【本編完結】ネコの慰み者が恋に悩んで昼寝する話

迷路を跳ぶ狐

文字の大きさ
上 下
128 / 174
番外編10.ペロケと仲良くなる!

128.ペロケと協力する

しおりを挟む

 僕らが杖にぶち込まれたのは、薄暗い部屋だった。

 壁には燭台がかけてあるけど、なんだか不気味。周りには天井まで届きそうなほど背の高い本棚が並んでいて、変な形の道具が並ぶ棚もあった。

 なにこの部屋……暗くて怖い……

 僕が持っていた杖は、棚の一つに突っ込んでいて、そこに並べてあったものが床に落ちて割れたり、杖がぶつかった衝撃で壊れちゃったりしてる。杖も途中で折れてるし……ま、またいっぱい壊しちゃった……

「こんのっ……馬鹿猫……」

 ゆらりと、後ろでペロケが立ち上がる。

 う……こ、これはものすごーく怒っているときの声だ。こ、怖い……

 恐る恐る振り向く。

 うわああああああああ!! すごく怖い!! 咲いたばかりの薔薇をドジで水浸しにしたときと同じ顔をしている!!

 その時は「お前を水に沈めてやる」って言って、錨を振り回しながら追いかけてきたんだ。
 そのときと同じ顔をしている……!!

「あ、あのー……ぺ、ペロケ……さん……あの……いろいろごめんなさい……」
「殺す……」
「お、おおお、落ち着いてっ……わああああ!!」

 襲ってくるペロケから逃げ出す僕。だけど、相手には羽があるんだ! ペロケは後ろから僕に飛びかかってきた。

「捕まえたぞ! クソ猫!!」
「く、クソ猫じゃないもん! 狐妖狼だもん!!」
「黙れっ!! 今日と言う今日こそは許さない……皮剥いで肥料にしてやるっっ!!」

 わあああん!! 怖いいいっ!

 だけどそこへ、救いの光が入ってくる。閉まっていた扉が開いて、誰かが入ってきたんだ。助かった!!

「たっ……むぐっ!!」

 助けを求めて叫ぼうとしたけど、後ろからペロケに口を手で塞がれちゃう。

 うーー!! 逃げなきゃ何をされるかわからないよ!!

 必死に暴れて拘束から逃れようとする僕に、なぜかペロケは耳打ちしてきた。

「馬鹿!! 見て!! あれ見て!!」

 あれってなに!? 誰かが僕を助けにきてくれたんじゃないの!?

 だけどペロケが指した先、部屋の扉のあたりには、助けになんか来てくれるはずのない人が立っていた。

 せ、セリュウウウウウウウウウーーーーーー!!!!!

 なんでここにいるの!!??

 どうしよう……ここにあるもの、僕が壊しちゃったって知れたら……こ、殺される……

 ガタガタ震え出す僕に、ペロケは小さな声で言った。

「分かっただろ。こんなことが知られたら、僕ら殺されるんだ!!」
「え……ぺ、ペロケさんも?」
「僕は前にオーフィザン様を裏切ったことがあるから、セリュー様の僕に対する目はものすごーく厳しいの!! ここの物壊したって知れたら……焼き鳥にされちゃうかも……」
「ど、どうしよう…………」
「……何とかしてここから逃げないと……とにかく、僕だけ助かるために、お前が囮になってセリュー様に飛び掛かれ」
「ええ!? な、なにそれ!! やだよ! そんなの!」
「そもそもお前のドジが原因だろ!! 責任とってお前だけ死んで僕を助けろ!!」
「絶対、嫌だーー!! 僕を囮にしたら、セリューにペロケのこと言うもんっ!!」
「しっ!」

 ペロケが僕の口を手で覆う。彼が顎でさす方を見れば、セリューがこっちに振り返っていた。

 こわああああああ!!

 慌てて自分の両手で口を押さえる。見つかったら殺される……

 もう死んだ気になって息を潜める。

 は、早く向こうを向いて!! ここには何もいませんっ!!

