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番外編3.ずっとここにいたい
80.わがままな猫
しおりを挟む甘いジュースをもらえた代わりに、オーフィザン様の唇は離れていっちゃう。まだ足りないよ……
「……オーフィザン様……もう一回……じ、ジュース……欲しいです……」
「わがままな猫だ……」
だって、こうやってねだると、いっぱいキスしてもらえるんだもん。
オーフィザン様は微笑んで、また甘い味がするキスをくれる。嬉しくて、頭の耳もパタパタしちゃう。オーフィザン様は唇を離すと、優しく僕の頭を撫でてくれた。
「尻尾も綺麗にしないとな……」
「……え……え……でも、その前に服を着たいです……」
「尻尾が先だ」
「うううー……裸のままですか……?」
「尻尾を綺麗にしたら服をやる」
「……はい……」
尻尾はバスタオルをどけないと、根元までブラッシングできないのに……だけど、オーフィザン様が言うなら……
恥ずかしいのを我慢しながら、僕はバスタオルを離して、くるんと自分の体を包むように尻尾を丸めた。こうすると、尻尾の先がちょうど僕の鼻先に来る。
オーフィザン様は、僕の尻尾に尻尾専用のふさふさしたブラシを当ててくれた。
ブラシは三種類あって、耳用、髪用、尻尾用と、とかすところによって違う。僕はこの尻尾用ブラシがいちばんのお気に入り。
だけど、裸だと恥ずかしくて、ブラッシングの気持ち良さを感じられない。服……ほしいよぉ……
「オーフィザン様あ……服、ください……」
「まだだ」
「うううー……」
恥ずかしくて体もちょっと震えちゃう。尻尾をとかす時は、ブラシがお尻の近くに来るんだもん。
「ひゃっ!!」
尻尾の付け根をブラシでとかれて、つい、声が出ちゃう。昨日、オーフィザン様のをいっぱい咥えさせられたところが、ピクンと反応しちゃってる。
震える僕に、オーフィザン様はますます意地悪なことを言う。
「そんな声を出すと、もう一度突っ込むぞ」
「う、ううー…………」
頑張って耐えないと、また抱かれちゃう。オーフィザン様にされるのは嫌じゃないけど、昨日一晩中抱かれてたから、もう一回する体力なんか残ってない。
おとなしくブラッシングが終わるのを待つと、オーフィザン様は僕の尻尾の付け根にリボンを結ぶ。おわりの合図だ。尻尾や頭につけるリボンもいっぱいあって、毎日オーフィザン様が結んでくれる。今日は黒のレースのリボン。リボンはちょっと苦手。引っ張ったら簡単に破れちゃうから。
「今日はこれを着ろ」
「はい!」
やったあ。服だ。
僕は急いで着替えた。今日はちょっとエッチなメイド服。オーフィザン様は僕にいっぱい服をくれる。ちょっと肌の露出が多かったりして恥ずかしいけど、オーフィザン様が喜んでくれるし、僕は最近、昼間はずっと寝ているから、服なんてどれでもいい。
「オーフィザン様、どうですか……?」
「……似合っているぞ……」
「ありがとうございます……あ! クッキー、食べたいです!!」
「腹が減ったのか? それなら朝食を運ばせる」
「……朝食よりクッキーがいいです……」
「あまりおやつばかり食うな」
そんなこと言いながらも、オーフィザン様はカゴの中から、僕のお気に入りのクッキーをつまんで渡してくれる。
これはダンドがいつも僕のために作ってくれる、僕の大好物。甘すぎなくてミルクいっぱいの味が大好き。
ダンドはオーフィザン様にこれを渡す時、「あげすぎると体に悪いし、またクラジュが朝食食べなくなるから、少しだけにしてくださいね」って言うんだけど、オーフィザン様は、僕がねだると大体いつもすぐくれる。
朝のオーフィザン様は僕にすっごく甘い。今だって、クッキーを頬張る僕を優しく撫でてくれてる。
「うまいか?」
「はい! すごく……もっといっぱい欲しいです!!」
「あまり食わせると俺がダンドに叱られるだろう」
「……ううう……」
「……仕方ないな……ダンドには内緒だぞ」
やったあ。またもらえた。クッキー、美味しい……幸せ……
ずーっとこうしていたいのに、意地悪な太陽がオーフィザン様に時間を教えちゃう。僕の頭を撫でてくれていたオーフィザン様は、窓の外を見て、僕を膝から下ろした。
「もう行かないとな……」
ええ……もう行っちゃうんだ……
オーフィザン様は、ベッドから降りて着替え始めてしまった。
夜はずっとオーフィザン様と一緒にいることができて、すごく嬉しいのに、夜が明けると、オーフィザン様はお仕事で忙しくなっちゃう。
最近は特に忙しいらしく、しょっちゅうお客さんが来たり、オーフィザン様の方が出向いたりしていて、お城にいないことも多い。
そうでないときは、魔法の道具を作るために、地下の部屋にこもって出てきてくれない。
だから、昼間はほとんど会ってもらえない。また夜までオーフィザン様に会えなくなると思うと、すごくさみしい……
頭の耳を垂れてシュンとしていると、着替え終わったオーフィザン様が、僕の頭を撫でてくれた。
「……そんな顔をするな。夜になったら、食事をしよう」
「……はい……」
「おやつばかり食うなよ」
「……はい………」
「部屋を荒らすなよ」
「う……はい……」
「部屋の物を壊すなよ」
「はい……」
「部屋から出るときはこれを着ろ」
「わっ!」
いきなり頭に布をかけられた。それは、柔らかい生地のワンピースだった。
「そのままの格好で外を歩くんじゃないぞ」
「……はい……」
僕が服を受け取ると、オーフィザン様は、僕のお気に入りの毛布をベッドの上に敷いてくれる。あれは、僕がこのお城にきた時から使っている毛布で、あれにくるまっていると落ち着くって言ったら、毎日ベッドの上にそれを敷いくれるようになった。
オーフィザン様は、毛布の上に僕を寝かせてから、上からふわふわの毛布をかけてくれる。
「いい子にしていろよ」
「はい……」
うう……やっぱりさみしいなあ……
僕は昼の間は寝所でお留守番だ。大好きなオーフィザン様に会えないのはすごくさみしいけど、お仕事の邪魔はダメだ。
「今日は外の風が気持ちいいぞ」
オーフィザン様が窓を開けると、ふわっと涼しい風が入ってきた。
「窓には近づくなよ。落ちたら危ないからな」
「……はい。でも、窓には魔法がかかっているし、僕、平気です」
窓には、僕がそこから落ちないようにする魔法がかかってる。
部屋にかけられた魔法は、それだけじゃない。以前は僕が一人でこの部屋にいると、いろいろ壊したりして、大変なことになっていたけど、オーフィザン様は部屋の中のものに魔法をかけて、僕が一人でここにいても、危なくないようにしてくれた。
クローゼットだって、僕が触っても開かないし、棚も開かないし、テーブルや棚に置いてある香炉や燭台も、僕が触っても落ちたりしない。
この部屋は僕の安全地帯。今では、この部屋にいる時が一番安心する。
だけど、オーフィザン様はそれでも心配そうに、僕の頭を撫でている。
「魔法はかかっているが、万が一落ちたら大変だろう」
「ちゃんといい子にしてます……行ってらっしゃいませ……」
「ああ」
我慢しているけど、やっぱりさみしい……僕はシュンとしたまま、オーフィザン様を見送った。
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