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-第ニ章-サマーオーシャン連合国-獣人の国編-

-第二章三十一節 滑り込み来店と幻影コートと狂気の羊さん-

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目の前で店仕舞いがされている服屋に向かい猛ダッシュするマサツグ!…

その際ゲーム時間では8時になろうとしているのだが…この時間まで

まず服屋が開いて居るのは珍しいと思いつつ…この国の住人の寝る時間も

速いと感じては思わず田舎の1日の様な時間の短さに戸惑いを覚える…

幾ら獣人と言えどやはり人なのか色々な動物みたいに夜行性と言う訳でも

無く…健康的な毎日を送っている様子を目にしながらも脱獄囚のマサツグは

必死に足を動かすのであった。


__ダダダダダダ!!!…


「わああぁぁちょッ!…ちょっと待ってぇ!!」


「ッ!…はい?…」


マサツグが慌てた様子で声を掛け!…それに反応するよう羊の女性が

振り返ると、マサツグは焦った表情のままその羊の服屋へと駆け込む!…

その際周りの人達の目に付かないよう全力で走り込むと、そのマサツグの

全力来店に羊の女性は戸惑い!…それも相手は囚人服を着ている事から

一目で脱獄犯だとバレると、ただ仕舞おうとして居た看板を持ったまま

その場で固まり若干の恐怖を滲ませる!…それもそうだ!…何故なら

脱獄犯が目の前に居るのだから!…そんな脱獄犯を相手に叫ぶ事も出来ず、

ただその場で目をウルウルとさせながら事の成り行きに困って居ると、

マサツグはその羊の女性に声を掛け始める。


「ぜぇ…ぜぇ…

す…すんません!……ちょっとだけ…待って貰えますか?」


「ヒッ!…」


息を切らしながらマサツグは手を伸ばし…待つよう声を掛けるのだが、

羊の女性は完全にマサツグに対して怯えており、相手は自分達とは

違う人間!…それも脱獄囚と言った表情で、ただただ目をピエンと

させてはマサツグの事を見詰めて居た…そしてそんな羊の女性に対して

マサツグは更に焦りを見せると、ただここで妙な騒ぎを起こされるのは

面倒と…何もしないと必死に訴えては叫ばれない様に!…懐から財布を

取り出し振って見せては買い物をすると言った意思表示をして見せる!…


「あぁ~!!…何もしない!…何もしないから!!……

…ただ服が欲しいだけなんです!…ほらお金も持ってる!…

目的はお買い物!…OK?…」


__バッ!!…ジャラジャラッ!!…


「ッ!………は、はい…」


__……バタンッ…カタンッ…


その際中身が有る事を伝えてはちゃんと払うと更に訴え!…羊の女性店員も

そんな必死具合に何かを感じたのか…マサツグには怯えた態度のままなの

だが小さく頷いて見せると、ただ店の中にマサツグを入れては店の扉にcloseと

看板を掛け扉を閉める。そうして誰にもバレる事無く服屋に入れて貰うと、

マサツグはホッとした様子で長居は失礼とばかりに早速服を物色し始め、

そんなマサツグの様子に羊の女性店員は怯えながらもこう告げる…


「…ご!…御用の際はお呼びくださいねぇ~?…

う、伺いますのでぇ~…」


「ッ!…は、は~い…」


一応買い物と言う事で羊の女性がレジの前に立つと、用が有れば聞くと

やはりマサツグに怯えた様子で声を掛け…その怯えた声にマサツグは

戸惑い、自身も釣られて戸惑い気味の声で返事をすると店内は何とも

気まずい空気になり始める!…この時マサツグが体感している物は

あの店員さんに笑顔でガン付きされている様な感覚であり、何とも言えぬ

緊張感を覚えて隣に誰も居ないのに居た堪れない気持ちになってしまう…

そうして服を手に取って違う…手に取っては違うを繰り返し…

思う様に決められないでいると、ふとあるコートの前に立っては自然と

目に付き…マサツグが興味を持ち始めると羊の女性店員に声を掛ける。


