の山小屋に設置されたフラッグの横に置いてある鐘を鳴らすと攻める方の勝ちです。規定時間、守り切ると守る方の勝ちです。それかお互いに相手チームを殲滅するか、です」
「ふうん。じゃあどうもこの様子では、僕達は攻める方を割り振られていると考えていいか」
「だねえ。どうする、怜」
「鐘を鳴らしに行こうか。そこで決着をつけられそうだ」
「鐘が、未練の象徴なんだねえ、たぶん」
「では、ゲームに勝ちに行きましょう。
 ああ。そういう方面での指揮は、これまで通りにお任せしても?」
「わかりました」
 隊長は即答してすぐに指示を出し始め、隊員達は即座に、フォーメーションを組んで動き出した。

 山小屋の見える草むらに伏せ、観察した。
「見張り3。ライフルと拳銃を所持」
「時々見回りに動くから、その時に接近して片付けよう」
 隊長は言って、部隊を分け、配置していく。
 僕と直は左翼に回り、身を潜めた。
「2階だろうな、鐘は」
 部屋は4つほどだろうか。周囲で警戒している敵を片付けて山小屋に飛び込んでも、1階には間違いなく敵が待ち構えている。それを突破して2階に上がり、各部屋を探して鐘を探す。2階にも敵は潜んでいるだろう。
「向こうも10人かねえ?」
「ヒットされて退場したやつ、復活しないだろうな」
 そういう、「衛生兵ルール」というのもあるらしい。詳しくは知らないが。
「いざとなれば、いきなりここから2階へ飛び込むという手もありだよねえ?」
「そうだな。危なくなったらそれで行こう。ちょっとズルイが」
 小声で言いながら待っていると、無線連絡が入る。
『敵、左方向へ移動中。片付けろ』
「了」
 短く返事をして、僕と直と案内係としてついてくれたもう1人で、気配を殺しながら近付いて行く。
 見えた。辺りを警戒しながら、山小屋の周囲を巡回している。
 合図を出して隊員が草むらの中に身をひそめつつ、近付いて来るのを待つ。そして、敵が通り過ぎたその瞬間にサッと飛び出し、ナイフを敵にあてがう。
 敵は両手を上げ、消えて行った。
 サバイバルゲームでは、ラバーナイフを使うらしい。
 僕と直も茂みから出て静かに素早く彼に合流し、山小屋の壁際にピタリと体をつけた。
「お見事」
 囁くように、ほぼ口だけで言うと、彼はニヤリと得意そうに笑った。




 
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