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41.僕が看病したい
しおりを挟むその日は、群れのみんなと兄ちゃんと一緒に寝て、朝になったら、兄ちゃんたちは王様と一緒に、お城へ行ってしまった。みんなを見送るのは寂しかったけど、シーニュが慰めてくれた。
群れのみんながいなくなって、城では、いつもと同じ日が始まった。
シーニュは朝から城の雑用で忙しい。ダンドはいつもどおり厨房にいて、寝坊して朝ごはんを食べられなかった僕に、裏口からサンドイッチを渡してくれた。それを庭で食べようとして、お皿を持って廊下を歩いていたら、セリューに怖い目で睨まれて、急いで逃げた。
庭に座ってサンドイッチを食べながら空を見上げると、高いところにある城の一室が目にとまった。
あそこ……オーフィザン様の部屋だ。オーフィザン様、何してるのかな……? 兄ちゃんに、僕を引き取るって言われたら、オーフィザン様、なんて答えるんだろう。僕、いっぱい迷惑かけたから、やっぱり僕がいなくなること、喜ぶのかな?
そしたら僕は、この城を出て行かなきゃならない。オーフィザン様ともお別れになっちゃう。シーニュやダンドとも……
そんなの嫌だ。兄ちゃんたちとも一緒にいたいけど、みんなとも一緒にいたい。オーフィザン様はどうするつもりなんだろう。気になる……聞きに行ってもいいのかな?
そうだ! ダンドに相談しよう! お皿も返しに行かなきゃならないんだから、厨房に行って、ダンドにオーフィザン様のこと、聞いてみよう!!
サンドイッチを全部急いで食べて、僕は厨房へ走った。
朝食の時間が終わり、後片付けも終わった厨房には、まばらに人がいて、みんな思い思いの方法で休憩している。ダンドも、裏口から出たところに腰掛けて、コーヒーを飲んでいるところだった。
「ダンド!!」
「クラジュ? え? も、もう食べたの?」
「うん! ねえ! 相談したいことがあるんだ!!」
「相談? なに?」
僕は、さっきまで悩んでいたことを全部話した。
「それはオーフィザン様じゃないと分からないなー」
「そ、そうか……じ、じゃあ、今からオーフィザン様のところに行って聞いたら、答えてくれるかな……?」
「やめたほうがいいよ。オーフィザン様、クラジュを助けに行くことで、だいぶ魔力を使っちゃったんだ。だから今は、ずっとベッドで寝てるんじゃないかな」
「え……お、オーフィザン様、体調悪いの?」
「疲れたんだよ。クラジュがいなくなった時、最初はこのあたりの森を魔法で探したんだけど、見つからなくて、国全体の森を全部探してくれたんだ。おかげでクラジュの仲間たちも見つけられたんだけど、俺とセリューをクラジュのところへ送って、それから、クラジュの仲間を全部助けて、自分も来たりするから……」
「……そんな……」
オーフィザン様がそんなに色々してくれてたなんて、知らなかった。だからセリューは、あんなにオーフィザン様に魔力を使うなって言ってたんだ。
「じ、じゃあ、僕、オーフィザン様に奉仕したい! か、看病だけでも……」
「うーん……俺やセリューも、普段の仕事があるし、看病してくれる人がいたら、ありがたいんだけど……うーん……」
「……僕だと、だめ?」
「だめじゃないけど……クラジュがそばにいると……」
「ぼ、僕、今度は絶対何も壊さないよ! オーフィザン様のお役に立ちたいんだ!!」
「クラジュの気持ちはわかるけど、やっぱりやめたほうがいい。それに、オーフィザン様の部屋の前では、今頃セリューが門番してるはずだよ」
「も、門番?」
「オーフィザン様が元気になるまで、オーフィザン様の部屋には誰も通さないって、廊下に机置いて仕事してる。クラジュが近寄ろうとしても、追い払われちゃうよ」
「う、うう……こ、怖くない!! セリューくらい、突破できるもん! 狐妖狼の力、戻ったんだから!」
「うーん……仕方ないな……分かったよ。はい、これ」
ダンドは、小さな包みを僕に渡してくれた。
「それ、オーフィザン様が好きなクッキー。渡してあげて」
「ありがとう! ダンド!!」
ダンドにもらったクッキーを持って、オーフィザン様の部屋の前まで来た僕だけど、本当に廊下に机を置いて仕事をしているセリューを見て、怖気付いてしまう。
怖いなあ……だ、だけど、今度こそ、オーフィザン様に喜んでいただきたい。オーフィザン様は、捕まった僕を助けるために、いっぱい魔力を使っちゃって寝込んでるんだ。僕が看病したい!!