「……ッ!…え?…何これ?……

えぇ~っと…す、すいませ~ん!」


__ビクゥ!!…ガタアァ!!…


「ッ~~~~!?…は、は~い!!…

な、何か気になる物がありましたかぁ~?」


マサツグの目に留まったコートと言うのは黒い生地が使われて有り…

と言うよりは何故こんな暑い土地でこの様な全身をスッポリ覆う事が

出来るコートが置かれて有るのか?と悩むのだが、何より興味を持った

理由は別にある!…何故ならそのコートは妙なまでに

そこに有るのか?と…まるで蜃気楼を見ている様な感覚を覚えたから

であった!…とにかくその不確かなコートを見詰めては羊の女性に

声を掛けるのだが、その羊の女性店員は呼ばれた事に吃驚し!…

スツールを蹴飛ばした様子で慌しい反応を見せるとマサツグに

返事をしては内股走りで駆け寄り、マサツグもそんな羊の女性店員の

様子を見て思わず驚き心配すると、羊の女性店員の様子に気を掛ける。


{……やっぱりまだ偉く警戒されてるな…まぁ…無理も無いか…}


「えぇ~っと…大丈夫ですか?…」


「は、はい!!…大丈夫です!!…

それよりも何か気になる物がありましたかぁ~?」


警戒しているのかマサツグにビタ付きする訳でも無く少し距離を

置いて話を聞こうとする羊の女性店員に、マサツグは心配した

様子で声を掛けるのだが…羊の女性店員は大丈夫と言っては慌てた

様子で返事をし、ワタワタと身振り手振りで丈夫さをアピールする

のだがそのぶつけたであろう脚は引き摺って居る様に見える…

明らかに大丈夫そうに見えない様子にマサツグは声を掛けるべきか?と

言った具合に悩むのだが、羊の女性店員は触れて欲しくは無いのか

その引き摺る脚を後ろに隠し…マサツグへ悟られない様にすると、

それを察した様子でマサツグは悩みながらも質問をする。


「……え、えぇ~っと…じゃあ…このコートなんですけど…

何でこんな……何と言うか……存在感?…が無いんでしょうか?…

それにここは…」


「…ッ!…ん~?…あぁ!…

幻影コートですね!!」


「……幻影コート?」


マサツグは戸惑った表情ながら羊の女性店員にそのボンヤリとするコートを

指差し…これは何か?と困惑気味に尋ね出すと、羊の女性店員はマサツグの

指差す方を向いては一度目を凝らすよう顔を顰めて見せる。そして直ぐに

理解した様子で商品の名前を口にするのだが、その際羊の女性店員の口から

出て来た聞き慣れない商品名に、マサツグは復唱するよう再度尋ね…

羊の女性店員もここでプロとばかりにスッと怯えた様子を消して顔を挙げ

出すと、マサツグにその幻影コートの説明をし始める。


「えぇ!……

あぁでもお客さん何処をどう見ても外から来た人だしぃ~?

知らなくてもおかしくないかぁ~!…

私達獣人族は狩りが得意な種族なんだけどぉ~?…

やっぱりそんな種族でも隠れたり気配を消したりするのが

苦手な子が居る訳なのよぉ~!…で、そう言う苦手な子用に

全身を隠す事が出来るコートを作ったんだけどねぇ~?…

この国って基本暑いじゃなぁ~い?

だからこのコートを作っても全然売れなくてねぇ~…」


「ッ!?…きゅ…急にキャラが変わった!?…」


幻影コートの説明をし始めた途端!…羊の女性店員の口調は

某女性芸人のカリスマ店員の様な喋り方に変わり、更に独特の訛り…

某フレンズなアル〇カを連想させる様な訛りも加わると、それは

それはカオスな店員に早変わりする!…先程の恐怖心は何処へやら!…

当然そんな口調に変わった物だからマサツグは羊の女性店員を

見詰めたまま困惑し!…イキイキと自分の仕事を全うする羊の女性

店員の姿に押されに押されて今まさに在庫処分したくて仕方が無いと

言った商品を必死にアピールされ、徐々に後ろへ後ろへと

押されていた!…


__ガタタッ!……ズイッ!…ズイッ!…


「でもでもこのコートすっごいのよぉ~!!

何てったってシャドーウルフのなめし皮を90%使用してるからぁ~!!

