どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん

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-第一章-スプリングフィールド王国編-

-第一章六節 御前試合・後半戦と本気のハイドリヒと逆転の策-

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二人がリング上で睨み合い膠着状態に入る中、観客達の声援も最初の時は

ハイドリヒを応援する声とマサツグを馬鹿にする笑い声が有ったものの、

いつしかその声援も無くなり沈黙し、戦いの行く末を見守る状態に入る。

そしてハイドリヒが本気になった様子で剣を構え直し、先に動き始めるのだが

その動きはまだダメージを引っ張った様子を見せているのであった。


__ッ!!…バッ!!!…


「ハアアアア!!!」


{ッ!…遅い!!…

さっきみたいにスローモーションじゃないけど明らかに遅い!!…

これなら!!…}


__トンッ!…フォン!!!…


痛みに耐えながらもハイドリヒがマサツグにストレートスラッシュ我流ダッシュ斬りを敢行するが

全快時より明らかにスピードが一段階遅く、それを見たマサツグは自分の攻撃が

効いて居る事を自覚すると同時にペースを掴み始める。ハイドリヒが繰り出した

ストレートスラッシュをサイドステップで簡単に回避しては空振りに終わらせ、

回避された事にハイドリヒが苦虫を噛んだ表情を見せて居ると今度はこっちの番と

言わんばかりにマサツグがカウンターを仕掛ける!


「大振り過ぎだぜぇ!?…」


「クッ!!…舐めるなぁ!!!!」


__バッ!!…フォン!!…


「なッ!?…ウソォ!?…」


マサツグが遂に軽口を叩ける位に余裕を見せ始めると、剣を振り抜き固まって居る

ハイドリヒに追加の攻撃を入れようとするのだが、ハイドリヒは剣が振れなくてもと

言った様子で声を荒げては瞬時にバックステップで後ろに下がり、マサツグの

攻撃を回避する。今までステップで回避すると言った様子を見せず、迎え撃つと

言ったスタンスを見せて来たハイドリヒであったが、初めて回避して見せた事に

マサツグだけでなく観客達も驚いた様子を見せて居ると、更にハイドリヒが

マサツグへカウンターを被せる!


「如何した!!…私が回避出来ないとでも思ったかぁぁ!!!」


「ッ!?…」


「貰ったぁぁぁ!!!」


ハイドリヒがマサツグのカウンターをバックステップで避けたと同時に剣を上段に

構えると袈裟斬りに剣を振り下ろす!その際マサツグから一撃貰った事に怒りを

覚えた様子で吠えて見せ、マサツグが振り下ろされた剣に戸惑って居ると今度こそと

言った様子でハイドリヒが意気込む!しかしマサツグもまだやられる訳には

行かないとばかりにスキル欄から先ほど習得したスキル「刹那」を選択すると、

今度は自分の意思で発動する!


「ッ!!…刹那!…発動!!!…」


__ヴウン!!……バッ!!!…フォンッ!!!…


「ッ!?…また急に動きが!?…

クソッ!!…一体何なのだコイツは!?…」


「このまま!!…」


マサツグが刹那を発動するとまた世界がゆっくりと進む様な感覚に襲われ、

マサツグの視界に映る全ての物がスローモーションに見え始める。それは

ハイドリヒのカウンター攻撃も例外では無く、マサツグが刹那を発動して

ハイドリヒの攻撃を回避する中、ハイドリヒの視線からマサツグを見ると

またもやとんでもない反応速度を見せては回避して居る様に見える。その様子に

ハイドリヒが戸惑い、自身の攻撃が当たらない事に更に苛立ちを募らせて居ると、

マサツグの二度目のカウンターが飛んで来る!しかし…


__ガキイィィン!!!…


「クッ!!!…」


「ッ!?…ガードした!?…

後ちょっとだったのに!!!…」


マサツグの二度目のカウンターが飛んで来る事を予測して居たのか、ハイドリヒが

マサツグの攻撃を剣で防いで見せると二度目の鍔迫り合いに発展し、マサツグが

攻撃を防がれた事に驚いて居ると後少しで倒せたかもと悔しさを少し表情に滲ませる。

そうしてまた闘技場内に二人の剣がぶつかる金属音のみが響くのだが、ハイドリヒは

マサツグに対して不信感に似た苛立ちを覚え始めると徐々に感情的になり始める!


