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第2章 畑野勘太郎
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2015年4月2日、午前7時55分、畑野勘太郎は葛西駅のホームに立った。彼は大学卒業後、大手スーパーマーケットに入社、22年間勤続し、今も八丁堀みなと店で働く。以来、通勤のため毎朝この電車に乗り続けている。彼は、毎日、同じ時間、決まった車両の乗車口の前に並ぶ。
勘太郎が並ぶ乗車口の前には、いつからか中年の男性二人が並んでいた。勘太郎は彼らとあいさつを交わすこともなく彼らの後ろにそっと並ぶ。すると、彼のすぐ後ろに青年が並んでくる。勘太郎は良く顔をあわせるが、顔なじみというわけではない。彼は周囲の乗客を意識していても、周囲の乗客は勘太郎を全く認識していないかもしれない。
7時57分、駅アナウンスがあると千葉方面から上り電車が入線してくる。電車はきっちりと乗降口にあわせ停止し扉が開く。数人が降りて来ただけだ。待っていた乗客がドア周辺に立つ僅かな乗客の隙間を狙ってみな一気になだれ込む。相変わらずの混んだ車内で揺れるたび押し合う。
やがて、2つ目の西葛西駅に到着するが、この駅では降りる客はほとんどいない。それどころかホームは人がたくさん立っている。それらの乗客が車両に怒とうのごとく乗り込んでくる。体に緊張が走る。なぜなら、勘太郎は乗り込む乗客の圧力により胸が押されるたび呼吸が一瞬できなくて苦しくなるからだ。これが毎日繰り返されるのは苦痛でしかない。
「この路線も利用者が増えたな。異常だよ……」
心中でつぶやく彼は今日まで幾度となく、ホームの乗車位置を示す白線の上に立ち、対岸のホームの変わらぬ光景を何度となく眺めてきた。対岸のホームはこことは異世界のように閑散としていた。
勘太郎が並ぶ乗車口の前には、いつからか中年の男性二人が並んでいた。勘太郎は彼らとあいさつを交わすこともなく彼らの後ろにそっと並ぶ。すると、彼のすぐ後ろに青年が並んでくる。勘太郎は良く顔をあわせるが、顔なじみというわけではない。彼は周囲の乗客を意識していても、周囲の乗客は勘太郎を全く認識していないかもしれない。
7時57分、駅アナウンスがあると千葉方面から上り電車が入線してくる。電車はきっちりと乗降口にあわせ停止し扉が開く。数人が降りて来ただけだ。待っていた乗客がドア周辺に立つ僅かな乗客の隙間を狙ってみな一気になだれ込む。相変わらずの混んだ車内で揺れるたび押し合う。
やがて、2つ目の西葛西駅に到着するが、この駅では降りる客はほとんどいない。それどころかホームは人がたくさん立っている。それらの乗客が車両に怒とうのごとく乗り込んでくる。体に緊張が走る。なぜなら、勘太郎は乗り込む乗客の圧力により胸が押されるたび呼吸が一瞬できなくて苦しくなるからだ。これが毎日繰り返されるのは苦痛でしかない。
「この路線も利用者が増えたな。異常だよ……」
心中でつぶやく彼は今日まで幾度となく、ホームの乗車位置を示す白線の上に立ち、対岸のホームの変わらぬ光景を何度となく眺めてきた。対岸のホームはこことは異世界のように閑散としていた。
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