 祈りまくりながら、何事もなくセリューがどっか行ってくれることだけを願う。

 ち、近づいてくる……も、もうダメっ……怖すぎて……息が苦しいよ……

 死ぬ気になっていないフリをしていたら、セリューは僕らが隠れている本棚の横をすり抜け、別の本棚から本を引き出し始めた。た、助かった……

「まずい……」
「え? 何がまずいの?」
「あれだよ。馬鹿猫」

 馬鹿猫は余計……

 ペロケが指差す方には、僕らと一緒に部屋に飛び込んできたお布団。ちょうど本棚の影になって見えないみたいだけど、あんなところにあったらすぐに見つかっちゃうかも!!

「ど、どうしよう……ペロケ!!」
「……馴れ馴れしく呼ぶな!! 敬語使え! 僕の方が先輩なんだから!」
「だ、だって面倒だもん……それより、どうするのー!?」
「あれ持って部屋から逃げるしかないでしょ!! すっっごくむかつくけど、あれ、オーフィザン様がお前のためにわざわざ猫柄にしてくれた布団だろ。この城に一つしかないんだ!!」
「う、うん……あ、ありがとう……僕のお布団、運んでくれるんだ!!」
「違う馬鹿!! あれと一緒に城の廊下を飛んでいるところ、城中のみんなが見てるんだ!! あれをここに放り出して行ったら、僕らがここに入ったのがバレちゃうだろ!!」
「あ……そ、そうか……」
「杖も壊れちゃったし、一人で引きずって運んでいたらすぐに見つかる……二人で運ぶしかない……行くよ!!」
「う、うん!!」

 僕らは二人でセリューがこっちに気づかないようにこっそり走って、なんとかお布団までたどり着いた!!

「じゃあ、そっち持って! クラジュ!!」
「う、うん!!」

 ペロケに言われた通り、僕はお布団の後ろを持つ。ペロケが前を持って、僕らはゆっくりこっそり棚の影に隠れながら歩き出した。

 セリューはずっと、手元のメモを読みながら、棚にある本や、変な形の道具なんかを集めている。セリューのことだから、多分、というか絶対にオーフィザン様から頼まれてしてるんだろうけど、何してるんだろう……薬みたいなのとか、変わった形の棒とか、な、なにあれ!? 手錠や鎖まで集めてる!!

 ついそっちに気を取られちゃう。わわっ!! 足元見てなかったから転びそう!!

 前を歩くペロケが小さな声で怒鳴る。

「馬鹿っ!! ちゃんと前見て!! 馬鹿!!」

 うううー! ひどい! なんでいつも馬鹿っていうの!??

 涙目になりながら布団を持ち直す。

 ペロケは前を歩き出すけど、すぐに振り向いた。

「お前が後ろだと、僕が見てないうちに後ろでドジするかもしれない……お前、前歩いて!!」
「う、うん……」

 言われて、僕はペロケと場所を入れ替わった。

「行くよ。クラジュ……ドジするなよ……」
「うん……」

 今度は僕が前を歩く。き、気をつけなきゃ……

 セリューはまだ、メモに書いてあるものを集めるのに夢中。気をつけて布団を運べば逃げられる!!

「クラジュ、足元に気をつけてね……」
「うん……」
「前見て! ぶつかる!」
「は、はい!!」
「声小さく! 死にたいの!?」
「はい……」

 ううー……ペロケ、怖い。

 だけど言われたとおりにものすごく気をつけて歩いていたら、これだけ暗くて物がいっぱいある部屋を僕が歩いているのに、物が壊れない!! ペロケ、すごいなぁ……

「ね、ねえ! ぺ、ペロケ!! こうやって協力するの、初めてだね!!」
「……余計なこと言わなくていいの。協力したくてしてるんじゃないんだから!!」

 小声で言うペロケだけど、今回はあんまり怒ってないみたい!! 何だか嬉しい!!