「貴様ァ!!…

さっきから一体何をしている!!!…」


「ッ!……一体何の事だか?…」


「恍けるな!!!

幾らあのオオトカゲを倒せた者とは言え!…

駆け出し冒険者があんな動きが出来るものか!!!

貴様は一体何者だ!!!」


「ッ!!…クッ!!…感情的になると如何してこうも力押しになるのかね!?…

まぁ、単純にコレされると辛いのは認めるけど!?…」


マサツグを押し潰さん!!と言った勢いを見せてはハイドリヒが鍔迫り合いで

ゴリ押し、刹那の存在は知らなくともマサツグがスキル刹那を使って居る事に

気が付くと、ハイドリヒはマサツグに向かって声を荒げては卑怯とばかりに

怒って見せる!その様子にマサツグが恍けた表情を見せては鍔迫り合いを続け、

マサツグの態度にハイドリヒが更に激昂した様子を見せ、マサツグが苦戦を

強いられ始めるとハイドリヒは遂にマサツグを剣で弾き飛ばしては、突如として

突きの構えを取り始める!


__ガキイィィィン!!!……チャキッ!!…


ハイドリヒが左腕をマサツグに向けてピンと伸ばしては右手に剣を構えて肘を

後ろに引き、その切っ先も同じくマサツグに向けて足を肩幅に開くと真っ直ぐ

マサツグを睨み付ける。さながら何処かの三番隊隊長の得意とする技の構えにも

見えるのだが、違う点が有るとするなら明らかに向かって来る足の構えでは

無いと言う事。本来相手に向かって走って行く場合、絶対に片方の膝を曲げて

居る筈なのだが曲げては居らず、寧ろまるで弓道の様に構えては制止しマサツグを

射貫こうとして居る様にも見える。そしてマサツグが弾かれたショックで後ろに

仰け反り慌てて態勢を整えた後、そのハイドリヒの構えを目にすると戦闘が始まる

前のメイドさんの言葉を思い出す!


「ッ!!…っとっとっと!……だはあぁ~……ッ!?…

あれが毒吐きメイドさんが言ってた突きの構えか!?…」


「もういい!…この技で決着を着ける!!……

久しぶりに腕の良い者と手合わせ出来ると思ったが!…

まさかただの卑怯者だったとは!!…

これではあのオオトカゲも報われぬであろうな!?…」


「ッ!?…何言ってんの?この騎士様?…」


__ザワザワ!!…ザワザワ!!…


メイドさんが言っていた言葉をマサツグが思い出して居るとハイドリヒは俯き始め、

マサツグを見限った様に話しオオトカゲが可哀そうと口にしては、剣を握る手を

強くし集中し始める。そのハイドリヒの言葉にマサツグが戸惑いながらもツッコミを

入れるのだが、そのマサツグの反応とは裏腹に先ほどまで静かだった観客達の様子が

一転、慌しくザワザワと騒がしくなり始める。その様子にマサツグも気が付くの

だが、ハイドリヒが注意しろと言われていた突きの構えで硬直し動かないで居る事が

気になり、観客達の方に気を向ける事が出来ないで居ると次の瞬間それは起きた!…


「いくぞ!!!!」


「ッ!!…」


「エルレイド!!!…フルーレ!!!!」


__ボウッ!!!!…


ハイドリヒがマサツグに予告し、その予告に何が来るか分からないままマサツグが

身構えいつでも動ける様に目を凝らして居ると、ハイドリヒは腰を捻って更に右肘を

引き技名を口にし始める。その様子に観客達もが警戒した視線を向ける中、

ハイドリヒがマサツグに向けて突きを繰り出すよう…まるで引きに引き絞った弓を

開放するよう突きを繰り出すと、その突きは螺旋を描くと同時に辺りの空気や風を

巻き込む様に巨大化し、放たれた時にはまるでお寺の吊り鐘を叩く橦木位は有る

と言った竜巻がマサツグに向けて放たれた様に見える!そしてそれを目の前にした

マサツグが一気に顔を青くしては不味いと感じると迷わず横っ飛び回避をする!


