なんでも諦めてきた俺だけどヤンデレな彼が貴族の男娼になるなんて黙っていられない

迷路を跳ぶ狐

文字の大きさ
14 / 29
二章

14.手出しさせない

しおりを挟む

 イウリュースは、自分自身に落ち着くように言い聞かせて、クレッジに向き直った。

「クレッジ、俺……大丈夫だよ? あんなの、ヴィルイが見栄で言ってるだけ。クレッジ、自分でそう言ってたじゃないか」
「そうですけど…………それでも、心配なんで……俺も、一緒に行きます」

 真剣な目で言われて、気持ちが揺らぐ。

(俺のこと……そんなに心配してくれているんだ……可愛いな……じゃなくて、追い返さなきゃいけないんだ! だいたい、ここはヴィルイの屋敷。そんなところにクレッジを入れてたまるか!!)

 しかし、困った。

 クレッジは引き下がってくれそうにない。そもそも、普段面倒ごとを嫌う彼が、ここまでついてきたのだ。ちょっと言ったくらいでは、帰らないだろう。

 しかし、さっきと同じように突き放すことはしたくない。クレッジに嫌われては、元も子もなくなる。

(俺のことを心配して来てくれたんだ……もう、ひどい言い方で追い返したくない…………この際、今日は引き下がるか……? だけど……)

 ここは一旦引き下がったほうが得策かと思ったが、首を横に振った。

 一度約束を反故にすれば、ヴィルイも警戒する。
 ヴィルイは魔法使いだ。こちらの手の内を読んで、魔法を妨害する結界くらい、張るかもしれない。そうなれば、ヴィルイを尋問する間、屋敷全体にかける予定の睡眠の魔法が効かなくなるかもしれない。そうなれば面倒だ。相手が油断している今のうちにやってしまいたい。やはり、なんとかしてクレッジを追い返さなくては。

 しかし、どう切り出そうか。

 イウリュースは、悩んでいた。

(いっそのこと、今は時間が早過ぎたとか、そんな感じの言い訳をつけて、一度帰ろうか……クレッジを連れて帰って、そして後でまた、ここへくればいい)

「そうだね。クレッジの言うとおりだ。一回帰って……」
「え? 困ります」

 即座に言ったのは、門の前に立つパティシニル。

「お約束があって来てくれたんですよね? さっき、自分でそう言ったじゃないですか」
「言ったけど……だけど、まだ早いから。また後で来るよ」
「今すぐどうぞ。ヴィルイ様もお待ちです」
「だけど……」
「ヴィルイ様もお待ちです。使い魔ですでに連絡もしているので、中に入ってください」
「……」

 パティシニルは、引き下がりそうにない。そして案の定、クレッジも「やっぱり……俺も行きます……」と言い出してしまう。

 まずい。これでは計画が台無しになる。

「だけど、クレッジは約束がないだろ? 今日は、諦めたほうがいいよ」
「別にいいですよ」

 あっさり言ったのはパティシニル。

「別に約束なんかなくてもいいです。せっかく来たんだし、入ってください」

 あっさりと言われて、イウリュースは、頭を抱えたくなった。

(そんなに簡単に入れるなよ……警備はどうなっているんだ……)

 だが、ここで動揺しては、ますます怪しまれてしまいそうだ。
 イウリュースは、グッと堪えて、何とか笑顔を作った。

 パティシニルが門を開いて、二人を招き入れる。

「どうぞ。お二人とも、歓迎します」

 もう後には引けない。イウリュースは、覚悟を決めて、彼と共に屋敷に足を踏み入れた。

 クレッジに悟られてはいけない。彼のことはうまく誤魔化して、先に帰ってもらわなくては。







 二人が案内されたのは、美しく装飾された豪華なソファと、魔力で編まれたのであろう絨毯が敷かれた応接室だった。

 そこのソファに、二人で並んで座ると、パティシニルは、お茶を用意してきます、と言って出て行った。

 応接室にはイウリュースとクレッジの二人だけ。

 そしてイウリュースは、頭を抱えたい思いでいた。

(……何でこうなったんだ……)

