虐げられた僕は、ライバルの最強王子のパーティになんて入りません! 僕たちは敵同士です。溺愛されても困ります。執着なんてしないでください。

迷路を跳ぶ狐

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40.ここで悪役になるくらいなら

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 魔物のことは機密、何も話せない、だけど、線路の向こうには魔物がいるから、そこで退治するまで待っていろ……そんなところだろうか。あの駅長がディロヤル伯爵から言われたことは。

 だけど、そんなの無茶な話だ。駅長だって、列車の安全な運行を願っている。今、ロヴァウク殿下に「機密」としか話せないのは不本意なはず。

 そもそも、ロヴァウク殿下は次期国王と言われている王子。伯爵に何を言われていても、殿下が話せと言うなら、話せばいいはず。それなのに何も言えないのは、何か余程の理由があるか、本当に全く何も知らないか、どちらかだろう。

 それは、ロヴァウク殿下にも分かっているはずだ。
 何しろ殿下は、ランギュヌ子爵が人買いの背後にいることも、警備隊がそれに加担する貴族たちの嫌がらせで支給される品を減らされていることも、すぐに見抜いた。

 駅員も駅長も、ひどく怯えている。伯爵の手が回っていることなんて、明明白白。それなのに、なんで殿下はあんな脅すようなことをするんだ?

 ……元々そんな感じの殿下だけど……

 だけどロヴァウク殿下は、僕の働きを認めて、よく街を守ったと言ってくれた。
 殿下は、いつだって高圧的なわけじゃない。貴族の手が回っている以上、怯えた駅長相手に、脅すようなことはしないはずなのに。

「貴様……どうしても邪魔をすると言うなら…………来い」
「で、殿下っ……! な、何をっ……!」
「王である俺の邪魔をしたのだ。ただで済むはずがないだろう?」
「ひっ……! で、殿下っ……ど、どうかお許しを…………」
「来い。俺が直々に拷問してやる」

 とんでもないことを言い出した殿下に、周りの人たちが慌てて駆け寄って止めている。

 何してるんだよ! ロヴァウク殿下はっ……!!

 殿下にだって、彼らの裏に誰かがいること、絶対に分かっているはずなのに。まさか、わざと? 何か考えがあってしているのか??

 僕は、リュックの中のライイーレ殿下に声をかけた。

「ライイーレ殿下……殿下! 寝てないですよね!?」
「んーーーー?」

 眠そうな声をあげて、ライイーレ殿下が僕のリュックから出てくる。ビーフジャーキー咥えながら。ジャーキー食べてお腹いっぱいになって寝てたんだな……

「ライイーレ殿下……まさか、列車に乗った後に食べるはずだったおやつ、全部食べちゃってないですよね?」
「だって……お腹すいたんだもん……ねえ、レクレットー……肉巻きおにぎり食べたい……」
「……お肉のことは後にしてください……そんなことより、ロヴァウク殿下、おかしくないですか?」
「ロヴァウクはいつもあんなふうに怖いよ?」
「そんなことありません!! あ、あの駅員たち、ぜっったいに脅されてます!! 伯爵の仕業に決まってます!!」
「ディロヤル伯爵? 森の奥の街の仕返しかな?」
「小さっ……! そんなこと恨んで列車まで止めるって、貴族ってどこまで小さいんですか!!」
「レクレットだって、元貴族なのに」
「そんなことより、ディロヤル伯爵の仕業って、殿下だって分かってますよね?」
「俺には分からないよー。伯爵、ちょっと意地悪だけど、そこまでするかなー?」
「ライイーレ殿下じゃなくて、ロヴァウク殿下です!!」
「レクレット……最近俺じゃなくてロヴァウクのことばっかりで寂しい……俺のジャーキーは誰が用意するの?」
「僕は殿下のジャーキー準備するためにいるんじゃないです!」
「ロヴァウクはジャーキー食べないよ?」
「今の殿下はライイーレ殿下です! さっきから僕で遊んでますよね!?」
「そんなことないよー。ロヴァウクのことだろ? 気づいてると思うよ」
「だったらっ……!」
「相手はディロヤル伯爵だろ? ここは伯爵の領地だし、相手の縄張りも同然だ。だったら、どこで見張られてるか分からない。駅員たちも、それに怯えてるんだと思う」
「……どこで? ……気配はしませんが……もしかして、駅長と一緒にいる人、全員が駅員ってわけじゃないんですか?」
「それは俺にも分からないけど……」

 今、ロヴァウク殿下と駅長の周りにいる人たちの中には、伯爵側のスパイがいるかもしれないってことか……そうでなくても、使い魔を使って、今も殿下たちを見張っているのかもしれない。

 もしもそうなら、ここで伯爵が絡んでいることを指摘したとしても、駅員たちは何も話せない。
 だからあんな態度で、隔離された場所に連れて行こうとしているのか?

 だけど、殿下……それは悪手じゃないんですか?

 彼らはみんな怯えてる。きっと余程言えない理由があるんだ。それなのに、そのやり方で連れて行っても不審と恐怖を買うだけじゃ……

 ただでさえ、列車の運行中止が重なって、王家への不満が溜まっているときに、目に見える形で彼らを脅した事実は、伯爵のいい攻撃材料になってしまう。
 殿下はそんなこと気にしないのかもしれませんが……僕が気になります!!

 余計なお世話なのかもしれませんが、彼らを連れて行かせるわけにはいきません。
 殿下がここで悪役になるくらいなら、僕が聞き出します!

「ライイーレ殿下。リュックに隠れて顔を出さないでください!」
「俺、そればっかりだなー」

 そう言って、ライイーレ殿下はひゅっとリュックの中に姿を隠す。

 僕は、魔力の剣を作り出し、空を飛んでロヴァウク殿下の前に躍り出た。

「ロヴァウク殿下っっ!! ここは通しませんっっ!!」

 叫んで、屋上のロヴァウク殿下に切っ先を向ける。

 彼らを見下ろして、ロヴァウク殿下の前に立ち塞がると、自分が本当に殿下の敵役になった気分だった。
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