「ッ!?…不味い!!!」


__ンバッ!!!……ザシュッ!!!!…


「グッ!!!…うわあああああああぁぁぁぁぁ!!!!」


__…シュンシュン!!…ドガアアァァァァン!!!!…ドサァ!!…


あのメイドさんが気を付けろと言うだけあって破壊力と攻撃範囲が異常で、

横っ飛び回避したにも関わらずマサツグが掠った程度に被弾するとその部分を

巻き込む様にして引っ張られ、そのまま巻き込まれると更に追加のダメージを

与えて来る!それはまるで鋭い刃の付いた竜巻と言った所か?…

アースランナーみたく地を這う斬撃とは違い、完全にこちらへ向かって一直線に

飛んで行ってはマサツグを後ろの壁に叩き付けるまでその突きが止まる事は無く、

更に風を纏う事によりまるで刃が研がれ続ける様な更に威力の高い斬撃を実現して

いる様子がマサツグの叩き付けられた壁に残っていた。そして技自体は掠った

程度でも巻き込まれて壁に叩き付けられた為、ある程度あった筈のマサツグのHPは

ゴリっと抉り取られる。そして幾らか痛覚のフィードバックが制限されているとは

言え、その威力と痛みのヤバさにマサツグが起き上がろうとするが思う様に

起き上がれない。このゲームではよりリアルに体験出来る様に…或いは

その手合いの方向けなのか痛覚フィードバックが設定出来るようになっており、

初期設定のままだと大した事は無いのだが、それでもマサツグは痛いと言った様子で

苦痛の表情を見せる。


「ッ!!…ッ~~!!!!…」


{痛っっってぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええ!!!……

マジか!?…まだ確か八割位は有った筈なのにカス当たりで七割持って行くとか!…

そっちの方が卑怯臭いだろうが!!!…

クソ!!…残りは一割!!…潮時か?…}


ハイドリヒのトンデモ技にマサツグが心の中で驚愕し、その威力と当たり判定の

大きさに物申したい気持ちで一杯になる。何とかガードや回避で温存して居たHPも

たったこの一撃で無かったものとされ、残りHPが一割を切った事によりアラート音が

聞こえて来るといよいよ死を考えさせられる。奇跡的に残った一割だけのHPを見詰め

如何するかと悩んで居ると、ハイドリヒが倒れるマサツグを見詰めては舌打ちをして

呟き、まだ生きて居る事を知っているかの如く起きるよう剣を突き付け文句を言う!