 隣には、クレッジが座っている。彼も、どう切り出していいか分からないのか、目を合わせないようにしていた。

(……こんなところへ来るの、クレッジだって嫌だったはずだ……俺が、何とかする。俺は、クレッジにとって、優しい勇者なんだし…………クレッジには、これ以上絶対に手出しさせない……)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか

Bee
BL
半年前に別れた元恋人だった男の結婚式で、ユウジはそこではじめて二股をかけられていたことを知る。8年も一緒にいた相手に裏切られていたことを知り、ショックを受けたユウジは式場を飛び出してしまう。 無我夢中で車を走らせて、気がつくとユウジは見知らぬ場所にいることに気がつく。そこはまるで天国のようで、そばには7年前に死んだ友人の黒木が。黒木はユウジのことが好きだったと言い出して―― 最初は主人公が別れた男の結婚式に参加しているところから始まります。 死んだ友人との再会と、その友人の生まれ変わりと思われる青年との出会いへと話が続きます。 生まれ変わり(?)21歳大学生×きれいめな48歳おっさんの話です。 ※軽い性的表現あり 短編から長編に変更しています

息の合うゲーム友達とリア凸した結果プロポーズされました。

ふわりんしず。
BL
“じゃあ会ってみる?今度の日曜日” ゲーム内で1番気の合う相棒に突然誘われた。リアルで会ったことはなく、 ただゲーム中にボイスを付けて遊ぶ仲だった 一瞬の葛藤とほんの少しのワクワク。 結局俺が選んだのは、 “いいね!あそぼーよ”   もし人生の分岐点があるのなら、きっとこと時だったのかもしれないと 後から思うのだった。

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8) 和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。 この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか? 鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。 もうすぐ主人公が転校してくる。 僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。 これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。 片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!

冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。 「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」 前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて…… 演技チャラ男攻め×美人人間不信受け ※最終的にはハッピーエンドです ※何かしら地雷のある方にはお勧めしません ※ムーンライトノベルズにも投稿しています

この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!

ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。 ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。 これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。 ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!? ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19) 公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年の乙女ゲー転生BLです。

「これからも応援してます」と言おう思ったら誘拐された

あまさき
BL
国民的アイドル×リアコファン社会人 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 学生時代からずっと大好きな国民的アイドルのシャロンくん。デビューから一度たりともファンと直接交流してこなかった彼が、初めて握手会を開くことになったらしい。一名様限定の激レアチケットを手に入れてしまった僕は、感動の対面に胸を躍らせていると… 「あぁ、ずっと会いたかった俺の天使」 気付けば、僕の世界は180°変わってしまっていた。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 初めましてです。お手柔らかにお願いします。 ムーンライトノベルズさんにも掲載しております

姉の男友達に恋をした僕(番外編更新)

turarin
BL
侯爵家嫡男のポールは姉のユリアが大好き。身体が弱くて小さかったポールは、文武両道で、美しくて優しい一つ年上の姉に、ずっと憧れている。 徐々に体も丈夫になり、少しずつ自分に自信を持てるようになった頃、姉が同級生を家に連れて来た。公爵家の次男マークである。 彼も姉同様、何でも出来て、その上性格までいい、美しい男だ。 一目彼を見た時からポールは彼に惹かれた。初恋だった。 ただマークの傍にいたくて、勉強も頑張り、生徒会に入った。一緒にいる時間が増える。マークもまんざらでもない様子で、ポールを構い倒す。ポールは嬉しくてしかたない。 その様子を苛立たし気に見ているのがポールと同級の親友アンドルー。学力でも剣でも実力が拮抗する2人は一緒に行動することが多い。 そんなある日、転入して来た男爵令嬢にアンドルーがしつこくつきまとわれる。その姿がポールの心に激しい怒りを巻き起こす。自分の心に沸き上がる激しい気持に驚くポール。 時が経ち、マークは遂にユリアにプロポーズをする。ユリアの答えは? ポールが気になって仕方ないアンドルー。実は、ユリアにもポールにも両方に気持が向いているマーク。初恋のマークと、いつも傍にいてくれるアンドルー。ポールが本当に幸せになるにはどちらを選ぶ? 読んでくださった方ありがとうございます😊 ♥もすごく嬉しいです。 不定期ですが番外編更新していきます!

処理中です...