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20.今の自分にできる最高
しおりを挟む逃げ出した僕の足元から、ロヴァウク殿下が操る魔法の水が噴き出して、僕を捕らえようと迫ってくる。
僕は、自分の体を強化して、近くの民家の屋根を越す高さまで飛び上がった。
逃げる僕を追って、殿下の水が飛んでくる。
早朝から、これで拘束される人たちの姿を何度も見た。そう何度も同じ手で、僕は捕まらないぞ!
何しろ、こっちは命がかかっているんだ。また背を向けて逃げた僕を、殿下が許すはずがない。捕まったら何をされるか分からない!
この水は、全てロヴァウク殿下に忠実に従う。
これがもし本物の水で、殿下がそれを操っているなら、人の体を拘束するように性質を変えるために、かなりの魔力を使うはずだ。
縛る強さを変えたり、窒息させずに床に押さえつけるにも、かなり魔力の微調整が必要で、困難であるはず。
それなら、恐らくこれは本物の水ではなくて、王子の魔力で作られた、水のような鎖なのだろう。
魔力増強の道具すら使わず、そんなものを操る才と力には感服するが、弱点もある。
魔力であるがゆえ、魔力の塊のようなものである魔物に対処する時と、全く変わらない方法で済むことだ。
それに、操るのが殿下だから、その動きはある程度予想できる。
今朝、殿下は敵の足元を狙っていた。足元から飛び出す水で、相手の足と手の自由を奪えば、それだけで相手を無力化できる。
そういう戦法が、殿下は好きなんだ。
つまり、足元からくるなんて、予測済みなんだよ!!
魔物を退治する時と同じ剣を作り出し、飛んでくる水たちを斬り払う。
水は破裂。
周りに水飛沫が飛んだ。
弾ける水飛沫に向かって、自分の魔力を飛ばし、飛沫を爆発させる。
これも、殿下が今朝使っていた戦法だが、僕のはあの時とは少し変えてある。
爆発した水飛沫は、さらに細かな粒になり、あたりに真っ白な霧のようなものを撒き散らし広がっていく。
爆発の風と衝撃はほとんどない代わりに、周りに濃度の高い霧を撒き散らして、相手の視界を奪うものにしたんだ。
集まった群衆も殿下も、彼の周りの魔法使いたちも、動揺の声をあげていた。
逃げるなら今しかない。
死ぬ気で飛ぶぞ!!
体を強化し、自分に今できる最高の速度で飛ぶ。
門の外まであと少し。
辺りは立ち込めた霧で真っ白。目眩しは完璧だ! 逃げ出すくらいなら、なんとかできるはず。
けれど、耳元でかすかに、あのムカつく自虐趣味の声がした。
「遅いぞ。レクレット」
しまったっ……捕まった!?
すぐそばに殿下がいるんだと思った。
飛行を止めて、剣を生み出し握る。
だけど、僕の作り出した霧は、僕の視界も奪っちゃうから僕まで何にも見えない。
霧中で相手を探す。
キョロキョロしている僕めがけ、水の音がした。
頭上からだ。
空の結界から、何か落ちてくる!
気づいたけれど、対処できない。空から水が雨のように降ってくる。
剣を振るが、降り注ぐ水の粒すべてを斬るなんてできない。
僕の体にまとわりついた水は、一気に膨らみ僕を包んでしまう。まさか、街の上空の結界から攻撃が来るなんて、思ってなかった。
「わっ……!」
結局捕まり、僕は舗装された大通りに倒れる寸前で、水の拘束を振り払った。
倒れたら、そこを狙われる。
なんとか踏みとどまったが、その時にはもう遅かった。
すでに僕の魔力の霧は消えていて、ロヴァウク殿下は僕の目の前に立っている。
そして、僕を警備隊と魔法使いたちと兵士たちが取り囲んでいた。
僕を捕まえた殿下は、勝ち誇ったように笑う。
「俺から逃げられる気でいたか? 捨てられ人族」
この王子……! あんまりじゃないか! 僕と競争するみたいなことを言っておきながら、結局は王家の権力使いまくりだ!
反逆者で淫魔と罵られた僕には、永遠に手に入らないものなのに。
もう、我慢できなかった。
「……ひ、卑怯です!! こんなにっ……たくさん人を使って!!!!」
「何が卑怯だ。俺は王だぞ」
「殿下、まだ国王じゃないですよね!? 第二王子のバーニジッズ殿下の方が有力って、僕知ってるんですからね!!」
無礼千万の口をきく僕を、警備隊長が黙れと言って止めるけど、僕はもう警備隊じゃない。こんなところ、出ていくんだ。だったら最後に無礼くらい働いてやる!
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