H･I･M･E ーactressー

第６章 ｓｃｅｎｅ２：ファッションホテル

８

　所々消えた各部屋毎のランプを横目に見ながら、奥へ奥へと歩を進めると、見知った顔が僕に向かって片手を上げた。今日の監督さんの国立さんだ。

　「おはようございます♪」

　僕は満面のＨＩＭＥスマイルで国立さんに駆け寄ると、国立さんの腕に自分の腕を絡めた。国立さんとは何度もお仕事をしているから、ちょっと馴れ馴れしいかなぁ……と思いつつも、僕がそうすることで国立さんが嬉しそうな顔をするから、多分喜んでくれてるんだと思う。

　「ＨＩＭＥちゃん、今日は一段と可愛いね。凄く似合ってるよ、その服」
　「そうですかぁ？　ふふ、嬉しい♡」


　ロリータファッションってゆーの？
　これまで着たこと無かったから、本当はちょっと自信なかったんだよね……

　でも国立さんに褒められたから、ちょっと自信ついちゃったかも♪


　「あのぉ、ＫＡＺＵさんは……」
　「ああ、ＫＡＺＵならさっきから中でお待ちかねだよ」

　言いながら、国分さんがドアの横にあるブザーを押す。どうやら外からは開けられない仕組みになってる……らしい？


　ああ、それにしても何でだろう、理由は分からないけど、すっごく緊張する。


　僕は息をフッと吐き出すと、国立さんの腕に絡めていた腕を解き、金髪クルクルツインテールと、淡いブルーのフワフワワンピースの裾の乱れを直した。

　するとゆっくりドアが開いて、そこからクールビューティーを絵に書いたようなお顔が、ひょっこり飛び出した。

　「ＨＩ～ＭＥ ちゃん、お久しぶり♪」

　黒のサラサラロングヘアを揺らし、僕が着ているのと同じデザインの、色違いのワンピースを着たＫＡＺＵだ。


　っていうか……あれ？
　今日は男役だった聞いてたけど、どうして？


　てっきり男の子の格好をしているとばかり思っていた僕は、ちょっぴり戸惑ってしまう。

　「あ、あの、今日は宜しくお願いしま……す」
　「くく、こちらこそ宜しくね？」


　ああ、やっぱりＫＡＺＵって可愛い……っていうよりか、美人さん？


　こんな可愛くて綺麗な人に僕は抱かれるんだって……、そう思ったら僕の心臓が急にバクバク鳴り始めた。