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番外編6.執事になる!
107.大変なことになっちゃった
しおりを挟むいっぱい叫ぶけど、やっぱりオーフィザン様にもダンドにも聞こえないみたい。ダンドはオーフィザン様に何枚か書類を渡している。
「オーフィザン様、こちらを……最近、屋敷の周辺に出ている魔物のリストです」
「……ずいぶん多いな……」
魔物……オーフィザン様がいれば大丈夫だと思うけど、怖い……
オーフィザン様のお城は、最近警備を強化していて、すごく強力な結界をオーフィザン様が張ってくださっている。だからすごく安全。
あそこから出るのは久しぶり……やっぱりこんな暗いカゴの中にいるなんて怖いし嫌だ!! オーフィザン様に抱っこしてもらいたい! 叫んで聞こえないなら、カゴをいっぱい揺らしてみる!!
僕がカゴを揺らそうとしたら、前からセリューの声がした。
「オーフィザン様。もうすぐ妖精の屋敷です。周りに気をつけてください」
気をつけるって……なんでかな? まさか、何か起こるの? は、早く気づいてもらわなきゃ!
もう一回、カゴをゆらそうとしたら、フワって、カゴが浮いた。オーフィザン様がカゴを持ち上げたんだ!
「なんだ? これは。ダンド、お前の荷物か?」
「え? 俺は知らないです。オーフィザン様の荷物じゃないんですか?」
「俺は知らんぞ……?」
これでオーフィザン様に見つけてもらえる!!
僕は目一杯体を動かして、カゴを動かした。だけど、勢いが良すぎて、予想よりグラって大きく揺れた。ついでに馬車まで激しく揺れる。わわわ! なんで揺れるの!?
オーフィザン様が、馬を操るセリューに叫ぶ。
「セリュー!! 何事だ!?」
「魔物です!! 周りに……つかまってくださいっ!!」
えええ!? 魔物、でたの!?
ごうって、馬車が揺れるくらい強い風が吹く。僕のカゴは風に飛ばされ、外に投げ出されちゃった。
うわあああ!! 落ちてるよこれ!! カゴがぐるぐる回ってる!
中にいる僕まで、くるくる回って目が回る。その上、地面に思いっきりたたきつけられちゃった。地面に落ちたら止まればいいのに、カゴのぐるぐるが止まらない! きっと転げ落ちてるんだ!!
クルンクルン回っていたカゴは、いきなりふわって浮いて、やっと止まった。な、なんでカゴが浮くの? もしかして、オーフィザン様の魔法かな?
フラフラしながら、カゴの隙間から外を覗く。カゴを抱えていたのは、オーフィザン様じゃない。長い真っ黒な毛で全身を覆われた竜みたいなものだ。この竜、首がない。腕なんか五つあるし、足だって五つ。もしかしてこれが魔物!?
そいつの周りには、似たような形をした小さな魔物たちがいて、そいつらが群れをなして山の斜面を駆け下りていく。どうしよう! 魔物に捕まっちゃった!
「待てっっ!!」
走る魔物に向かって、オーフィザン様が伸ばした手から、魔法の風が飛んでくる。それに肩のあたりを切り裂かれて、魔物は僕のカゴを落とした。
いたた……体、カゴにぶつけちゃった……
カゴのそばでは、ぼたぼた血を流す魔物がオーフィザン様を睨んでいる。
「セリュー! ダンド!! カゴを取れ!!」
叫んだオーフィザン様が、魔物たちを引きつけている間に、二人がカゴに向かって走ってくる。二人とも、向かってくる小さな魔物を短剣で切り裂いていた。
二人ともすごい!! ぼ、僕も自分でなんとか逃げ出せないかな!!
必死にカゴを引っ掻いてみるけど、全然開かない! だって今の僕の手、もふもふぬいぐるみなんだもん!! うううー! 何が何でも開けてやる!
暴れていたら、またカゴが回り出しちゃう。え? え? なんで?
