虐げられた僕は、ライバルの最強王子のパーティになんて入りません! 僕たちは敵同士です。溺愛されても困ります。執着なんてしないでください。

迷路を跳ぶ狐

文字の大きさ
26 / 117

26.信じることはできませんが

しおりを挟む

 警戒心をあらわにする僕を見て、男はますます焦り出す。

「な、なんでそんなに警戒してるんだよ!! 俺、そんなに危険な奴に見える!??」

 そんなことを言われても、僕には警戒を解く理由が見つからない。話していることは嘘ばかりだし、いきなり背後に立つし。

 何より、背後に立たれたことがショックだった。
 普段から、周囲を警戒して歩いているのに、背後への接近を許してしまった。相手が気配を消す魔法を使っていたんだろう。
 それでも、いつもなら気づくのに、あんなにそばまで接近させてしまうなんて、どうかしている。

「……と、とにかく……僕は、あなたの言うことを信じることができません……道を戻って、警備隊を呼んできてください」
「そんなー…………じゃあ、俺は湖の街にも行けないし、魔法の道具も盗られたままだよ? 俺のこと、可哀想だって思わない?」
「……あなたの言うことが全て本当だと仮定して、気の毒だとは……思わなくもない、です……けれど、そうであったとしても、僕はもう警備隊ではないので、警備隊としての権限なんてないし、何より、自分で確かめてもいないのに、第五王子を貶めるような発言をするあなたに、手を貸すことはできません」
「……思ってたより薄情だなー……せっかく可愛い子が相手で嬉しかったのに」
「……」

 とても、大切なものを盗まれて先へ進めなくて困っているようには見えない……
 さっきから変な言動を繰り返しているし、どう言うつもりなんだろう。

 男は、呆れたように言って、頭をかいている。

 僕を騙そうとして出てきたにしては、なんだかやり方が雑だし、本当に騙す気はあるのか?

 その男は、ため息をついて肩をすくめた。

「しょうがないなー……失敗しちゃったし、今回は諦めるよ……あ! でも絶対にまた来るから!」
「……また来られても困ります。その度に相手をするのも大変だし……多分、また来られた時も、僕はあなたを信じません。次に僕に近づいた時は、申し訳ございませんが、その足をいただきます。背後に立たれるのは困るので」
「そんな理由でいただかれたくないよ!! もう後ろは取らないよ! 約束する!」
「一方的な約束はやめてください」

 嫌なら、もう来なければいい。それなのに、こんなことを言うってことは、金目的の盗賊ではなくて、僕を標的にしている? やっぱり、僕を誘い出して、何かを企んでいるのか?
 それとも、話していることは何もかも嘘で、やっぱり金目的の盗賊か……

 その男は、僕に背を向け、去って行こうとする。

 また来るって言ってるし、ここで別れても、また別の方法で、僕に接近してくるんだろう。

 歩き出した彼に、僕は駆け寄った。近寄れるだけ近づいて、その背中に声をかける。

「あの!」
「え? うわあああああっっ……!!」

 男は飛び退いて、僕と距離を取った。
 逃げるのも早いし、同時に構えている。戦い慣れしているようだ。

 じっと男を観察し続ける僕に、その男は、やけに青い顔をして言った。

「なっ……な、なんだよ! 背後を取るな、なんて言っておきながら、自分はどれだけ接近してるんだよ!! 耳に息かかったよ!? 俺の耳にキスしようとした?」
「全くしようとしてません。どのくらい近づけるか、確かめたかっただけです。思ったより近づけました」
「近づいて何する気だったの!? 怖いんだけど!??」
「そんなことより……僕からも聞きたいことがあります」
「聞きたいこと? 俺に? ………………何かなー……?」
「あの……本当に、この先で、ロヴァウク殿下にあったんですか?」
「へ!? えーっと……う、うん……あ! 殿下じゃなくて、殿下を名乗る男ね!?」
「……そういうの、いいです。それより、ロヴァウク殿下がいたんですか?」
「う、うん……この先に……あ! 興味湧いてきた!?」
「湧いていません」

 彼の話には興味はない。

 だけど、彼が、ロヴァウク殿下の名前を出したことは気になる。

 どういうつもりなのか知らないが、殿下を貶めるようなことを言う奴を放っておくことはできない。それが僕を誘い出すためならなおさら。
 殿下は、王家の名に傷がつくことを承知で、僕が反逆者ではないと言ってくれたんだ。

 この場で拘束して、湖の街の警備隊に突き出すか? だけど、この男、まだ何もしていない。どういう目的があるのかも分からない。

 ……一度案内だけさせて、相手の目的を確認しておくか。その上で、湖の街の警備隊まで連れて行けばいい。

「分かりました。あなたの言葉は信じませんが、一緒に行きましょう」
「信じてないのに来るの!? なんで!?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。

竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。 あれこれめんどくさいです。 学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。 冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。 主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。 全てを知って後悔するのは…。 ☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです! ☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。 囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
 本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。  僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!  「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」  知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!  だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?  ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される

水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。 絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。 長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。 「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」 有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。 追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

悪役令嬢の兄、閨の講義をする。

猫宮乾
BL
 ある日前世の記憶がよみがえり、自分が悪役令嬢の兄だと気づいた僕(フェルナ)。断罪してくる王太子にはなるべく近づかないで過ごすと決め、万が一に備えて語学の勉強に励んでいたら、ある日閨の講義を頼まれる。

処理中です...