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第35章 現代の安田邸
1話
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安田尚子の父・厚労省大臣安田仁から招待を受け、安田邸を訪問した児玉進一は、尚子の自室に招かれていた。
進一が通された部屋は建物の大きさから考えてもあり得ない部屋の広さだった。進一は尚子の後について部屋の中に入って、右左、上下、めまぐるしく見回した。部屋の奥は暗いのか、かすんでいて見えない。あまりにも果てしなく広がっているように見える。部屋がゆがんでいるのか、地平線のように丸く見える。それに平行して天井も丸く円を描いている。どこまでも広がっている不思議な空間だ。
(アアー 尚子ちゃんの家だと思うと、また、僕は妄想の世界に入ってしまったんだなー)
進一は思考が不能状態に陥った。尚子と一緒にいて、いい雰囲気になったと思うと、決まって妄想モードだったと言うことが今まで何度となく繰り返されてきた。
(僕は妄想の世界に、もう、つくづく、飽きたよ)
いつものどうにもならない思い。でも、自分が描いた妄想なのだから、仕方ない。自分が望むこの世界を楽しむしかない。進一は気を取り直し、いつものように、妄想の世界を受け入れる。そうやって、尚子に嫌われないよう、意気地のない自分を正当化する。妄想は尚子も自分も傷つかない最良の方法だ。優しさだけの、消極的な意気地のない男のいいわけ。
「尚ちゃん…… 何なのこの部屋の変な見え方って? 僕の目がおかしいのかな? トリックアートとかいうヤツ? それとも、からくり屋敷の一種とか?」
進一はそう言いながら部屋を進む。前を歩く尚子の細い首筋、なで肩から小さな背中にはすけて見える濃紺色のブラ、くびれた腰と、突如、突き出た盛り上がった欲情をそそる尻を凝視した。
(尚ちゃんの体は後ろから見ても、エロいなぁー もうーー抱きしめちゃおうかなぁー)
そう思いながらも、そんなことは絶対できない。だから、どうでもいい部屋の話題を振る。どうでもいいと、思いながらも、尋常とは言えない部屋の不思議さと、この巨大な部屋の空間に不釣り合いなダブルベッドが大いに気になった。
(今、僕の妄想の世界なのかなあ)
進一には、妄想と現実の区別、境界が不確かで、生きている感覚が乏しい。
(僕はこんな状態で生きていると言えるのだろうか)
前に歩いていても、これが前に進んでいることが現実か、虚構の世界か。進一は考えることすら疲れていた。
ベッドの上には等身大の人形が一体置かれていた。近づいて人形を間近に見た進一は、自分と全く同じ体形をしていることに驚いた。前を歩いていた尚子は、寝ている人形の横で止まった。
尚子は、玄関に入ってから後ろを歩いてくる進一にどういう対応をこれからしようか、考えていた。尚子もまた、進一と同じように、病的な現実逃避である妄想モードに突入し易い女だった。
(ああーー 進ちゃんと二人きりだよ、どーうしょうぅーー 高校生のときと、状況が同じだゎーー うっれしいなぁーーー 進ちゃん、どうしよう、これから、どうしてやろぅー? ねえ? あ、あたしにどうされちゃいたいぃーー? フフフゥーー)
尚子の心が、悪魔タイプに変身し、別の心の声が全身にこだましていた。尚子はこれから進一と二人きりになることを考えると、心臓が、ドキドキ、パフパフ、鼓動を速めた。職場で配送中にしている進一への誘惑とはレベルが違った。何しろ、ここは尚子が作った密室だ。この作り出した異次元空間から進一は逃げられない。進一をもう、どうにでもできる、と思うと、尚子は異常に興奮してきた。アラビアーナ人の遺伝子が、尚子の体の中心でギィッチョ ギッチョ とたぎった。
「尚子、進一をいたぶってやるんだ、食ってやれぇー、奥まで、がっぷりぃー、フガフガ パフパフ くわえてやれぇー 行っけぇー 今だぁー」
尚子の脳内で、悪魔の叫ぶ声が相変わらず聞こえた。
(あんたは誰? 邪心はずっと昔、愛する今は亡き橋本に退治してもらったはず。これは、本当の自分の声なの? それとも、生き残った邪心なの?)