「チッ!…掠っただけか…

往生際の悪い!!…まだ立てるのだろう!?…サッサと立て!!!」


{さて…如何する?…今から赤っ恥覚悟の土下座で降参を宣言するか?…

…いや…あの騎士様は絶対に納得しないな……

あの性格を見る限り根性を叩き直すとか言って余計に怒らせて…

何だかんだで後を着けて来そうな気がする!……となるともう…

対人戦に置いて…をするしか無いって事か…}


ハイドリヒが剣を突き付け文句を言う中、マサツグが必死に起き上がろうとしては

如何やってハイドリヒから勝利を勝ち取るかと悩み始める。幾ら首の皮一枚だけが

繋がったとは言え相手のHPを見る限りはまだ八割は残っており、もはや時間を

掛けた所で倒せる見込みは何処にも無く、更に長期戦を仕掛けるにもガードで

耐え忍ぶ事すらもう許されない…絶体絶命の危機。しかしそんな状況でもマサツグの

心はまだ折れては居らず、相手に勝つ最後の手段を思い付くとその作戦を本能的かつ

瞬時に考えるのだが、それは余りにも大きな賭けで有り成功する確率はかなり低い。

そしてマサツグが起きない事に苛立ちを隠し切れない様子でまたハイドリヒが

突きの構えを取り始めると最後の警告をする。


「……如何して立たないのだ?…

まだ意識が有る事位は分かっているぞ!!!…何故立たない!!!!…

……如何しても立たないと言うのなら!!…」


__チャキッ!!…ッ!!…どよどよ!!…どよどよ!!…


「ッ!!…いけません!!ハイドリヒ騎士団長!!!…

その様な事をすれば民に如何思われる事か!!!…」


「ッ!?…五月蠅い!!!…

これは私とアイツの一騎打ちだ!!!…邪魔をするな!!!!」


倒れるマサツグにハイドリヒが剣を突き付けるとその様子に観客達が驚きと戸惑いの

声を上げ、王様や貴族の者達が慌てて審判に中止の判断を下しては命令する!

その命令に審判が従い、マサツグとハイドリヒの間に立っては中止と身振り手振りで

ハイドリヒに伝えるが、ハイドリヒは全く聞く耳を持たない様子で剣を構え続ける。

そんな戸惑いと驚きの声が闘技場に聞こえ始める中、マサツグが倒れながらも一言

ハイドリヒに軽口を言うと徐に起き始める。


「…やれやれ……短気は損気って言う言葉を知らないのか?…」


__ッ!?…ざわざわ!!…


「ッ!!…駄目だ無理するな!!!…

君!!…今の一撃で意識が!!…」


「退いてくれ!!…」


倒れているマサツグからでもそのダメージが大きかった事が分かる位に着ていた服は

ボロボロ、それでもマサツグが立ち上がり、近くに落ちていた自分の剣を拾うと

リングに向かって歩き始め、その様子を目にした観客達・王様とお妃・貴族の者達が

驚愕して居ると審判が慌ててマサツグに駆け寄って来ては心配した様子で制止を

呼び掛ける!しかしマサツグはその審判を避けるとそのままリングへと戻って行き、

ハイドリヒの前で剣を構え直す!


