144 / 227
第11章 信愛…
15
しおりを挟む
「おい、翔真君……、しっかりしないか……」
潤一に肩を揺すられ、僕ははっと我に返った。
そしていつの間にか離れてしまった智子の手を取ると、手の甲に頬を擦り付けた。
「智子、良く頑張ったね?」
全ての力を出し切り気を失ってしまった智子の頬に口付けた。
「さあ、抱いてお上げなさい?」
潤一の母親が僕に向かって綿入れに包まれた小さな赤ん坊を差し出す。
でも僕には赤ん坊を抱くための腕が、一つしかない……
「あの……、僕には無理です……」
本当は思い切り抱き締めたい。
小さな指にだって触れたいし、智子に良く似たふくよかな頬に頬擦りだってしたい。
でもそれは、片端になってしまった僕には不可能なこと諦めていた。
すると潤一の母親が僕に胡座をかくよう言った。
僕は意味も分からず、言われた通りに胡座をかいて座ると、その上に片手でも足りる程小さな赤ん坊が乗せられた。
「智子ちゃんに良く似て、とても愛らしいお嬢ちゃまよ?」
女の子……なんだ……
そう聞いた瞬間、僕は智子の言葉を思い出し、思わず吹き出してしまった。
「智子の言った通りだ、とっても可愛い女の子だ……」
僕は膝の上でもぞもぞと動く赤ん坊の頬に、そっと指を触れてみる。
「柔らかいな……」
それに、なんて暖かいんだ……
僕は気持ち良さげに寝息を立て始めた智子の髪を撫でると、耳元に唇を寄せ、「ありがとう……」と一言囁いた。
潤一に肩を揺すられ、僕ははっと我に返った。
そしていつの間にか離れてしまった智子の手を取ると、手の甲に頬を擦り付けた。
「智子、良く頑張ったね?」
全ての力を出し切り気を失ってしまった智子の頬に口付けた。
「さあ、抱いてお上げなさい?」
潤一の母親が僕に向かって綿入れに包まれた小さな赤ん坊を差し出す。
でも僕には赤ん坊を抱くための腕が、一つしかない……
「あの……、僕には無理です……」
本当は思い切り抱き締めたい。
小さな指にだって触れたいし、智子に良く似たふくよかな頬に頬擦りだってしたい。
でもそれは、片端になってしまった僕には不可能なこと諦めていた。
すると潤一の母親が僕に胡座をかくよう言った。
僕は意味も分からず、言われた通りに胡座をかいて座ると、その上に片手でも足りる程小さな赤ん坊が乗せられた。
「智子ちゃんに良く似て、とても愛らしいお嬢ちゃまよ?」
女の子……なんだ……
そう聞いた瞬間、僕は智子の言葉を思い出し、思わず吹き出してしまった。
「智子の言った通りだ、とっても可愛い女の子だ……」
僕は膝の上でもぞもぞと動く赤ん坊の頬に、そっと指を触れてみる。
「柔らかいな……」
それに、なんて暖かいんだ……
僕は気持ち良さげに寝息を立て始めた智子の髪を撫でると、耳元に唇を寄せ、「ありがとう……」と一言囁いた。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
君のためなら親でも殺す
小貝川リン子
BL
時は明治。家族を亡くして独りたくましく生きる少年・稀一郎は、さる陸軍将校の屋敷で奉公することになる。そこで出会った儚げな美少年・朔之介。ツンツンしていて嫌なやつ、と思いきや次第に惹かれていき、秘めた逢瀬を重ねるが……!?朔之介の痛ましい半生が明らかになる時、物語は急加速する。
無邪気だけど短気な攻め×心持ちだけは処女な受け。孤独と孤独が出会い、過去に足を引っ張られながらも、幸せをつかもうとするお話です。差別的、反社会的、未成年に対する虐待描写があります。
ムーンライトノベルズ https://novel18.syosetu.com/n9639gb/
エブリスタとfujossyでも公開中です。
【R18】孕まぬΩは皆の玩具【完結】
海林檎
BL
子宮はあるのに卵巣が存在しない。
発情期はあるのに妊娠ができない。
番を作ることさえ叶わない。
そんなΩとして生まれた少年の生活は
荒んだものでした。
親には疎まれ味方なんて居ない。
「子供できないとか発散にはちょうどいいじゃん」
少年達はそう言って玩具にしました。
誰も救えない
誰も救ってくれない
いっそ消えてしまった方が楽だ。
旧校舎の屋上に行った時に出会ったのは
「噂の玩具君だろ?」
陽キャの三年生でした。
愛欲の炎に抱かれて
藤波蕚
BL
ベータの夫と政略結婚したオメガの理人。しかし夫には昔からの恋人が居て、ほとんど家に帰って来ない。
とある日、夫や理人の父の経営する会社の業界のパーティーに、パートナーとして参加する。そこで出会ったのは、ハーフリムの眼鏡をかけた怜悧な背の高い青年だった
▽追記 2023/09/15
感想にてご指摘頂いたので、登場人物の名前にふりがなをふりました
あなたへの初恋は胸に秘めます…だから、これ以上嫌いにならないで欲しいのです──。
櫻坂 真紀
BL
幼い頃は、天使の様に可愛らしかった俺。
でも成長した今の俺に、その面影はない。
そのせいで、初恋の人にあの時の俺だと分かって貰えず……それどころか、彼は他の男を傍に置き……?
あなたへの初恋は、この胸に秘めます。
だから、これ以上嫌いにならないで欲しいのです──。
※このお話はタグにもあるように、攻め以外との行為があります。それが苦手な方はご注意下さい(その回には!を付けてあります)。
※24話で本編完結しました(※が二人のR18回です)。
※番外編として、メインCP以外(金子さんと東さん)の話があり、こちらは13話完結です。R18回には※が付いてます。
新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~
焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。
美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。
スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。
これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語…
※DLsite様でCG集販売の予定あり
【R18】番解消された傷物Ωの愛し方【完結】
海林檎
BL
強姦により無理やりうなじを噛まれ番にされたにもかかわらず勝手に解消されたΩは地獄の苦しみを一生味わうようになる。
誰かと番になる事はできず、フェロモンを出す事も叶わず、発情期も一人で過ごさなければならない。
唯一、番になれるのは運命の番となるαのみだが、見つけられる確率なんてゼロに近い。
それでもその夢物語を信じる者は多いだろう。
そうでなければ
「死んだ方がマシだ····」
そんな事を考えながら歩いていたら突然ある男に話しかけられ····
「これを運命って思ってもいいんじゃない?」
そんな都合のいい事があっていいのだろうかと、少年は男の言葉を素直に受け入れられないでいた。
※すみません長さ的に短編ではなく中編です
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる