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遅咲きの花は大輪に成る
全部言ってやる*
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「おはようございます組長。康二もおはよう。」
あれから結局松下は泊まることにした。夜は駿里が疲れている演技をしたことでちょっかいを少しかけられた程度で終わりゆっくりと寝た。そして3人仲良く朝食を食べリビングでくつろいでいると及川が来た。レイプされたものの駿里は昨日ほどの恐怖感はなかった。それはきっと昨日の松下の話が関係している。駿里がその及川に関する全ての事実を知ったことを及川は知らない。だから及川は今日も清々しい顔をしてリビングに入ってきた。
「及川さん。おはようございます。」
「早かったな。」
松下はリビングに入ってきた及川を快く歓迎して挨拶をした。寛也は態度には出さなかったものの松下同様に及川を歓迎していた。その2人をみて及川は満足そうに微笑んでいた。その間駿里はずっと及川を観察していた。その視線に及川は苦笑いしそうになりながら口を開いた。
「朝は忙しいかなと思い早めに来ました。」
「はは、そうかそうか。ありがとな及川。ほんとに助かる。」
寛也は駿里の頭を撫でながら及川を褒めた。もちろんその時も駿里はずっと及川を重視していた。笑うこともせず真顔でずっと見ていた。そんな駿里を不審がった及川だったがあのことが寛也達にバレるわけにはいかなかったので駿里の行動にツッコミを入れることはせずに笑顔で寛也を見続けた。そんな及川の笑顔をとめたのは松下だった。
「組長、及川さんも来てくださったことですし我々はもう行きますか?早い方がいいと思うので。」
松下がそう言うと及川は嬉しそうにした。及川は表情には出さなかったものの駿里にはわかった。微妙に動いた顔の動きで。
「そうだな。じゃあ及川、駿里を頼んだぞ。いつも通りだが駿里に傷をおわせたらタダじゃおかねぇからな。」
「おっと、勿論です。」
寛也はそう話しながら駿里を抱きかかえると及川にそのまま渡した。急な事だったので及川は思わず声に出てしまったがその後は寛也の言ったことに答えるとよいしょと駿里を強く抱きかかえ直した。寛也たちがこの部屋を出ていったあと駿里に逃げられないように。
「りくとも喧嘩しないようによく見といてくれ。」
「はい。お気を付けて。」
念には念をと駿里のことが心配でたまらない寛也は及川にしつこいほどそう言って部屋を出ていった。松下もその後に続く。そして疑い深い及川は寛也たちが出てエレベーターに乗ったことを確認するまで駿里には手を出さなかった。そして寛也たちが行ったことを確認すると駿里を強い力で抱きかかえたままソファに座り駿里も向かい合わせになる形で座らせた。
「駿里。お前はほんとに肝が据わってるな。怖くないのか俺のことが。あんなことされた後なのによ。」
「怖いよ。怖いけどそれよりも今話したいことがあるから。」
怖くないわけが無い。今もものすごい力で逃げられないように拘束されているのだから。しかもその手は怪しげに動く。駿里のおしりを撫でるようにいやらしく動く。敏感な駿里は擽ったさから身を捩りたくなったがそれに耐えながら及川に言い返した。
「なんだよ。言ってみろ。」
「ちょ、待って、先に話を聞けっ!」
言ってみろと言ってきたのに及川は駿里のズボンの中に手を入れてきた。いや下着の中に入れてきたといった方が正しいだろう。そして及川はそのまま駿里の後孔に指を挿れ動かし始めた。その及川に焦った駿里は慌てながらそう言った。やられ始めては話すことが出来無くなるから。
「別にやりながらでも話せるだろ?」
「おい、かわさんっ、やめてってば!!」
ついに及川はポケットからローションを取りだしてそれを手に着けてぐちゅぐちゅと駿里の後孔をかき混ぜ始めた。その及川を止めようと駿里は身をよじるが彼の力は計り知れないほど強くビクともしなかった。
「早く話さないと何も言えなくなるぞ?記憶も飛んじまうかもな。」