__スゥ…フォン!!……ッ!…


「…さぁ!…続きをしようか?……

騎士団長様?…」


「ッ!……フッ!…良いだろう!!…

だがこれで終わりだ!!!」


マサツグが剣を上段に構えては一振りして見せ、まるで剣道で言う正眼の構えの様に

背筋を伸ばしては真っ直ぐ相手を見詰めて利き足を一歩半前に出し、両手で

しっかり剣を握っていつでも動ける様に身構える。マサツグ自身剣道は

全くやった事は無く母親に聞きかじった程度の知識しか無いのだが、実際に剣を

手に構えて見ると何となくこの構えがしっくり来る。そしてハイドリヒもそんな

マサツグの構えを初めて見たと言った様子で見詰めていると、マサツグが覚悟を

決めた表情でハイドリヒに続きを始めようと本気のトーンで話し掛ける。その様子は

誰がどう見てもまだ戦う事を諦めていない男の顔をしており、その表情と態度に

対峙しているハイドリヒや観客、王様に貴族と更に驚愕した表情を見せては

マサツグを見詰める。そしてハイドリヒもそんなマサツグに触発されてか軽く笑みを

零してはこれで仕留めるとばかりに突きの構えをして見せる!もはや審判の判断など

完全無視した状態の二人が構え合い互いの間に静かな空間が出来ると最後に

マサツグは心の中で呟く。


{…ここまで盛大に啖呵切っといて失敗したら終わりだな…

…でも…ここでやらないでやられるより!…

やってやられる方が何倍もマシだな!!!…}


「行くぞ!!!…エルレイド!!!…」


{ッ!!…来る!!!…}


__バッ!!!…


「フルーーーレェェェェ!!!!!」


マサツグが覚悟を決めハイドリヒに剣を構えてはエルレイドフルーレが飛んで

来るのを待つのだが、今マサツグが考えている作戦は余りにも無謀であり捨て身で

勿論誰もやった事は無く、このゲームのシステム上出来るか如何かすら分からない

トンデモ作戦であった。しかしマサツグがやるしか無いと言った様子で身構えては

一切視線を逸らす事無くハイドリヒを見詰め、ハイドリヒもそれに答えるよう技の

体勢に入り始めるとそれに見たマサツグは剣を上段に構えてハイドリヒに向かい

走り始める!しかしハイドリヒは構わずマサツグに向かいエルレイドフルーレを

放つと今まで以上に力が籠っているのか、先ほどの時より更に威力と範囲が大きな

一撃を繰り出す!


__ゴウ!!!…


「ッ!!!…」


__バッ!!…カッ!!!…バシュウウゥゥゥゥゥ!!!!…


リーナが放ったエルレイドフルーレは真っ直ぐマサツグに向かい飛んで行き、

マサツグがそれに対して大きく踏み込んでジャンプし、兜斬りを敢行すると

エルレイドフルーレと衝突する!ぶつかったであろう瞬間エルレイドフルーレが

纏っていた風が暴発し、辺りに散っていた砂を巻き込んでは砂嵐の如く砂埃が

舞うと、闘技場に居る者全てを襲い始める!その砂埃に観客達が悲鳴を上げて

何が起きたのかと混乱し始めると、その砂埃は時間にして4~5秒位ほど砂嵐と

なって闘技場を包み、そして暫くして徐々に砂嵐が収まり出すと闘技場全体が

見え始める。リング上に居るであろう二人の姿を確認するのだがそのリング上に

人影は一つしかない。


__ザアアアァァァァ!!……


「…ッ!!…ッ!!!……?…

お、収まったか?…ッ!?…おい一人しかいないぞ!?…」


「まさか消し飛んだのか!?…

だ、誰が残ってるんだよ!?…」


「一人しかいないだろ!!!…ハイドリヒだ!!!…」


観客席が慌ただしくなる…町の人・冒険者・王様に貴族とリングの上に居るのは

やはりハイドリヒただ一人でそこにマサツグの姿は何処にも無く、騒然とした様子で

闘技場内の至る所に目を向けるのだがやっぱりマサツグの姿は何処にも無い。

リング上ではハイドリヒが困惑した様子で剣を手に立ち尽くし、戦闘エリア内と

リング上を見回してはマサツグの姿を探して居るのだが見つからず、慌てた様子を

見せては何やら後悔した言葉を漏らし始める…


「…やってしまった…のか?…私は?…

ただ感情のままに放った技が!…人の!…命を!?…」


「……ッ!!…ス、ストップスト~~ップ!!!…

一時中断だ!!!中断だ!!!」


今にも崩れそうな勢いで顔に手を当て後悔し始めたハイドリヒの様子に審判が

ハッとした様子で御前試合の中止を呼び掛ける!あまりにも遅すぎる様な気も

する中、その中止の声に観客達は勿論…王様に貴族達と困惑した表情を見せ

始めるのだが、ただ一人だけは笑いまだ終わって居ないと一言口にする!…


「くふふふ!!…面白い!…ほんに面白い!!…

これは目を付けて正解じゃったわ!!…まだじゃ!…まだ終わっては居らぬ!!…」


__わいわいガヤガヤ!!…どよどよザワザワ!!…


「…やばいんじゃないのか!?…今までに御前試合で死者が出た事なんて!?…」


「ある訳ないだろうが!!!…これはあくまでも手合わせで…」


闘技場に向かう前、ずっとマサツグに目を付けていたボロローブを纏う者が誰にも

聞こえないよう一人で笑い、空を見上げてはまだ終わって居ないと楽しそうに

口にする。その様子に誰も気づかないまま更に闘技場内が騒然とし始め、王様主催の

イベントで初の死者が出たと慌て始める中、呆然とリング上でハイドリヒが

立ち尽くし、まるで糸が切れた操り人形の様にダラン…と脱力して居ると次の瞬間

何処からともなくマサツグの声が聞こえて来る!


