H・I・M・E ーactressー

誠奈

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第14章  日常5:素顔の僕とお姉ちゃん?

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 「ム、ム、ム、ム、ムリッ……!」

 僕は咄嗟に手を引っ込めようとしたけど、和人の力は凄くて……
 おまけに相原さんが後ろから僕を羽交い締めにするもんだから、か弱い(?)僕はもう打つ手なしって感じで……
 触れた指先から、和人の息子がピクピクと脈打つのを感じる度に、僕の視界がどんどん滲んで行って……

 「え、ちょっと、泣いてるの?」
 「ち、違うもん……、な、泣いてなんか……」

 男の子だもん、だからこれくらいのことでは泣くわけないもん……って言いたいけど、ポロンと涙が零れてしまったらもうどうしようもない。
 僕は涙と一緒に流れてくる鼻水を、ズビーッと豪快に吸った。

 「泣く程嫌?」
 「……うん」
 「どうして? お仕事では普通にしてることだし、初めてじゃないでしょ?」
 「でも嫌なんだもん……」

 お仕事の時はHIMEスイッチが入ってるから、されるのもするのも平気だけど、今はHIMEじゃないもん。

 「私のことが嫌いなの?」
 「そ、そんなことは……。ただ……」
 「ただ、何?」
 「和人のことは好きだけど、そういう好き・・じゃないってゆうか……」

 桜木くんへの《好き》は恋愛感情があってのものだけど、和人への《好き》は友情みたいなもんで、同じ《好き》でも種類が違う。
 だからいくら和人のことが好きでも、お仕事以外でパックンは出来ない。

 「ごめん……。お礼なら今度ちゃんとするから、だから……」

 僕は和人に顎を持ち上げられながら、それでも瞼を伏せ小さく頭を下げた。

 すると、その状況に見兼ねたのか……

 「かーず、もうそれくらいにしといたら?」

 僕をギッチギチに羽交い締めにしていた相原さんの手が緩み、和人のお股に触れた僕の手をそっと引き剥がした。

 「これ以上揶揄ったら、HIMEちゃん可哀想だよ。こんなに泣いちゃって……、ねぇ?」

 相原さんが僕の髪を撫でながら、濡れた頬をティッシュで拭いてくれる。


 …ってゆうか僕、揶揄われてたの?


 でもそうゆうことだよね?
 だってさっきまですっごく意地悪な顔してた和人が、今は両手でお腹を抱えて笑い転げてるんだもん。
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