大切な話がしたい駿里とは裏腹に早くやりたい及川は指をどんどんと増やしていく。グリっと前立腺を押してきたり中をかき混ぜたりと駿里が感じることばかりする。このままでは本当にいえなくなると思った駿里は叫ぶように話し始めた。
「…っ、おれは!」
「あ?」
「おれは、及川さんの弟じゃない…っ!!」
駿里がそう叫んだ瞬間及川は手を止めた。そして数秒間の沈黙が続いた。その沈黙を終わらせたのは及川だった。
「…誰から聞いた。」
「そんなの今どうだっていいっ、それよりもなんで及川さんは弟さんの苦しむことをするの!」
「黙れ。」
「こんなのおかしいよっ、いい加減目を覚ませよ!」
「黙れって言ってんだろ。」
「自分がされて苦しくて嫌だったのになんでそれを俺にすんだよっ、しかも弟さんが生きてたらこれをするつもりだって聞いた。ほんと信じられないっ、バカだ!!」
せっかく伝えたいことを昨日の夜1人で考えていたのに駿里は浮かんだ言葉をそのまま及川にぶつける形になってしまった。でもそれでももうよかった。及川に伝えられればなんでも良くなった。だが及川は駿里が話せば話すほど機嫌が悪くなっていった。そしてお仕置だと言わんばかりに駿里の後孔に挿れている指を増やした。
「お前に何が分かる。」
「ぅ゛っ…わ、分かるよ。俺だってこれまでいっぱい嫌なことされてきた。もちろん寛也にも康二さんにもいっぱいされた。怖かったし逃げたかったけど出来なかった。だけど俺は絶対それをしない。辛いのがわかってるから。」
「てめぇは俺か?俺じゃねぇ。人はそれぞれ考え方も違ってキャパも違う。お前が出来ても俺は出来ねぇんだよ。お前みたいにそんな寛大な心だって持ち合わせてない。そもそも生きてる世界が違う奴が調子乗んなよ。」
「生きてる世界が違う?そんなのただの言い訳に過ぎないだろ!」
「いい加減にしねぇとマジで痛い目見るぞ。」
痛いところをつかれた及川はそれ以上駿里に話すことを許さないと前立腺を摘みそこを擦り始めた。駿里が嫌という程感じると分かっていたから。だが駿里はそれでも負けじと話し続けた。
「っ、ぁ、ふっ、ぅ゛っ…べつ、にいい。おれは、及川さんを救いたいだけだから。」
「はっ…バカにも程がある。レイプされた相手を救いたいとか笑わせんじゃねぇ。」
及川自身もレイプ経験があるからこそその相手を救いたいと思う思考が理解できなかった。呆れた及川は駿里の後孔から指を抜いた。そしてソファに押し倒し駿里を犯そうとした。だが駿里はそれを全力で拒み後孔を隠すように手で押えた。その手を直ぐに退けようとした及川だったが駿里が話し始めたことでそれをやめた。
「今まではそう思わなかったよ。寛也のせいでたくさんのことに巻き込まれて痛い目に遭った。その度に苦痛で早く忘れたかったけど及川さんは違う。目が悲しんでるから。」
及川は昔の駿里のようだった。ご機嫌取りのために笑っていたけど本心ではない。全然面白くないのに笑っていた。もうそれをしなくていい、と及川に伝えたかった駿里だったが及川が急に乳首を思いっきり摘んできたために出来なかった。
「い゛っ…。」
「殺されてぇの?」
「やれるもんならやってみろよ。及川さんには絶対出来ないから。」
「てめぇ…。」
「及川さんはずっと弟さんは自分のせいで死んだと思ってるんだよね。でもそれは違うよ。」
「もう喋んな。」
「及川さんは悪くないんだよ。そもそも周りの大人が悪いんだ。」
そう。周りの大人が悪い。駿里の親がそうだった。母親はクズで毎日男を連れ込む。挙句の果てに結婚した。それで義理の父親に毎日犯される日々が続いた。
「でも子供はそれに気づかない。それが当たり前だから。大人も子供を苦しめてることに気づかない。」
泣き叫んでる駿里を見ても母親は助けなかった。駿里も助けを求め無かった。それは母親に怒られたくなかったから。怒らせて母親に嫌な気持ちになって欲しくなかったから。抱きしめられたかったから。ただいい子だねって言って欲しかったから。
