H・I・M・E ーactressー

誠奈

文字の大きさ
上 下
306 / 688
第20章  日常8:パーティー……とは?

しおりを挟む
 悶々とした気持ちを抱えながらバイト時間をなんとかやり過ごし、桜木くんと一緒に店を出る。

 すると、階段を降りた先の道路に、見覚えのある車が止まっていて……


 あの車って、まさか……違うよね?
 わざわざ相原さんがお迎えに来てくれるなんて、そんなことあるわけ……

 「お疲れ~、ヒ……じゃなくて、智樹」

 あるのね……?
 ってゆーか、今一瞬「HIMEって呼びそうになったでしょ?

 「どうして相原さんが……?」

 運転席の窓から顔を出した相原さんに言うと、相原さんは夜なのに昼間の太陽みたいな笑顔を僕に向け、車に乗るよう促した。

 「え、でも……」

 僕は一瞬桜木くんの顔を振り返ると、桜木くんは目を爛々と輝かせていて……

 「桜木……くん?」

 僕が目の前で手をヒラヒラさせても、瞬き一つもしないで固まってしまっている。

 あ、そっか……
 HIMEの出演作品なら、タイトルは勿論のこと、監督の名前も共演者の名前までしっかり記憶している桜木くんだから、当然相原さんを知らないわけがないよね。

 「えと、あのね、相葉さんは和人の……」

 恋人……って正直に言っちゃって良いのかどうか分からなくて、僕は相原さんに救いを求めるように視線を送った。

 すると、何かを察した相原さんが手をポンと叩き……

 「あ、えと、実は俺達付き合っててさ……」

 ね?、とばかりに僕にウィンクをして寄越した。

 「そ、そうなんだ、実は付き合ってて……、だから……」

 当然、僕も相原さんに話を合わせるように頷いて見せた……けど、ちょっと待って?

 今の言い方だと、僕と相原さん付き合ってる、って聞こえない?


 え、それ困る!
 めちゃくちゃ困る!


 「あ、あのね、桜木くん、違うの……」

 僕は慌てて誤解を解こうとするけど、案の定激しく勘違いしてしまった桜木くんは聞き入れてくれる様子もなくて……

 「なんだ……、それならそうと言ってくれれば良いのに……。へぇ……、大田くんがねぇ……、ふーん……」 

 そう言って僕の肩にポンと手を置くと、白い歯を見せて笑った。


 うん、口元は……ね?
 だって、目は全然笑ってないんだもん。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...