シャドーウルフは文字通り影に隠れるのを得意とする狼でぇ~、

一度でも影に隠れると次見つけるのがすっごく難しい狼なんだよぉ~!!

ふんだんに使ってるからその分お値段は高いけど…効果はバッチリ!!…

私が保証するねぇ~!!……でもお客さん凄いねぇ~!!

私ですらこのコートの事を忘れちゃうのにぃ~!!

ちゃんと見つける事が出来るなんてぇ~!!…」


「え?…えぇ~……」


{…コ、コートの説明を聞きたかっただけがいつの間にかこんな事に!?…

これが俗に言うポル〇レフ現象って奴か!?…

…あ!…ありのままに今起きている事を話すぜ!?…

店員さんに説明を求めたらいつの間にか壁際に!!…壁際にぃ~~!!!…

……って、ん?…隠れる?…気配を隠す?……ッ!!…}


そうして羊の女性店員のヨイショも入って来る!…忘れ去られて居た

様子で羊の女性店員が話しては良く見つけたと言って話し、まるで

マサツグが選ばれた様に言い聞かせ始めると、その羊の女性店員に

マサツグはタジタジになる!…このままではコートを買わされる!…

特徴的な髪型をしているジョ〇ョのキャラクターの台詞を思い出しては、

自身の状況を誰も聞いて居ないのに心の中で叫び!…そのままズイズイと

押されて遂に追い込まれ!…身動きが取れなく如何しようもなくなって

しまうと、ふとここである事を思い付く!…そしてマサツグはその考えに

基づき突き出されたコートに目をやると、羊の女性店員からコートを

受け取って笑顔で買う事を口にする。


「…じゃあこれ買います。」


__バサァ!!…


「ッ!?…え?……ッ!?…」


「えぇ~っと…幾らですか?」


マサツグが羊の女性店員からコートを受け取るとレジの前に移動し始め、

それを聞いた羊の女性店員はと言うとまさかの返答が帰って来た事に

戸惑っては、ハッ!とした様子で元のマサツグに怯えた態度に戻り始める!

そして自身がマサツグに迫って行った事も当然覚えている様子でアワアワと

し始めると、改めてマサツグの事を見詰め出し…思って居た程怖くは無い?…

そんな事を考えてはただその場で自身の振る舞いについて反省した態度を

とって居ると、マサツグがレジの前に立ってコートの代金を尋ね始める。

そうしてコートの代金を尋ねられた羊の女性店員はまたもやハッ!とした

様子で…マサツグの問い掛けに対して慌てた様子でまたレジの方に向かい

移動し出すと、戸惑いながらもマサツグに確認の声を掛け始める。


__ッ!?…タッタッタッタッタ!!…


「え…えぇ~っと…先程はごめんなさい!…迫ったりしてぇ!…

無理にお買い上げ頂かなくても大丈夫ですよぉ~!…」


「ッ!…いやいや!…そう言うんじゃなくて少しおば…

悪い事には使わないので安心を…ただお土産的な意味で買いたくて…」


「……本当ですかぁ?