「…まだだ!!!」


「ッ!?…え?…」


__ッ!?ザワザワ!!…ザワザワ!!!…


「まだ終わってない!!!……はぁ!…はぁ!…

終わってないぞおぉぉぉぉぉぉ!!!!」


突如聞こえて来たマサツグの声に反応してハイドリヒが顔を上げるがやはり何処にも

マサツグの姿は無い、しかし声は今だに聞こえており更に少しずつではあるものの

マサツグの息を切らす声も聞こえて来る。そしてその声と呼吸はしっかりと観客達の

耳にも届いており、観客達もハイドリヒ同様戦闘エリア内を再度くまなく

探し始めるのだがやっぱり見つからない。誰もが自分の耳を疑い、何かバグが起きた

のかとただ困惑し始めようとした瞬間、一人の観客がチラッと空を見上げては驚いた

様子で声を挙げる!


「……ッ!?…お、おい!!!…そらを見ろ!!!」


「え?……ッ!?…う…嘘だろ!?…」


「……ッ!!!!」


その観客が一人、空を指差して慌てた様子で声を荒げて居るとその声に釣られて

他の観客達も空を見上げる。するとそこには闘技場へ向かい落下する何かの影が

一つあり、その影をよぉく目を凝らし確認するとその影がマサツグだと言う事に

観客達が気付く。勿論驚いた表情を見せては有り得ないと声が上がり、一体何が

起きたのかと困惑しているとその観客達の声にハイドリヒも気が付いてか、空を

見上げる。するとそこには観客達の言う通りマサツグの姿が有り、マサツグは

高速でHALO降下して来ては一直線にハイドリヒに向かい落下して来ていた!

その光景を目にしてハイドリヒが生きて居る事に安心した様な困惑して居る様な…

自身の中の感情が酷い混乱状態に陥るともう…ただ思った事しか口に出来ない。


「ア…アイツ!!…生きて!?…いや!…それよりもどうして!?…

あの技は私の全力!!…じゃなくて!…どうやって着地!?…でも中断じゃ!?…」


「うおおおおおおああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」


「ッ!?…向かって来る!?…この状況で!?…

う、うわああああぁぁぁぁぁぁ!?…」


「これで終わりだああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


ただ困惑するハイドリヒに向かい真っ直ぐマサツグが落下して来ると剣を構え、

その様子に気が付いたハイドリヒが更に困惑し始めると、とにかくと言った様子で

咄嗟に剣を構える。そうしてマサツグが叫びながら落下して来ては空中で一回転して

体勢を整え、更に落下の勢いそのままハイドリヒに向かい本日の二度目の兜割りを

叩き込むと、下で困惑しながらも構えていたハイドリヒの剣と激しくぶつかり合う!