うわわわわ! カゴが坂を転げ落ちてる!! すごいスピードでぐるぐるしちゃって、前も後ろも分からなくなりそう。
突然、カゴがふわって浮いた。また誰かがカゴを捕まえたみたい。まさか、また魔物?
遠くからダンドの声が聞こえる。
「セリュー!! 捕まえた!?」
え? セリュー? じゃあ、僕のカゴを捕まえてくれたの、セリューなの?
カゴの隙間から外を見ると、確かに僕のカゴを抱きしめているのはセリューだ。だけど、うずくまっていて、息が荒いよ。え……ひ、ひたいから血まで流してる!
動けない様子のセリューに、ダンドが駆け寄ってくる。
「セリュー!! 大丈夫!?」
カゴの隙間から見上げたセリューの顔は真っ青。きっとひどい怪我なんだ!
それでもダンドに心配させないためか、セリューは笑顔を作ってふらふら立ち上がる。
「ああ……ダンド!! 後ろだっ!」
ダンドの後ろから、小さな魔物が飛びかかってくる。だけどそいつは、ダンドに飛びかかる前に、オーフィザン様の魔法でバラバラになった。
「セリュー!!」
オーフィザン様も駆け寄ってくる。すぐに傷を治そうと、セリューの手を取ろうとするけど、セリューはふらつきながらも後ろに下がって、オーフィザン様から逃げてしまう。
「こ、この程度……」
セリューは相変わらず、こういう時には逃げちゃうみたい。だけど、相手はオーフィザン様だ。当然あっさり捕まって、怪我をしたひたいにキスされちゃってる。みるみるセリューの傷は消えていった。
「あ、ありがとう……ございます……オーフィザン様……」
「よくやった。セリュー」
オーフィザン様は、セリューの肩を叩いて、乱暴にカゴのふたを開ける。
オーフィザン様とダンド、セリューが一斉にカゴの中身、僕を見下ろしていた。
ううう……み、見られている……今はぬいぐるみのふりをしちゃいたい。逃げたいけど、逃げられるところなんかない。
「これ……クラジュのぬいぐるみ?」
ダンドにつまみ上げられて、もう怖くて、僕は頭を抱えて丸くなった。このままぬいぐるみのふりをしちゃおうかな……
今更動かないぬいぐるみのふりを始めたけど、オーフィザン様につまみ上げられてしまう。
「何をしている……」
オーフィザン様が僕の頭に触れたら、僕の体は一瞬で元に戻った。三人に囲まれて、もう死にたい……
「ご、ごめんなさい……」
「何をしていたんだ?」
低い声でオーフィザン様に聞かれて、怖くてガタガタ震えちゃう。ちゃんと説明しなきゃ……
「えと……えと……僕、オーフィザン様のお役に立ちたくて……」
「誰がお前に魔法をかけた?」
「え? えと……」
「お前だけでこんなことができるはずがない。フィッイルか?」
「あ、そ、それは……その、えと……そ、そうなんですけど、ぼ、僕がその……オーフィザン様の役に立ちたいって言って……それで、その……フィッイルは気を使ってくれて、それだから、えと……だから、フィッイルは悪くないんです……」
恐々言うと、オーフィザン様は、深いため息をつく。
「全く……仕方ない。お前だけは城に連れて帰る」
「え……ええっ!? でも、僕……」
僕が言い訳しかけたところで、オーフィザン様の隣に立っていたセリューが、オーフィザン様に寄りかかった。
どうしたんだろう? 普段のセリューならこんなことするはずないのに。
オーフィザン様も不思議そうにセリューにたずねる。
「セリュー? どうした?」
「う……」
いつもならすぐにオーフィザン様に返事をするセリューなのに、今は苦しげに息をしているだけ。顔は汗でびっしょりだ。
オーフィザン様が、その汗を拭う。
「魔物の毒にやられたか……ダンド、このまま屋敷へ向かう! 急げ!!」
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