でもそれ結構高いですよぉ~?」


「え?…」


羊の女性店員がマサツグの前に立つようレジに入るとまずは謝り始める…

やはり怯えた態度は失礼と感じたのか?…それとも迫った事に対しての

謝罪か?…とにかく高い物を無理に買わなくて良い!…と言った様子で

畏まってはマサツグに大丈夫と声を掛け、その羊の女性店員に対して

マサツグは買いたいから買うと笑顔で答えると、その言葉で更に羊の女性

店員は困惑の様子を見せる。そして最後の確認をするようオズオズと…

困惑しながらも高いとだけ緊張した様子で伝え、その言葉を聞いて

マサツグも釣られた様に戸惑った様子を見せると、レジにそのコートの

金額が表示される!…


__カッ!…カカカッ!…カッ!…チ~ン!!…


「…165000Gになりますぅ~…」


「ッ!?…うお!?…高っか!?…」


レジはタイプライター型の物で外から手に入れて来たのか…使い込まれた

形跡が多々見うけられ、紙に金額が印刷されマサツグの目の前に表示される!…

そこに書かれて有った金額は165000G!…普段使う回復ポーション(中)の

約330倍で有り、滅多に高額な商品を買わないマサツグからすればべらぼうに

高い金額であった!…恐らくは説明に有ったシャドーウルフのなめし皮が

希少で高いのか、90%使用したと言う言葉を思い出し!…その金額を目にした

マサツグが思わず高いと声に出してしまうと、目の前では羊の女性店員が

言ったじゃないですか…とばかりに無言でピエンの瞳を見せる…


__ウルウルウルウル!…


「ッ!?…ちょちょちょ!!…買いますってば!!…

だからそんな泣きそうな顔しなくても!!…」


「でもでもぉ~!…やっぱり無理強いは!…」


別に羊の女性店員の元々の表情があの顔文字に似ているとかそう言う訳では

無いのだが…如何にも羊と言う事から…ふと連想してしまうとマサツグは

戸惑いを感じてしまう!…そしてレジの向こうではその羊の女性店員が目を

ウルウルとさせてはやっぱり…と言った様子でマサツグを見詰め!…そんな

表情にマサツグは更に戸惑いを覚えて羊の女性店員を宥めようとすると、

羊の女性店員は責任を感じているのか更に悲しい顔をしては金額の掛かれた

紙を切り取ろうとする。


__ピリリリ!…


「だからそれも違うっての!!!…ほら、これ代金!!

これでこのコートは俺のだからね!!」


__ジャリンッ!!…


「ッ!?……え?…えぇ~!?…」


恐らくはその紙がレシート代わりなのだろう…切り取っては金額に

横線を入れて商談不成立にしようとするのだが、マサツグが如何しても

欲しい!と言った様子で慌てて財布からキッチリ!…コートの代金を

取り出すと、羊の女性店員に差し出す!その際お金を出された羊の

女性店員はマサツグの方を見てはえ?…と言った戸惑った表情をし、

本当に買うとは思っても居なかった様子でただ慌てて驚いた反応を

見せて居ると、マサツグはお金を支払った事でそのコートを着始める。

 -----------------------------------------------------------------------

              幻影コート(黒)

               レア度 C

             アバター装備:外套

        特殊能力:気配消し(大)・幻影化・消音

  影に溶け込むのが得意な狼の皮を鞣して作られた大きめのコート。

  黒く鈍く輝く皮の質感はとても上品で普段着としても使える他に、

  隠密行動をする際の目立ち難さもカバーしてくれる特性も兼ね

  備えている。これを着れば闇夜ではまず人に気付かれる事無く

  行動出来る他に悟られると言った心配も無く…布同士が擦れる音・

  歩いたり走ったりする際の足音も消してくれる為、時に大胆な

  行動を取り辛くても安心して行動出来ると言った運動面の方でも

  完璧に考慮がなされて有る。但し逆に日の光が当たる所・着ている

  コートとは反対の色が強く反映されて居る所で着ると、余計に

  目立つデメリットもある!…
 -----------------------------------------------------------------------

すると如何だろう!…そのコートはまるでマサツグ用に作られたかの様に

ピッタリであり、マサツグ自身も驚いた様子で軽く動き出しては具合を

確かめる。


__バッ!…ババッ!!……スッ…


「…おぉ!…良い感じ!…

オマケにフードも付いてるから隠密には最適だな!…」


「ほ…本当にそれで良いのですかぁ~?

そのコートを来て歩いて居たら暑さで倒れちゃいますよぉ~?

