体質が変わったので

JUN

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サバイバルゲーム(2)状況開始

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 着替えなどを詰めたバッグを下げ、自衛隊の車で関東近郊の駐屯地へ行く。そして、これから僕達と一緒に事件に遭う予定の部隊の人達と顔合わせを行った。
 小隊長は40歳前後の鍛えられた体の1尉で、副隊長以下の人達も皆、それなりの自信を見せていた。徽章を見ると、全員がレンジャー資格を持っている。
 成程。猛者揃いというわけだ。
「御崎警視と町田警視は3佐相当という事で、いざアンノウンと会敵した後は、全指揮権をお渡しします。
 それと、訓練に混ざる為に、一応の技能をお教えした方がいいでしょう。着替えたら、始めます」
 笑顔で隊長が宣言し、僕と直は、薄っすら心配になった。
「ええっと」
「部屋にご案内します。
 日常の細かい事まで、なんでも自分にご質問下さい。自分が案内係を務めますので」
 にこにこテキパキと隊員に言われて、僕と直はそのテンポに乗せられ、早速着替えて付け焼刃の訓練をする事になった。
 知っていなければおかしい事として、匍匐前進を数種類、ハンドサイン、個人装備品の扱い。昼食を挟んで、5種類の姿勢によるライフルの射撃訓練、走ったり伏せたりライフルを構えつつの警戒など、基本的な身のこなし。
 駆け足の詰め込み方式の付け焼刃ではあるが、敵に選ばれなければならないため、一応の体裁を整えなくてはならない。
 やっと夜の自由時間になった時には、僕も直も、ここへ来た目的を忘れる所だったとハッとした。
「これで僕達がスルーされたら、怒るぞ、僕は」
「そうだねえ。それと、できるだけ早く来て欲しいねえ」
 僕達はそう言い合った。
「いやあ、立派なものですよ。体力はまあ普通ですが、射撃は検定で1級いけますし。覚えも早いし。
 本当にうちに来ませんか」
「お世辞なんていやだなあ」
「ははははは」
 僕と直は笑って誤魔化した。
 それよりもと、僕と直、隊長、副隊長で、明日の打ち合わせを行う。
「これなら明日、現場で訓練をしても不自然ではないでしょう。幹部が来たとかいう風に、見える範疇ですよ」
 隊長がそう太鼓判を押す。助かった。
「では、明日、これまでの不可思議な出来事が起こった場所に行きましょう」
「どれも、交信が途絶える直前の会話のパターンが決まってたんですよねえ」
 僕と直が言うと、
「はい。言い回しは変われど、負ける気がしない、もっと実弾を撃って訓練したい、そういう事を雑談で話していた後だそうです」
と隊長が頷く。
「では、そう言いましょう」
 それで、食いついてくれればいいんだが。
「適当な誰かに、そう言うように言い含めておきます」
 副隊長が言った。
 いよいよ明日だ。

 そして今僕達は、装備品を身に着け、ライフルを構え、走り回っている最中である。
 そろそろ、これまでの4小隊が姿を消したという辺りへと近付く。そこで、僕は隊長に合図を出した。
「終了!全員整列!」
 隊長が言い、ビシッと全員が1列に並んだ。
「次は向こうのポイントで訓練を行う」
 言って、ぞろぞろと歩き出す。
 そして、緊張を隠し、セリフ係に当たった隊員が口を開いた。
「天気もいいし、絶好調ですよねえ」
「これでバンバンもっと撃てたら言う事無しだな」
「ああ。そうしたら、米軍海兵隊にだって勝てそうな気がするぜ」
「もう、負ける気がしないもんな!」
「税金だからしかたないの。俺だって好きなだけ撃ってみたいよ」
 なかなか芸達者だ――いや、これは本音かもしれないな。
 僕と直も彼らの明るい声に合わせるふりをしながら、周囲を警戒していたが、来た。
 気配が忍び寄り、いきなり晴天の下霧が漂ったかと思うと、結界が発動した。
「来たか」
「だねえ。招待いただいて光栄だよう」
 僕と直を守るように、ザッと彼らが周囲を取り囲んで警戒した。
 やがて霧が晴れ、辺りは今までの砂地から、木が生える山地のような風景に変わっていた。
「さあて。状況開始だな」
「りょうかーい」
 僕と直は、どこから近付いて来るかと神経を研ぎ澄ました。
 


 
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