看病したいだけで、迷惑かけたりしないって言えば、案外セリューだって通してくれるかもしれない! だって嫌々でも僕を助けに来てくれたんだから!
ゆっくり深呼吸をする。
怖い気持ちをなんとか抑えて、僕は、隠れていた柱から出た。
セリューにゆっくり近づいて行く。
セリューも、すぐに僕に気付いて立ち上がる。
怖いけど、なんとか笑顔を作って、僕はセリューに話しかけた。
「せ、セリュー様、あ、あ、あ、あの、僕、オーフィザン様の看病に」
「オーフィザン様は誰にも会いません。立ち去りなさい」
「……」
取りつく島もない……しかも怖い。僕を助けてくれた時と、なんだか雰囲気が違う……
あの森で僕を助けてくれた時には、僕を助け起こしてくれたり、ダンドを心配したり、優しいところもあったのに、今は冷たさしか感じない……
ううう……こ、ここで引き下がったらダメだ!!
「あ、あ、あの……でも……あの、か、看病だけなので、迷惑はかけません!」
「……お前の失態のせいで、オーフィザン様はお疲れなのです。それなのに、看病? …………獣には無理です……立ち去りなさい」
「う、えっと……でも、でも……か、看病がしたいだけなんです!」
「………………失せろ……」
「……え?」
セリューはいきなり僕の胸ぐらをつかむ。
え? え? め、目が、さっきまでのセリューと違う。このまま僕を絞め殺しそうな顔してるーーー!!
「嫌だというなら、力尽くで窓から放り出す。今すぐ消えろ……」
「う、うう……か、かか看病したいだけです! こ、ここここ、ここ、こ、こっちだって、ち、ちちちちち力尽くでもと、とと通ります!!」
「……震えながら言うなっ! 獣が!」
「け、獣じゃないもん! こ、こ、こ、こっちだって、狐妖狼の力が戻ったんだもん! た、た、た、た、た、ただ……ただっ……にっ……た、だ……ただの、に、人間のお、おおおおおま……お前なんかに……ま、ま、ま、負け……負け……ま、ま、負けま……負けな」
「いい加減にしろっっ! 鬱陶しいっ!! かかってくるのか!? 来ないのか!!」
「え……あ、あ、えっと……い、行くもん!! お、オーフィザン様の役に立つんだもん!」
絶対突破してやる!
僕は、セリューを振り払い、そいつに向かって走り出した。
絶対負けるはずない! 力が戻ったんだから!! いつも意地悪言われた仕返しだ!! 今日こそ、セリューを負かしてやる!
だけど、あっさり突進は避けられて、僕はセリューに抱えられてしまう。暴れても全然離してもらえない。
「あ、あの……セリュー様!?」
「うるさい。大人しくしろ。ああ……汚い……二度とその毛で私に近づくな。獣め」
セリューは近くにあった大きな窓を開ける。僕を抱えたままのセリューよりも背の高い窓から、一気に風が入ってきた。
え? え? まさか本当に窓から捨てたりしないよね?
恐る恐る、セリューを見上げようとしたけど、そんな余裕すらなく、僕は窓から放り出された。
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