そのコートを着て倒れたらもしかすると見つけて貰えないかも…」


「大丈夫ですって!…とにかく!…これで商談成立!…」


軽く腕を回したりその場でしゃがんだり…とにかく動き回っては自身の

動きの邪魔にならない事を確認すると、そのコートに付いて有った

フードを被り出す。その姿は明らかに不審者でしか無いのだがコートの

お陰か…その存在感はほぼ無いに等しく、マサツグが一人良い買い物を

したと言った様子で満足していると、やはり心配なのか羊の女性店員は

マサツグを見詰めて目を潤ませる。そしてもしもの話をし始めては

今からでも遅くは無いと…返品を受け付ける様な事を言い出すのだが、

マサツグは大丈夫と言い!…そのまま店を後にしようとするのだが

その前にハッ!とある事を思い付くと、羊の女性店員の方を振り返っては

徐に声を掛け始める。


{…あの羊の獣人さん…

何処かあの高山山頂のカフェで紅茶を淹れてくれそうな

フレンズと似てたなぁ~…

同じ受け答えするし…雰囲気も何か似てるし…

…何かやり辛かった…}


「ッ!…あぁ~…そうだ!…最後に一つ聞きたい事が有るんだが良いか?…」


「ッ!!…は、はい~…何でしょうかぁ~?」


「いやそんなに……いや……とにかく、ゲステウス?…

って言う宰相に家は何処にあるんだ?…」


色々考えながらドアノブに手を掛け…いざ店を後にしようとした瞬間、

マサツグが思い出した様子で羊の女性店員に質問をすると、羊の女性店員は

驚いた様子を見せる!…突如マサツグに声を掛けられた事でビクッと反応し

慌てた様子で声を震わせては、また元の様子に戻った事でマサツグは戸惑い…

先程のカリスマぶりも何処へやら…プルプルと震える様な態度へ戻った事に

ツッコミを入れそうになるのだが、グッと堪え!…ただゲルデウス…もとい

ゲスデウスの家の場所について質問をした途端!…またもや店員の

態度が豹変し始める!…


__ピクッ!!…スッ……トッ…トッ…トッ…トッ…


「……お客さんもあのの仲間か部下なのかなぁ~?……」


「ッ!?……え?…はい?…な、何で?…」


「質問に質問で返さなぁ~い?…如何なのかなぁ~?」


今まではマサツグに対してプルプルと震え怯えた様子を見せて居たのだが…

一応その怯えが無ければ恐らくは朗らかなほんわかした優しい店員さんなの

だろうが!…ゲスデウスの話をし始めた途端羊の女性店員さんの様子が

変わり出す!…やはりそれは次第に某フレンズの様にゆ~っくり暗~くなると

そのままゆ~っくりマサツグの方を向き!…何か恨みでも有るとばかりの

表情でマサツグの事を見詰め出すと、問い詰める様な言葉を掛け始める!…

一歩間違えればヤンデレ口調!…コロコロと変わるその羊の女性店員さんの

様子にマサツグが戸惑っては如何したと声を掛けるのだが、マサツグの

言葉には一切耳を貸さず!…ただ詰め寄るよう歩いて来ては諸に裏が有ると

言った笑顔でマサツグに再度問い掛け!…マサツグが再び壁際へと

追い込まれると、両手で壁ドンされては完全に逃げ場を失う!…


__スッ…ドンッ!…ドンッ!!…


「…で?…どうしてなのかなぁ~?…

まさかゲスデウスの部下さんだったりぃ~?…」


「…ち…違うけど?…

だとしたら一々屋敷の場所なんて尋ねないと思うが!?……

それに寧ろ今からちょっとばかしお邪魔しようかなって

思っていたところだったけど?…」


まさかの壁ドンを…それも女性から生涯で二度もされるとは思っても

居なかった様子で戸惑って居ると、更に羊の女性店員さんはマサツグに

詰め寄って来る!…その際マサツグは改めて羊の女性店員さんに目を

向けると身長は低く!…顔も幼顔と!…容姿を簡単に説明するとやはり

あの某ア〇パカのフレンズであり!…精々違いが有るとするなら羊の

角が付いて居るか付いて居ないかの差!…マサツグに顔を近付け目を

爛々と光らせるが身長が足りない!…150cm位で意外とボイン!…

これが俗に言うロリ巨乳と言う奴なのか!?と、羊の女性店員さんに

胸を押し付けるよう顔を近付けられてはそんな事を考えていると、

その幼顔からは想像出来ない位の狂気に満ちた眼を向けられていた!…

そんな視線にマサツグは混乱しつつも反論をするのだが…羊の女性

店員さんはやはりマサツグの事を信じていないのか、更に追撃の質問を

繰り出す!


