虐げられた僕は、ライバルの最強王子のパーティになんて入りません! 僕たちは敵同士です。溺愛されても困ります。執着なんてしないでください。

迷路を跳ぶ狐

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33.理由がありません

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 ロティスルートは、僕にもスープを出してくれた。

「せっかく会えたんだし、食事を楽しんでいってよ」
「……あ、ありがとう……ございます……」

 い、いいのかな?? 僕がこんなところで食事なんかして。

 ビクビクして落ち着かない僕に、ロティスルートは、少し微笑んで言った。

「そんなに緊張しなくていいよ。俺はロティスルート。よろしく、レクレット」

 そう言って、彼が手を差し出してくれて、僕も、それを握った。

「よ、よろしく……レクレット、です……」
「敬語じゃなくていいよー。あの殿下の相手ができる人がいるなんて、驚いたよ。森の奥の街から来たの?」
「は、はい……うん……」
「殿下はちょっと馬鹿だから、やりすぎるようだったら言ってね」
「うん……」

 あ。つい、うんなんて答えちゃった。

 第五王子に、馬鹿だなんて言って、大丈夫なのか? すでに数々の無礼を働きまくっている僕が言うのもなんだが。

 だけど、それを聞いていたらしい殿下は、少しムッとして席について、ロティスルートを睨んだだけ。

「誰が馬鹿だ。俺は王だぞ」
「まだ王じゃないだろ!」

 ロティスルートは、そう言いながら、バスケットにいくつもパンを入れてくれる。焼きたてのパンのいい匂いがする……

「いっぱい食べてね。これから、殿下の相手をしないといけないんだから」
「で、でもっ……」

 ロティスルートにすすめられても、僕は、それに手を出せなかった。

 美しいテーブルに、輝くようなテーブルクロス。金で装飾された食器と、その上の豪華な食事。
 そして、それを取り囲む王子と、王子が信用する優秀な魔法使いたち。家柄も魔力も魔法の腕も、多分、僕なんかとは、段違いなんだ。

 そんなところに紛れ込んだ、つい最近まで泥まみれで踏みつけられていた僕。

 ……場違いにも程がある……

 むしろ、自分がここにいることで、場をしらけさせているような気すらしてきた。

「……い、いただく……理由がありません……」

 つい、こんな嫌なことを言ってしまう。

 だけど、自分があまりに邪魔者な気がして、動けない。僕に、こんなところに呼ばれる資格なんか、あるはずないんだ。

 ずっと俯いていたら、そばに近寄ってきている殿下の気配に気づかなかった。

「貴様……俺に逆らうのか?」
「へ!!?? うわっ……!」

 頭の上で声がしたかと思えば、いつのまにか僕のすぐそばまで迫っていたロヴァウク殿下が、僕の座っている椅子の背もたれを握り、驚く僕に顔を近づけてくる。

「いい度胸だ……では、食事をすると言うまで、貴様を火で炙ろうか?」
「僕は炙っても食べられません!!」

 ただの冗談のはずなのに、殿下が言うと本気に聞こえるから恐ろしい。

 怯える僕に、殿下は腕を組んで言った。

「いただく理由だと? そんなものあるに決まっているだろう」
「え?」
「俺が貴様と食事を取りたい。これ以上に必要な理由など、世界には存在しない。それなのに、王の誘いを断ると言うのか?」
「……」

 まだ王じゃないのに……

 殿下がそう言うと、やっぱり本当にそんな気がしてくる。何か変わったわけじゃないのに、この場にいてもいいような気がしてしまうから、不思議だ。

「じ、じゃあ……あ、ありがとうございます! 殿下……」
「礼など必要ない。俺が貴様と食事を取りたいと言っただろう。それに、貴様の腹が減っていては、俺と戦えないではないか」
「……」

 こんな時でも、殿下は楽しそうだなあ……

 僕は思い切って、テーブルの上のパンを掴んだ。

「み、皆さんも……あ、ありがとうございます……い、いただきます……!!」

 断って、パンをかじる。ふわふわで、バターの香りがした。

「おいしい……すごく、おいしいです…………」

 こんなの、今まで食べたことあったか?
 すごく美味しくて、食べても誰にも怒鳴れなくて、殴られなくて、余ったものやソースを投げつけられたりもしない。
 椅子に座って、安心できる場所で食事が取れて、おいしいって感じることができる。

 いつのまにか、涙が流れていた。

 そしたら、ロヴァウク殿下が僕にペーパーナプキンを渡してくれる。

「お前を待った甲斐があった」
「え……?」
「これだけ楽しい食卓は、初めてだ」
「……」

 楽しい? なんで?? こんなにみすぼらしい僕が、泣きながらパンを口に詰め込んでいて、さぞ醜いだろうに。

 見上げると、殿下は微笑んでいた。

「王の命令だ。好きなだけ食べろ」
「……まだ王じゃないのに……」
「口の減らないやつだ……そこがいい」
「…………ありがとう……ございます……」
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