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番外編10.ペロケと仲良くなる!

127.ペロケが怖い

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 オーフィザン様との新婚旅行も終わっちゃって、僕はお城に戻ってきた。ずーっとオーフィザン様と一緒にいたいけど、オーフィザン様は今日もお仕事で忙しい。

 だから僕は、ポカポカあったかーいお昼に、ふかふかお布団でお昼寝。

 ああ……気持ちいいー……こうしてお布団の上でうとうとするの大好き。

 お城の中でも一番日当たりがいいこのお部屋を、オーフィザン様は僕のお昼寝専用部屋にしてくれた。
 友達のキュウテや、同じ狐妖狼のフィッイルが来ても、三人で眠れるくらい広いベッドに、ふわあって包み込んでくれるようなお布団。これは、オーフィザン様が僕のために魔法で作り上げてくれた猫柄のお布団で、僕の一番のお気に入り。これの上で丸くなって、日向ぼっこするとすっごく気持ちいい。

 そばには大好きなクッキーが入った袋があって、さっきお腹いっぱい食べたから、ますます眠い。

 ああああー……ポカポカあったかい……気持ちいい……眠い……夜まで寝るー…………

「えーいっ!!!!」

 いきなり掛け声がして、お布団がふわって浮き上がる。

 えええっ!!?? なに!??

 突然お布団が浮き上がったせいで、僕はポーンって放り出されちゃう。

 床に落っこちちゃう前に、なんとか着地はできたけど、なんでお布団がいきなり浮き上がるの!?

 そんなことをした犯人は、天井近くから、ものすごーくいじわるそうな顔で僕を見下ろしていた。

「あれー? いたのー? クラジュー。死んでー」

 うわあ……出た。ペロケだ。僕のことが大嫌いな精霊のペロケは、こういうすごくひどいことを普通に言う。

 お布団を宙に浮かせて取り上げたのも、ペロケだ!!

 でも、どうやってお布団を浮かせているの? ペロケにお布団を浮かせる力があるなんて、聞いたことない。

 見上げると、彼はいつもは持っていない、短い杖を持っていた。

「ペロケ……さん……それ……」
「いいだろー。オーフィザン様がくれたんだー! 布団を干しやすいように!!」
「な、なんでペロケさんがお布団干してるんですか……? 庭師なのに……」
「洗濯係の一人が今お休みとってるの。だから、代わりに僕が、城の布団係!! 今日からクラジュは布団の上のお昼寝禁止!!」
「えええーー!! な、なんでですか!?」
「布団が無駄に汚れるからに決まってるだろ! 見てよ!! お前の尻尾の毛がついてる!! ああー! クッキーのかけらまで!! 布団の上でクッキー食べたでしょ!!」
「だって……寝ながら食べると美味しいから……」
「そんなの、言い訳になると思ってるの? このグズ猫!! お昼寝は禁止!! さっさと起きて掃除でもしろ!!」

 うううーー!! なんでペロケはいつもこんなにいじわるなの!?? 酷すぎる!! 僕の大好きなお布団とっちゃうし! 絶対取り返す!!

 僕は浮いているお布団目掛けて、思いっきりジャンプした。だけど届かないー!!

「お布団返してくださーーいっ!!」
「やーだよー。とれるもんならとってみろー!!」

 ぴょんぴょん跳ねてみても、飛んでいるペロケにも、浮いているお布団にも届かない。うううー! 負けるか!!

 勢いをつけて、お布団に向かって飛び跳ねる。

 やった!! 届いた!!

 浮いているお布団に爪を立てて飛びつくと、お布団は床に落ちる。

「や、やったー!! お布団とった!!」
「こっの……! 馬鹿猫!!」

 あっ!! ペロケ、また杖を振る気だ!! もうお布団取られたくないっ!!

 僕はペロケが持っている杖に飛びついた。

「えっ……ちょっ……!!」

 やった!! 杖、取り上げた!!

 奪ったそれを握って、床に立つ。だけど、杖を取り返そうと、ペロケが飛んでくる。

「こんのっ……クソ猫っ!!!!」
「わあっっっ!!!」

 わわわわわわ!! ペロケ、すっごく怒ってる!!

 怖くて、僕は無我夢中で杖を振った。

 すると、さっきのお布団みたいにペロケの体がふわんって浮く。

「え!? ち、ちょっとなにこれ!! クラジュ!!

 うわあ、ペロケが空中であたふたしてるの、初めて見た。さっきみたいに自分で飛んでいるときとは違う。制御が効かないようで、空中でクルンクルン回ってる。

 な、なんかよく分かんないけど、初めてペロケにやり返した!!

「クソ猫ー!! なんとかしなよー!!」
「だ、だって……お、お布団を取ろうとするからっ……ペロケさんが悪いもんっ!! あ、あれ??」

 な、なに?? 僕の体までふわんって浮いたよ?? なんで浮くの??

「わ、わ、な、なんで……?? あ、これ!?」

 そうか!! 杖が僕を浮かせているんだ!!

 さっきみたいにこれを振れば床に戻れるはずー!!

「えーい!!!!」

 思いっきり杖を振る。だけど僕の体は浮いたまま。なんで??

 あれれれれ!? いくら杖を振ってもずっと浮いたままだ!!

「うわあああん!! 床に戻れなくなったああああ!! ペロケさああんっ!! これどうやっておろすんですかあーっっ!?」
「馬鹿猫ー!! やり方わかんないくせに持っていくからだろー!! いいからこっちに返せー!!」
「い、いやです!! これ返したらまたお布団取るくせに!!」
「お前、お布団と今の状況打破とどっちが大事なの!?」
「どっちもです!! お布団取り返してお昼寝するもん!!」
「こんのっ、クズ猫!! いいから杖を……振るなーー!!」

 振るもん!! ペロケだけどっかに飛ばして僕はお布団取り返すんだもん!!

 ぶんって振った杖から光が溢れる。そして僕らを包んで、ペロケを部屋から吹き飛ばす。

「わーー!!」

 やった!! 今度こそ、僕の勝ちだ!!

 あ、あれ??

 僕の体まで飛んでくよ!? わわわわわ! 部屋から投げ出されちゃった!!!

「わ、わーーっっっっ!!」

 なんでこうなるの!? ペロケも僕も、浮いたまま廊下を猛スピードで飛んでいく。

「わーー!! な、なにこれーー!!」
「馬鹿猫ー!! 杖返せって!!」
「い、嫌……わあああ!!」

 二人して廊下を吹っ飛んでいく僕らを、廊下を歩いていた人たちがびっくりして避けていく。
 たまに「あぶねーだろ!」とか「気を付けろ!」って怒鳴られるけど、勝手に飛んでいくんだから気をつけようがないようっ!!

 あ、あれ、廊下を歩いてるの、シーニュだ!!

「シーニューー!! 止めてー!」
「わっ……な、なんだ!? え!? クラジュ!? ペロケ!? おいこら! クラジュ!! 廊下は飛ぶなっ!!」

 それどころじゃないもん!! 飛ばないでいられるなら僕だってそうしたいよ!!

 あっという間に、シーニュの姿も見えなくなっちゃう。

 僕らはそのまま廊下を右へ左へ曲がりながらビュンビュン飛んでいって、あいていたドアをいくつもくぐり、地下への階段を飛んでいく。

 わああああん!! お城の地下は暗くて怖いから嫌なのに!

 ますますスピードを上げて下に向かう階段を飛んで、その先にあった部屋にぶちこまれてしまった。

 バタン、と音を立てて、入ってきた扉が閉まる。

 い、いたたた……ひ、ひどい目にあった……
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