尚子はどこからともなく聞こえる声に向けて質問した。
進一が通された部屋は建物の大きさから考えてもあり得ない部屋の広さだった。進一は尚子の後について部屋の中に入って、右左、上下、めまぐるしく見回した。部屋の奥は暗いのか、かすんでいて見えない。あまりにも果てしなく広がっているように見える。部屋がゆがんでいるのか、地平線のように丸く見える。それに平行して天井も丸く円を描いている。どこまでも広がっている不思議な空間だ。
(アアー 尚子ちゃんの家だと思うと、また、僕は妄想の世界に入ってしまったんだなー)
進一は思考が不能状態に陥った。尚子と一緒にいて、いい雰囲気になったと思うと、決まって妄想モードだったと言うことが今まで何度となく繰り返されてきた。
(僕は妄想の世界に、もう、つくづく、飽きたよ)
いつものどうにもならない思い。でも、自分が描いた妄想なのだから、仕方ない。自分が望むこの世界を楽しむしかない。進一は気を取り直し、いつものように、妄想の世界を受け入れる。そうやって、尚子に嫌われないよう、意気地のない自分を正当化する。妄想は尚子も自分も傷つかない最良の方法だ。優しさだけの、消極的な意気地のない男のいいわけ。
「尚ちゃん…… 何なのこの部屋の変な見え方って? 僕の目がおかしいのかな? トリックアートとかいうヤツ? それとも、からくり屋敷の一種とか?」
進一はそう言いながら部屋を進む。前を歩く尚子の細い首筋、なで肩から小さな背中にはすけて見える濃紺色のブラ、くびれた腰と、突如、突き出た盛り上がった欲情をそそる尻を凝視した。
(尚ちゃんの体は後ろから見ても、エロいなぁー もうーー抱きしめちゃおうかなぁー)
そう思いながらも、そんなことは絶対できない。だから、どうでもいい部屋の話題を振る。どうでもいいと、思いながらも、尋常とは言えない部屋の不思議さと、この巨大な部屋の空間に不釣り合いなダブルベッドが大いに気になった。
(今、僕の妄想の世界なのかなあ)
進一には、妄想と現実の区別、境界が不確かで、生きている感覚が乏しい。
(僕はこんな状態で生きていると言えるのだろうか)
前に歩いていても、これが前に進んでいることが現実か、虚構の世界か。進一は考えることすら疲れていた。
ベッドの上には等身大の人形が一体置かれていた。近づいて人形を間近に見た進一は、自分と全く同じ体形をしていることに驚いた。前を歩いていた尚子は、寝ている人形の横で止まった。
尚子は、玄関に入ってから後ろを歩いてくる進一にどういう対応をこれからしようか、考えていた。尚子もまた、進一と同じように、病的な現実逃避である妄想モードに突入し易い女だった。
(ああーー 進ちゃんと二人きりだよ、どーうしょうぅーー 高校生のときと、状況が同じだゎーー うっれしいなぁーーー 進ちゃん、どうしよう、これから、どうしてやろぅー? ねえ? あ、あたしにどうされちゃいたいぃーー? フフフゥーー)
尚子の心が、悪魔タイプに変身し、別の心の声が全身にこだましていた。尚子はこれから進一と二人きりになることを考えると、心臓が、ドキドキ、パフパフ、鼓動を速めた。職場で配送中にしている進一への誘惑とはレベルが違った。何しろ、ここは尚子が作った密室だ。この作り出した異次元空間から進一は逃げられない。進一をもう、どうにでもできる、と思うと、尚子は異常に興奮してきた。アラビアーナ人の遺伝子が、尚子の体の中心でギィッチョ ギッチョ とたぎった。
「尚子、進一をいたぶってやるんだ、食ってやれぇー、奥まで、がっぷりぃー、フガフガ パフパフ くわえてやれぇー 行っけぇー 今だぁー」
尚子の脳内で、悪魔の叫ぶ声が相変わらず聞こえた。
(あんたは誰? 邪心はずっと昔、愛する今は亡き橋本に退治してもらったはず。これは、本当の自分の声なの? それとも、生き残った邪心なの?)
尚子はどこからともなく聞こえる声に向けて質問した。
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