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26.信じることはできませんが
しおりを挟む警戒心をあらわにする僕を見て、男はますます焦り出す。
「な、なんでそんなに警戒してるんだよ!! 俺、そんなに危険な奴に見える!??」
そんなことを言われても、僕には警戒を解く理由が見つからない。話していることは嘘ばかりだし、いきなり背後に立つし。
何より、背後に立たれたことがショックだった。
普段から、周囲を警戒して歩いているのに、背後への接近を許してしまった。相手が気配を消す魔法を使っていたんだろう。
それでも、いつもなら気づくのに、あんなにそばまで接近させてしまうなんて、どうかしている。
「……と、とにかく……僕は、あなたの言うことを信じることができません……道を戻って、警備隊を呼んできてください」
「そんなー…………じゃあ、俺は湖の街にも行けないし、魔法の道具も盗られたままだよ? 俺のこと、可哀想だって思わない?」
「……あなたの言うことが全て本当だと仮定して、気の毒だとは……思わなくもない、です……けれど、そうであったとしても、僕はもう警備隊ではないので、警備隊としての権限なんてないし、何より、自分で確かめてもいないのに、第五王子を貶めるような発言をするあなたに、手を貸すことはできません」
「……思ってたより薄情だなー……せっかく可愛い子が相手で嬉しかったのに」
「……」
とても、大切なものを盗まれて先へ進めなくて困っているようには見えない……
さっきから変な言動を繰り返しているし、どう言うつもりなんだろう。
男は、呆れたように言って、頭をかいている。
僕を騙そうとして出てきたにしては、なんだかやり方が雑だし、本当に騙す気はあるのか?
その男は、ため息をついて肩をすくめた。
「しょうがないなー……失敗しちゃったし、今回は諦めるよ……あ! でも絶対にまた来るから!」
「……また来られても困ります。その度に相手をするのも大変だし……多分、また来られた時も、僕はあなたを信じません。次に僕に近づいた時は、申し訳ございませんが、その足をいただきます。背後に立たれるのは困るので」
「そんな理由でいただかれたくないよ!! もう後ろは取らないよ! 約束する!」
「一方的な約束はやめてください」
嫌なら、もう来なければいい。それなのに、こんなことを言うってことは、金目的の盗賊ではなくて、僕を標的にしている? やっぱり、僕を誘い出して、何かを企んでいるのか?
それとも、話していることは何もかも嘘で、やっぱり金目的の盗賊か……
その男は、僕に背を向け、去って行こうとする。
また来るって言ってるし、ここで別れても、また別の方法で、僕に接近してくるんだろう。
歩き出した彼に、僕は駆け寄った。近寄れるだけ近づいて、その背中に声をかける。
「あの!」
「え? うわあああああっっ……!!」
男は飛び退いて、僕と距離を取った。
逃げるのも早いし、同時に構えている。戦い慣れしているようだ。
じっと男を観察し続ける僕に、その男は、やけに青い顔をして言った。
「なっ……な、なんだよ! 背後を取るな、なんて言っておきながら、自分はどれだけ接近してるんだよ!! 耳に息かかったよ!? 俺の耳にキスしようとした?」
「全くしようとしてません。どのくらい近づけるか、確かめたかっただけです。思ったより近づけました」
「近づいて何する気だったの!? 怖いんだけど!??」
「そんなことより……僕からも聞きたいことがあります」
「聞きたいこと? 俺に? ………………何かなー……?」
「あの……本当に、この先で、ロヴァウク殿下にあったんですか?」
「へ!? えーっと……う、うん……あ! 殿下じゃなくて、殿下を名乗る男ね!?」
「……そういうの、いいです。それより、ロヴァウク殿下がいたんですか?」
「う、うん……この先に……あ! 興味湧いてきた!?」
「湧いていません」
彼の話には興味はない。
だけど、彼が、ロヴァウク殿下の名前を出したことは気になる。
どういうつもりなのか知らないが、殿下を貶めるようなことを言う奴を放っておくことはできない。それが僕を誘い出すためならなおさら。
殿下は、王家の名に傷がつくことを承知で、僕が反逆者ではないと言ってくれたんだ。
この場で拘束して、湖の街の警備隊に突き出すか? だけど、この男、まだ何もしていない。どういう目的があるのかも分からない。
……一度案内だけさせて、相手の目的を確認しておくか。その上で、湖の街の警備隊まで連れて行けばいい。
「分かりました。あなたの言葉は信じませんが、一緒に行きましょう」
「信じてないのに来るの!? なんで!?」
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