H･I･M･E ーactressー

第21章 日常９：耳を塞げば…

６

　友達だからって……
　だから手伝ってやるって……

　そう言ってくれるのは、正直嬉しい。

　翔真くんが同性の身体に触れることに対して、不快感だったり、抵抗だったりがないって証拠だからね？

　僕だってそう……、男の人に触られることは全然嫌じゃない。

　もし触れられることに嫌悪感を抱くんだったら、ＡＶ女優（……で合ってるよね？）なんてお仕事、とても出来ないからね？

　でもさ、そうじゃないんだよ。
　僕は友達としての翔真くんじゃなくて、恋人としての翔真くんに触って貰いたいの。

　だって寂し過ぎるじゃん？

　友達だからヌクの手伝って……なんてさ、こんな僕でも流石に惨めになっちゃうよ。


　「俺に触られるの……、そんなに嫌？」


　え……？
なんで……？
なんでそうなるの？


　「なんつーかさ、全力で拒否ってるじゃん？　そんなに俺に触られるの嫌なのかな……って」
　「ち、違っ……」


　なんでそんな風に思うの？


　「そうじゃなくて……、ただ……」
　「ただ……、なに？」
　「恋人でもないのに、そうゆーことするのは、僕は違うかなって……」


　もし僕達が友達ではなく、恋人と呼べる関係だったとしたら、僕は翔真くんの申し出を喜んで受け入れたと思う。
　ってゆーか、無条件に触って貰ってたと思うし、それ以上のことだって当然……

　でも僕はまだ、翔真くんに何人のお友達がいるかは知んないけど、そのうちの一人でしかないんだもん。
　僕にとって翔真くんは特別な存在だけど、翔真くんにとっての僕はそうじゃないから……


　「ふーん……、なんか良く分かんねぇけど、もし俺が恋人だったら……」


　え……？
　何……言ってるの？


　「俺が、智樹の恋人だったら、触っても大丈夫……ってこと？」
　「う、うん……、でも無理でしょ？」


　だって、根っからゲイの僕と違って、翔真くんは多分ノンケだから……
　ＨＩＭＥのことが好きだからって、それは翔真くんがゲイである証明にはならないから。

　ただ見ているだけと、実際に触れるのとでは、全然違うんだよ？