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独占(4)親子の情
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生霊が途中で死霊になると、憎しみと己の死の苦しみとが合わさって力が強くなるのだろうか。実体化しただけでなく、なかなかの悪鬼になっている。
これを均さん達に見せるのは本当は気が進まないが、タイミングが悪かった。今はとにかく、これを祓う事に専念しよう。
刀を出し、対峙する。
アノヒトノカワリニ
ムスコヲ リッパニ ソダテナイト
アイジョウモ フタリブンソソイデ
サビシイオモイヲ サセナイヨウニ
言い、フラフラと体を揺すっていたと思ったら、飛び掛かって来た。
長い棒を持っており、それで攻撃して来る。
それを斬り、返す刀で腕を斬る。
アアアアア!!
ムスコヲ ドコヘヤルキダ!?
カエセ!!
残った片腕で反撃をして来る。振り下ろされた棒を避け、そこから横に振り回すのを跳び越し、腕を斬る。
ギャアアアア!!
アア ヒトシ ヒトシ
そして、刀を胴に突き入れる。
アアアア!!
そこから、元の八重さんの姿に戻って行く。
なに?ここは……どうして?
ああ、均 そんな所で何をしているの
風邪をひいたらどうするの
結婚式まですぐなのに
ああ 楽しみだわ
「お袋ぉ……」
「お義母さん……」
あら 私何をしてたんだったかしら
そうそう ベストを編むための毛糸を買いに行くんだったわ
お父さんと均ったら 寒いのに
いつまでキャッチボールしてるのかしら
それを最期に、八重子さんはふわっと笑って、消えて行った。
「お袋……何言ってるんだよう……」
均さんは泣き出した。
「あの棒、編み棒だったわね。お義母さん、私に均さんをとられると思ったのかしら」
寂しそうに聖子さんが言った。
「もしかしたら、八重子さん、認知症が始まっていたのかも知れませんね」
「え?」
「聖子さんと結婚すること自体は反対ではなかったんでしょうねえ。ただ、ふっと認知症の症状が出た時に、小さい息子を1人で守らないといけないと決意した頃に戻って、おかしなことになったのかもしれませんねえ」
「はい。結婚式を待ち遠しく思っていたのは間違いないですし。
聖子さん。あなたは、八重子さんに嫌われていたわけではないと思いますよ」
それで2人は、抱き合って泣き出した。
甥の敬が小さな包みを嬉しそうに眺めていた。数年前に名古屋へ戻って行った、倉阪の娘である舞ちゃんからのチョコレートだ。
「いっぱいあるよ」
それを見て、優維ちゃんが対抗するかのように、敬の目の前にズイッとチョコレートを差し出す。
「敬君!はい!」
「ありがとう、優維ちゃん」
敬はにこにことしてそれを受け取った。
「直。敬はこの年にして、修羅場を経験するんじゃないか」
「優維はこの年にして、ライバル心とか独占欲っていうのを覚えてるよう。何か怖いよう、怜」
僕と直は、こそこそと話し合った。
「ねえ、皆でチョコレート食べようよ!怜のケーキも!」
ニコニコとして敬が言う。
「敬はわかってないな。ただ、チョコレートを食べる日だとしか思ってないぞ」
「女の子の方が早熟だってのは本当だねえ」
敬にくっついてドヤ顔をしている優維ちゃんに、直が戦慄するバレンタインデーだった。
===================================================
お知らせ
あれ?いけますね。このまま大丈夫なんでしょうか?
これを均さん達に見せるのは本当は気が進まないが、タイミングが悪かった。今はとにかく、これを祓う事に専念しよう。
刀を出し、対峙する。
アノヒトノカワリニ
ムスコヲ リッパニ ソダテナイト
アイジョウモ フタリブンソソイデ
サビシイオモイヲ サセナイヨウニ
言い、フラフラと体を揺すっていたと思ったら、飛び掛かって来た。
長い棒を持っており、それで攻撃して来る。
それを斬り、返す刀で腕を斬る。
アアアアア!!
ムスコヲ ドコヘヤルキダ!?
カエセ!!
残った片腕で反撃をして来る。振り下ろされた棒を避け、そこから横に振り回すのを跳び越し、腕を斬る。
ギャアアアア!!
アア ヒトシ ヒトシ
そして、刀を胴に突き入れる。
アアアア!!
そこから、元の八重さんの姿に戻って行く。
なに?ここは……どうして?
ああ、均 そんな所で何をしているの
風邪をひいたらどうするの
結婚式まですぐなのに
ああ 楽しみだわ
「お袋ぉ……」
「お義母さん……」
あら 私何をしてたんだったかしら
そうそう ベストを編むための毛糸を買いに行くんだったわ
お父さんと均ったら 寒いのに
いつまでキャッチボールしてるのかしら
それを最期に、八重子さんはふわっと笑って、消えて行った。
「お袋……何言ってるんだよう……」
均さんは泣き出した。
「あの棒、編み棒だったわね。お義母さん、私に均さんをとられると思ったのかしら」
寂しそうに聖子さんが言った。
「もしかしたら、八重子さん、認知症が始まっていたのかも知れませんね」
「え?」
「聖子さんと結婚すること自体は反対ではなかったんでしょうねえ。ただ、ふっと認知症の症状が出た時に、小さい息子を1人で守らないといけないと決意した頃に戻って、おかしなことになったのかもしれませんねえ」
「はい。結婚式を待ち遠しく思っていたのは間違いないですし。
聖子さん。あなたは、八重子さんに嫌われていたわけではないと思いますよ」
それで2人は、抱き合って泣き出した。
甥の敬が小さな包みを嬉しそうに眺めていた。数年前に名古屋へ戻って行った、倉阪の娘である舞ちゃんからのチョコレートだ。
「いっぱいあるよ」
それを見て、優維ちゃんが対抗するかのように、敬の目の前にズイッとチョコレートを差し出す。
「敬君!はい!」
「ありがとう、優維ちゃん」
敬はにこにことしてそれを受け取った。
「直。敬はこの年にして、修羅場を経験するんじゃないか」
「優維はこの年にして、ライバル心とか独占欲っていうのを覚えてるよう。何か怖いよう、怜」
僕と直は、こそこそと話し合った。
「ねえ、皆でチョコレート食べようよ!怜のケーキも!」
ニコニコとして敬が言う。
「敬はわかってないな。ただ、チョコレートを食べる日だとしか思ってないぞ」
「女の子の方が早熟だってのは本当だねえ」
敬にくっついてドヤ顔をしている優維ちゃんに、直が戦慄するバレンタインデーだった。
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あれ?いけますね。このまま大丈夫なんでしょうか?
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