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42.目が覚めるのを待つ
しおりを挟むえええーー!! こ、こ、ここ、五階なのに、本当に放り出すなんて!!
落ちる!!
死ぬかと思ったけど、地面に激突する前に、誰かに抱きとめらてもらえた。え……オーフィザン様!?
「ちっ……クラジュかよ……」
ペロケだった……彼は、すごーく嫌そうな顔で僕を抱きかかえ、庭に僕を下ろしてくれた。
「なんでお前なの……助けなきゃよかった……」
「お、怒らないで……あ、ありがとう……ございます……」
「別にお前を助けようとしたんじゃない。空から誰か落ちてくるから、お前以外の人かと思って助けたの」
「で、でも、ありがとう……あの……き、謹慎は?」
「これ」
ペロケが、自分の首に巻かれた細い鎖を指す。それに下げられた、丸い鉄のプレートには、お仕置きって書いてあった。
「歩き回れるのは城の中の一部だけで、外出は禁止。だけど、あの部屋からは出ていいことになった。庭と、果樹園のお世話の手伝いをして欲しいって言われてる」
「い、忙しい……です……ね……」
「うん。すごく。だからもう、庭を荒らさないで。なんで落ちてきたの?」
「あ、あの……オーフィザン様の看病に行こうとしたら、窓から放り出されて……」
「看病? お前に看病なんて、できるわけないだろ!」
「でも……」
「オーフィザン様はお疲れなの! 魔力が回復するまで、ゆっくり休まないといけないんだ。誰にも会いたくないんだって」
「そ、そうなの……? ……じゃあ、僕……な、何かできること……あ!!」
「なに? お前にできることなんかないから。大人しく昼寝でもしてれば?」
「そ、そんなこと言わないで……あの……あの……」
「なに?」
「う……あ、あの……ぺ、ペロケ…………あの……は、ははは花を摘ませてくれませんか?」
「お前……喧嘩売ってるの?」
「ち、違うよ! お、オーフィザン様に……お見舞いの花を……」
「……お前には摘ませたくない。僕が摘む。僕が持って行きたいけど、オーフィザン様の部屋には入れないから……セリュー様に渡して」
「…………え……えええ……セリュー様に……?」
「うん。言っただろ? オーフィザン様は誰にも会いたくないんだ。セリュー様なら、そっと部屋に花を飾ることができるから」
「……せ、セリュー様は僕と話してくれないから……ぺ、ペロケ……が渡せば……」
「……無理なの。僕、オーフィザン様を裏切って情報を売ったから、セリュー様に会ったら切り刻まれちゃうもん」
うう……セリューならしそう。だけど、そうされそうなのは僕も同じだ。
怖いし嫌だ。でも、オーフィザン様に、お見舞いの花を渡したい。オーフィザン様に少しでも元気になって欲しい。
「……わ、分かった。僕が……セリュー様に……わ、渡し……ます……」
うーん……どうしよう……
花束とクッキーを持って、オーフィザン様の部屋に向かう廊下まで来たのはいいんだけど、やっぱり、セリュー、まだいる……
オーフィザン様の部屋の前の机から、柱の陰に隠れている僕のことをずーっと睨んでる。
部屋には絶対入れてくれそうにないなあ……
うううー……い、入れてもらえないなら、せめて、預かったものだけでも渡す!!
僕は、花束とクッキーを持って、ゆっくりセリューに近づいた。
セリューも立ち上がる。
「まだ何か用ですか……? 何度来てもここは通しません……」
「あ、あの……と、通りはしません……こ、これをオーフィザン様に渡していただけませんか……?」
僕は花束とクッキーをセリューに差し出した。
「ぺ、ペロケから花束と、だ、ダンドから、く、クッキーです! お、お見舞いです!」
「……オーフィザン様の部屋に入ることはできません……それは私も同じです。それを持って部屋に帰りなさい」
「…………じ、じゃあ、せめて、ここで待たせてください! お、オーフィザン様の目が覚めるまで……僕、ここで待ってます! 廊下で待つくらいなら、いいですよね!」
「目障りです」
「う、うー……じ、じゃあ、待っててください!」
僕は、今日の朝まで寝ていた部屋に走って戻って、急いで毛布を持って来た。
戻って来た僕を見て、セリューはうんざりした顔でまた立ち上がるけど、僕は、セリューから少し離れたところで毛布をかぶって自分の姿を隠した。
「これでもう僕の姿、見えないですよね? だから、ここにいていいですよね!?」
「………………は?」
「見えないならいいんですよね!? お、オーフィザン様が部屋から出て来るまで……ぼ、僕、ここで待ちます!!」
毛布で顔も隠しちゃったから、セリューの姿すら見えない。そして何も言わないから、返事は分からなかった。だけど、さっきみたいに窓から捨てたりもしない。
恐る恐る毛布から顔を出してみると、セリューは机でまた仕事を始めている。
ここで待つこと、許してくれたんだ……早くオーフィザン様の目が覚めるといいな……
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