「…ふぅ~~~ん?……

じゃあ…何でお邪魔しようとしたのかなぁ~?」


「ッ!……スゥ~…ハァ~…

誰にも言わない?…」


「ッ!!…え?…」


もはや状況は尋問!…その羊の女性店員さんに理由を聞かれると誤魔化し

切れないと感じたのか…マサツグが徐に深呼吸をし始めると、真剣な

表情を見せては誰にも喋らないかどうかと…自分がやろうとしている事に

ついて話し出そうとする!…そう!…これはあのコートを買わないか!?と

差し迫られた時に思い付いた突拍子も無い考えであり、コートを買おうと

思った理由そのもの!…そしていきなりそんな表情を見せるマサツグに羊の

女性店員さんが思わず戸惑った表情を見せると、マサツグはその仕出かそうと

していた事を淡々と…まるで犯罪だとは思ってもいない様子で話し始める。


「…目的は俺の冤罪を晴らす為!!…それが一番の目的!…

…後はゲスデウスをぶっ飛ばして他の冤罪で捕まっている

連中の解放が目的かな?…そんでもってゲスデウス自身を牢獄に!…

…で、その為にはまずは証拠!…アイツの家に忍び込んで色々と

証拠を手に入れようと考えた訳です!…はい!…」


「ッ!?…え?…そんな事出来る…」


「……如何だろ?…実際の所はやって見ないとだが…

監獄の警備があの程度だったら…行けるんじゃないのかね?…

その為にこのコートを買った訳だし…」


「………。」


マサツグがコートを買った理由を話すと、それを聞いた羊の女性店員さんは

信じられない様子で戸惑う!…ただでさえ今日出会ったばかりの脱獄囚が

幻影コートを買い…そのまま国から逃げ出すのでは無く不法侵入と!…更に

罪を重ねようとしているのだから!…そしてマサツグのやろうとしている事に

対して思わず羊の女性店員さんは出来るかどうかと訪ねてしまうのだが、

マサツグは出たとこ勝負といつもの様にギャンブルに頼り始め!…その答えを

聞いた羊の女性店員さんは思わず呆気に取られ、先程までの憎しみめいた物を

発さなくなるとただただマサツグを見詰める。その際マサツグはと言うと全く

失敗を恐れていない様子で軽く笑みを浮かべると、同じ様に羊の女性店員さんの

目を見詰める…そして…


「……ふうぅ~…とにかく!…

あの下種野郎の仲間では無さそうみたいだねぇ~!…

いやぁ~ごめんなさいねぇ~!!