 こっそりこっそり歩いて、僕らは扉の前まで来た。

 やったあああああ!!! これでもう大丈夫!!!

 だけど、そこで問題発生。地下の部屋は広かったんだけど、扉は狭い。大きなお布団を外へ出すのは一苦労。

 僕はあっさり扉を通れたけど、小さな扉にお布団が引っかかっちゃってなかなか出せない!! もう! 力尽くでひっぱっちゃえ!

 だけどペロケは怒り出しちゃう。

「ち、ちょっと馬鹿猫!! 引っ張ったらダメ!! 普通に落ち着いてやれば上手くいくんだから……!!」

 ペロケは怒るけど、一刻も早くお布団を持ってここから逃げなきゃ!!

 さらに思いっきり布団を引っ張ると、扉に引っかかっていた布団が抜けた!! やった!

 だけど、お布団は真ん中あたりでピリッと破れて、僕は尻餅をついちゃう。

「いたた……僕のお布団が……」

 せっかくオーフィザン様からいただいたのに、何でこうなるの??

 しょんぼりする僕の横をすり抜け、ペロケは一目散に階段を駆け上る。

「ぺ、ペロケ?」

 え? え? 何で走るの!?

 部屋の奥からバタバタと足音がした。後ろに振り向けば、ものすごい形相のセリューが、僕に向かって走ってくる。

 ぎゃあああああ!!!! ばれたああああ!!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】相談する相手を、間違えました

ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。 自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・ *** 執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。 ただ、それだけです。 *** 他サイトにも、掲載しています。 てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。 *** エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。 ありがとうございました。 *** 閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。 ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*) *** 2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

騎士様、お菓子でなんとか勘弁してください

東院さち
BL
ラズは城で仕える下級使用人の一人だ。竜を追い払った騎士団がもどってきた祝賀会のために少ない魔力を駆使して仕事をしていた。 突然襲ってきた魔力枯渇による具合の悪いところをその英雄の一人が助けてくれた。魔力を分け与えるためにキスされて、お礼にラズの作ったクッキーを欲しがる変わり者の団長と、やはりお菓子に目のない副団長の二人はラズのお菓子を目的に騎士団に勧誘する。 貴族を嫌うラズだったが、恩人二人にせっせとお菓子を作るはめになった。 お菓子が目的だったと思っていたけれど、それだけではないらしい。 やがて二人はラズにとってかけがえのない人になっていく。のかもしれない。

禁断の祈祷室

土岐ゆうば(金湯叶)
BL
リュアオス神を祀る神殿の神官長であるアメデアには専用の祈祷室があった。 アメデア以外は誰も入ることが許されない部屋には、神の像と燭台そして聖典があるだけ。窓もなにもなく、出入口は木の扉一つ。扉の前には護衛が待機しており、アメデア以外は誰もいない。 それなのに祈祷が終わると、アメデアの体には情交の痕がある。アメデアの聖痕は濃く輝き、その強力な神聖力によって人々を助ける。 救済のために神は神官を抱くのか。 それとも愛したがゆえに彼を抱くのか。 神×神官の許された神秘的な夜の話。 ※小説家になろう(ムーンライトノベルズ)でも掲載しています。

釣った魚、逃した魚

円玉
BL
瘴気や魔獣の発生に対応するため定期的に行われる召喚の儀で、浄化と治癒の力を持つ神子として召喚された三倉貴史。 王の寵愛を受け後宮に迎え入れられたかに見えたが、後宮入りした後は「釣った魚」状態。 王には放置され、妃達には嫌がらせを受け、使用人達にも蔑ろにされる中、何とか穏便に後宮を去ろうとするが放置していながら縛り付けようとする王。 護衛騎士マクミランと共に逃亡計画を練る。 騎士×神子  攻目線 一見、神子が腹黒そうにみえるかもだけど、実際には全く悪くないです。 どうしても文字数が多くなってしまう癖が有るので『一話2500文字以下!』を目標にした練習作として書いてきたもの。 ムーンライト様でもアップしています。

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

処理中です...