H･I･M･E ーactressー

第10章 日常４：彼のベッド

５

　身体を洗うだけが精一杯のアパートの風呂場に比べ、ゆったりと広いバスルームは、まるでホテルかなんかのようにシンプルなんだけど、お洒落で……
　シャワーコックに手を伸ばした瞬間、ＫＡＺＵとの撮影で訪れたあの超ラブリーなファッションホテルのバスルームが脳裏を掠めた。


　ハート型のバスタブ、可愛かったよな……
　それに、アワアワの風呂の中で、ＫＡＺＵとこっそりあんなことやこんなことしてさ。
　楽しかったし、気持ち良かったし……

　今度は出来れば桜木くんと……って、僕何考えてんの！


　桜木くんとはまだ・・（ここ重要！）そんな関係じゃないし、今後そんな関係になれる可能性だって、全く無いわけじゃないだろうけど、ほぼほぼ無いに等しいってのに、有り得ない状況を想像して、熱くなってしまう僕のアイツ。

　ＡＶの仕事を始めてからこっち、性欲的なもんはかなり満たされてる感があったから、普段反応してしまうことは殆ど無かったんだけど、どうしてだろ……桜木くんの顔を思い浮かべただけで、僕のアイツはどんどん元気になって行って……
　僕は若干熱めのシャワーを頭から浴びながら、そっとアイツに手を伸ばした。

　「んっ……」

　触れた瞬間に漏れそうになる声を、慌てて手で塞ぐ。
　でも一旦動き始めた手だけは、どうしても止められなくて…


　ここじゃ駄目だって分かってるし、我慢しなきゃって思ってるのに、思えば思う程、桜木くんのことを考えれば考える程、アイツの熱は昇る一方。

　「ふっ……、ん、ん……、ぁっ……」

　僕は全身を写す鏡に片手を着いて身体を支えると、忙しない手の動きに合わせて腰を揺らし始めた。


　僕、他人の家のお風呂で何やってんだろ。


　自分の馬鹿さ加減にと、妄想だけで元気になってしまう自分の身体に、ちょっぴり辟易としながら……

　でもその時！