その名前を聞くと如何もさっきみたいに殺気立っちゃってぇ~!…」


「……ふうぅ~…怖かったぁ~」


別に昼ドラの様な展開などそう言った物は無く…ただ羊の女性店員さんの

誤解が晴れると、マサツグに謝り出しては壁ドンから解放する…

その際もうマサツグに対しての恐怖心は無いのか羊の女性店員さんは普通に

マサツグと接し始め、マサツグも漸く解放された事であの狂気染みたの目を

見る事は無いと安堵すると、自身の胸に手を当ててはホッと一息吐き始める。

そして思わず本音を漏らすと羊の女性店員さんはマサツグの心配をし始め、

先程あそこまで豹変した理由について言い訳する様に語り始める。


「…本当にごめんなさいねぇ~!……

実はねぇ、私の旦那様も謂れの無い罪で牢屋に入れられてたのよぉ~…

たまたまうちに来たゲスデウスが私の事を気に入ったらしくてぇ~…

セクハラをして来たのよぉ~…旦那様が直ぐに気が付いてゲスデウスを

追い払ったんだけどねぇ~…次の日衛兵が来て旦那様を覚えの無い罪で

拘束して連れて行ったのよぉ~……さっき買ってくれたコートが

その旦那様が作ったコートなんだけどねぇ…」


「ッ!……なるほど…だからか……分かった!…」


羊の女性店員さんがマサツグに語り出したのはあのペーターの話で、

やはりこの羊の女性がペーターの奥さんで有ると…自ら明かしては

何故ゲスデウスを恨んでいるのか?…何故マサツグに突っ掛かって

来たのかを説明し、その内容もあのペーターから聞いた話と同じだと

言う事にマサツグが気が付くと、夫婦揃っていかにあのゲスデウスの

事を嫌っているのかが伺える!…その際マサツグが買ったコートは

ペーターが作った物らしく、羊の奥さんはまるでコートの事を遺作…

亡くなったかの様に語っては悲しそうな表情を見せ、一通りの話を

聞いた所でマサツグが一人納得すると、そのマサツグの納得した様子に

羊の奥さんは戸惑う…


「ッ!…え?…」


「丁度良い機会だしアンタに伝言を…

多分だけど…アンタの言うその旦那様の名前は…

[ペーター・マトン]って言うんじゃないか?…」


羊の奥さんを置いてけぼりにマサツグが一人納得すると、良い機会と

ばかりにマサツグはある事を口にし始める!…それは羊の奥さんの旦那…

ペーターの名前であり、言い当てる様にマサツグがペーターの名前を

口にすると、羊の奥さんはハッ!とした表情で一度も旦那の名前は口に

していないとばかりに驚いた反応を見せる!


「ッ!?…え?…何でぇ!?…如何してその名前を~!?…

だって一度もぉ!!…それにぃ!!…」


「…えぇ~っと…これを!」


「ッ!?!?!?……こ、この文字はぁ!!…

それにこの臭い!!…間違いない!!…」


__ポロッ…ポロポロッ!…


その時の奥さんの表情はまるで死んだ人が生き返った様な驚いた反応で、

恐らくは看守達に獄中死したと…或いは処刑されたとでも聞かされた様な

困惑の様子を見せており、マサツグはそんな驚く羊の奥さんに笑顔を

見せて…あのペーターからの脱獄手引きの手紙を見せると、その手紙を

見た途端に羊の奥さんは目を見開いては涙を流し始める!…その手紙は

間違いなくペーターから!…ペーターは生きて居ると確信を持てたのか、

ポロポロと涙を流し続けてはギュッと脱獄手引きの手紙を胸に抱きしめ、

マサツグがその様子を見て更にゲスデウスに対して不快感を覚えると、

更に地獄へ突き落そうと闘志を燃やすのであった!そして…


「…感動に浸ってる所悪いけど…そろそろ良いかな?…

俺も時間が無いし…」


「………止めといた方がいいよぉ…」


「え?…」


マサツグは旦那が生きて居る事に感動して泣いて居る羊の奥さんに、改めて

ゲスデウスの居場所について…若干急いだ様子で尋ねると、その返答を

聞くまで店を出ないと言った態度で待ち始める。すると羊の奥さんもマサツグの

問い掛けに対して徐々に落ち着きを取り戻すと、やはりまだ泣き顔のまま…

マサツグに止めた方が良いとだけ言って首を左右に振っては止めに入り、

その返事が返って来た事にマサツグが戸惑って居ると、その理由を羊の奥さんは

ゆっくり語り始めるのであった。

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辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

転生騎士団長の歩き方

Akila
ファンタジー
【第2章 完 約13万字】&【第1章 完 約12万字】  たまたま運よく掴んだ功績で第7騎士団の団長になってしまった女性騎士のラモン。そんなラモンの中身は地球から転生した『鈴木ゆり』だった。女神様に転生するに当たってギフトを授かったのだが、これがとっても役立った。ありがとう女神さま! と言う訳で、小娘団長が汗臭い騎士団をどうにか立て直す為、ドーン副団長や団員達とキレイにしたり、旨〜いしたり、キュンキュンしたりするほのぼの物語です。 【第1章 ようこそ第7騎士団へ】 騎士団の中で窓際? 島流し先? と囁かれる第7騎士団を立て直すべく、前世の知識で働き方改革を強行するモラン。 第7は改善されるのか? 副団長のドーンと共にあれこれと毎日大忙しです。   【第2章 王城と私】 第7騎士団での功績が認められて、次は第3騎士団へ行く事になったラモン。勤務地である王城では毎日誰かと何かやらかしてます。第3騎士団には馴染めるかな? って、またまた異動? 果たしてラモンの行き着く先はどこに?  ※誤字脱字マジですみません。懲りずに読んで下さい。

はぁ?とりあえず寝てていい?

夕凪
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嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。 ※第二章は全体的に説明回が多いです。 <<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
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王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~

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錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。 しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。 カイトは旅をしていくうちに、薬神として崇められることになるのだが、彼は今日も無自覚に人々を救うのであった。 一方、カイトを追放したパーティーはカイトを失ったことで没落の道を歩むことになるのであった。

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