__ガキイイイィィィィィィンン!!!!…


「ッ!?…ウゥ、ウオァァァァァァァァァ!!!!!」


「だあああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


落下しながら最後の攻撃を叩き込むマサツグとそれを支える様にしてガードする

ハイドリヒ、マサツグは最後まで諦めない様子の表情で挑み…最後の最後で体力が

尽きない様に耐え続け、もはや何が如何なったのか分からないハイドリヒはただ

マサツグの最後の攻撃を耐えながら酷く驚き戸惑う!互いが激しくぶつかり

トンデモナイ剣戟音が響き渡るとまるで空中で静止している様に鍔迫り合いが

始まる!互いが必死の表情でぶつかり叫んでは火花を散らすのだが、その結末は

誰も想像しなかった結末でこの勝負の幕を閉じる。


__ガガガッ!!!!…パキイィィン!!!……フォンフォンフォン…サクッ!!…


「なッ!?!?!?…」


__ゴロン!…シュタッ!…チャキッ!!!…


「…はぁ!…はぁ!……

チェックメイト!!!…」


互いの剣が激しくぶつかり合い摩耗し合い、拮抗状態が作られていたのだが

その時は来る!それはまさしくマサツグが狙っていた勝利の方法で、一度説明書で

見ただけの難易度高めの勝利方法であった。

その勝利条件…それは相手の武器を壊すと言う勝利条件であった。

だがこの勝利条件はかなり限られた場所でしか掴む事の出来ない勝利条件であり、

まず大前提として一騎打ち…つまり決闘状態で無いと適応されないと言う事が

必須条件であり、更に相手が攻撃魔法を使えた場合はTPを一定値消費させないと

いけないと言うもう一つの条件が有る。まず滅多な事では決闘が起きないと

言う事と魔法を使い切らせる前に倒す…倒されると言うのが発生する為、あんまり

知られていない勝利条件なのであった。そしてマサツグはその勝利条件を満たし、

ハイドリヒの持つ剣の刃を真っ二つに圧し折り、落下ダメージを軽減する為に

受け身を取って、直ぐに体勢を整え立ち上がると相手が動けないようハイドリヒの

首元に剣を当てる。その際圧し折れた剣はそのまま宙を舞った後、リング外の地面に

落ちては地面に突き刺さり、相手を切らない様にしつつもマサツグがこれで自分の

勝ちとばかりに堂々「チェックメイト」と口にすると闘技場内は今まで以上の

静けさに包まれる。そしてハイドリヒは何が起きたのか理解出来てはいない様だが、

自分の首元に相手の剣があると言う事だけは理解すると静かに…

ゆっくりと両手を挙げる。


__……スッ…スススッ…


「ま…まいった?…」


「はぁ!…はぁ!……ふうぅ~…」


__……チャキッ……ズ…ズズズ…ぺたん…


まだ混乱しているのかハイドリヒの言葉は疑問形、それでも今の言葉は闘技場に

居る全員が聞いた様子で驚いた表情を見せ、剣を突き付けるマサツグが降参の言葉を

聞き、息を切らしながらも何も言わずにゆっくりハイドリヒの首元から剣を放すと、

ハイドリヒはその場にゆっくり崩れ落ちる。そうして少しの間沈黙が続き、徐々に

日が暮れ始める中、観客達は勿論王様や貴族達、警護に当たっていた兵士達が

その決着の着き方にただ困惑した様子でそのへたり込んだハイデリヒと剣を手にする

マサツグを見詰め、同じ様に困惑した様子で審判の兵士が立ち尽くして居ると、

後ろから白熊が黒い鎧を着た様な大男が現れてはその審判の肩を叩き、審判の

代わりをするよう闘技場内に響く声で静寂を打ち消す堂々の号令が響く!


__パンッ!!…


「ッ!?…しょ、将軍!!!…」


「…うむ!!……勝負アリ!!!!…

この勝負…冒険者マサツグの…技有りの勝利とする!!!!!」


__わあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!


将軍と呼ばれる大男がマサツグの勝利を口にした瞬間、割れんばかりの歓声が

闘技場内に響き渡る!!!…と、同時に女性陣の悲鳴も聞えて来る…

余程ハイドリヒが負けた事がショックなのか号泣する声まで聞こえて来る中、

そんな事ばかりだけでなく観客全員が席から立ち上がっては勝ったマサツグに

称賛の拍手を叩き始める。その中には戦いが始まる前散々マサツグを

馬鹿にしていた者達も入っており、その連中を見てマサツグが心の中で

現金な奴らと思いつつも素直に感謝する。そうして戦闘時間…十五分の普通より

長く苦しい戦いに勝利したマサツグは徐々に勝利を噛み締めると、握っていた

剣を手に天高く突き上げてはグッとガッツポーズをして見せる。その際マサツグの

戦闘の様子を動画に取っていた者が居たらしく、後日本人の与り知らぬ所でその

動画が挙げられて居る事に気が付くマサツグなのであった。


「……くふふふ!…ほんに…ほんに勇ましくも逞しく…楽しき男の子よなぁ?…

……ふむ…気に入った!…少しばかり…遊んでみるかや?…マサツグとやら?…」


__カラン!…コロン!…カラン!…コロン!…


…それと同時にこれまたマサツグの与り知らぬ所である者に気に入られるとその者は

静かに席を立っては闘技場を後にし始める。その恰好からは想像出来ない花の匂いを

漂わせ、足取り軽やかに上品に歩き高下駄の音を響かせ、クスクスと静かに笑う…

そんな相手に今後付き纏われる事も知らないマサツグなのであった…

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感想 63

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【第10章、始動!!】ダンジョンが現れた、現代社会のお話 主人公の冴島渉は、友人の誘いに乗って、冒険者登録を行った しかし、彼が神から与えられたのは、一生レベルアップしない召喚獣を用いて戦う【召喚士】という力だった それでも、渉は召喚獣を使って、見事、ダンジョンのボスを撃破する そして、彼が得たのは----召喚獣をレベルアップさせる能力だった この世界で唯一、召喚獣をレベルアップさせられる渉 神から与えられた制約で、人間とパーティーを組めない彼は、誰にも知られることがないまま、どんどん強くなっていく…… ※召喚獣や魔物などについて、『おーぷん2ちゃんねる:にゅー速VIP』にて『おーぷん民でまじめにファンタジー世界を作ろう』で作られた世界観……というか、モンスターを一部使用して書きました!! 内容を纏めたwikiもありますので、お暇な時に一読していただければ更に楽しめるかもしれません? https://www65.atwiki.jp/opfan/pages/1.html

魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。 そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。 しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。 過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!

『山』から降りてきた男に、現代ダンジョンは温すぎる

暁刀魚
ファンタジー
 社会勉強のため、幼い頃から暮らしていた山を降りて現代で生活を始めた男、草埜コウジ。  なんと現代ではダンジョンと呼ばれる場所が当たり前に存在し、多くの人々がそのダンジョンに潜っていた。  食い扶持を稼ぐため、山で鍛えた体を鈍らせないため、ダンジョンに潜ることを決意するコウジ。  そんな彼に、受付のお姉さんは言う。「この加護薬を飲めばダンジョンの中で死にかけても、脱出できるんですよ」  コウジは返す。「命の危険がない戦場は温すぎるから、その薬は飲まない」。  かくして、本来なら飲むはずだった加護薬を飲まずに探索者となったコウジ。  もとよりそんなもの必要ない実力でダンジョンを蹂躙する中、その高すぎる実力でバズりつつ、ダンジョンで起きていた問題に直面していく。  なお、加護薬を飲まずに直接モンスターを倒すと、加護薬を呑んでモンスターを倒すよりパワーアップできることが途中で判明した。  カクヨム様にも投稿しています。

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

異世界にアバターで転移?させられましたが私は異世界を満喫します

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ナノハは気がつくとファーナシスタというゲームのアバターで森の中にいた。 そこからナノハの自由気ままな冒険が始まる。

収奪の探索者(エクスプローラー)~魔物から奪ったスキルは優秀でした~

エルリア
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HOTランキング1位ありがとうございます! 2000年代初頭。 突如として出現したダンジョンと魔物によって人類は未曾有の危機へと陥った。 しかし、新たに獲得したスキルによって人類はその危機を乗り越え、なんならダンジョンや魔物を新たな素材、エネルギー資源として使うようになる。 人類とダンジョンが共存して数十年。 元ブラック企業勤務の主人公が一発逆転を賭け夢のタワマン生活を目指して挑んだ探索者研修。 なんとか手に入れたものの最初は外れスキルだと思われていた収奪スキルが実はものすごく優秀だと気付いたその瞬間から、彼の華々しくも生々しい日常が始まった。 これは魔物のスキルを駆使して夢と欲望を満たしつつ、そのついでに前人未到のダンジョンを攻略するある男の物語である。

【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?

嘉神かろ
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【Hotランキング3位】  ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。  見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。  大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!  神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。 「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」

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