「でも大人になってからも環境によっては自分が酷い目に遭ってることに気づかない。それで最悪の場合自分がされて嫌だったことを自分の子供にする。今の及川さんがそうだよ。弟さんの記憶を塗り替えるなんてできるわけが無い。」
駿里はよく知ってる。レイプされたあとどれだけ心の傷が塞がるのに時間がかかるのかを。だが駿里にはその傷を塞いでくれる存在はいなかった。及川もそうだ。駿里は自分と及川の過去を重ね合わせていたのだ。
「大事なのは塗り替えることじゃない。支えてあげることだよ。」
結局遊ぶだけ遊ばれた駿里は義理の父親に捨てられた。そこから自力で生きた。生きて生きて必死に生きていた時寛也が現れた。
「支えて貰うだけで救われる。誰かがただいまって言ってくれるだけで嬉しくなる。誰とご飯を食べる幸せ。誰かとしょうもない雑談をする幸せ。そのどれもが記憶を塗り替えることよりも大切なんだよ。」
初めは駿里に言うことを聞かせるために酷くしていた寛也だったがちゃんと大切にしてくれた。お風呂にも入れてくれてご飯も食べさせてくれた。ほとんどが口移しでちょっと嫌だったこともあるけどそれでも抱きしめてくれた。駿里はその時初めて知った。人ってこんなに暖かいんだなって。
「だから及川さん。もうやめよう。」
及川はいつからか駿里の話を黙って聞いていた。そしてその及川の瞳が潤ってきた。乾いて期待することを諦めていた及川の目が潤い変わりそうになっていた。
「及川さんも自由になっていいんだよ。及川さんのせいじゃない。悪い大人のせい。弟さんはそれを伝えたかったんだと思うよ。だから言わなかった。及川さんが弟さんを守りたいって思うのと同じで弟さんも及川さんを守りたかった。そんな弟さんに守られた大切な命なのにこんなことしちゃダメだよ。」
昨日犯されたばかりなのに…。今も犯されようと押し倒されているのになんでこいつはこんなことをするんだ…と及川は駿里が分からなくなった。
「…ほんと馬鹿なやつ。お前普通じゃねぇよ。」
「うん。よく言われる。」
「だから俺みたいなクソ人間に掴まんだよ。」
「そうだね。」
「もっと人を突き放せよ。やられたことはやりかせよ。」
「それはだめ。」
「なんなんだよお前。ほんと調子が狂う。」
及川にとって駿里みたいな人間は初めてだった。不思議な気持ちになる。それと同時に罪悪感に包まれた。
「俺は漲 駿里。どこにでもいる普通の人間だよ。」
「知ってるよ名前なんか。俺はずっとお前に目をつけてきたんだから。」
「やっぱりそうだったんだね。」
「なんだよ知ってたのか。」
「康二さんと散歩に行くたびにいつも見かけてたから。でもここに来た時は気づかなかった。格好も髪型も全然違ったから。でも今分かった。及川さん俺の事好きでしょ。」
駿里がそう言うと及川は分かりやすく動揺した。そして及川は駿里を押し倒していたが起き上がりそっぽ向く。
「調子乗んな。なわけねえだろ。俺が好きなのは…。」
「もう仕方ないなぁ。キスぐらいならしてあげる。」
「だから調子乗んなって言ってんだろ。」
そっぽ向いていた及川だったが駿里の方を向くと上着をつかみ駿里を引き寄せてキスをした。唇が重なり合うだけの軽いキスだ。
「したかったら俺が勝手にする。調子乗んなガキ。」
「なんだよ及川さん。ただのツンデレじゃん。」
「黙れ。」
「否定しないんだ。」
「駿里。」
なんだか及川にスイッチが入ってしまったようで駿里の名前を色っぽく呼んだ。だがその声にはもう脅しが入っていなかった。優しい声だ。これが本来の及川の姿なのだろう。だが止めなければ。駿里には寛也という尊い存在がいるから。
「だめ。」
「なんで。」
「俺には寛也がいるから。」
「………。」
「だからキスまでね。」
「…分かった。キスまで、な?」
及川はそう言うと駿里を引き寄せ再び自分の膝に座らせた。そして今度は優しく…でも逃げられないように駿里を抱きかかえて後頭部に手を当て顔を近づけた。本当はダメな行為だ。寛也がいるのに他の男とキスなんて…。逆の立場だったらきっと耐えられない。だけどここでキスさえもさせなければ及川が暴れだしそうで駿里は怖かったのだ。キスさえすれば及川を抑えられると、そう思っていたが…。
「え、ちょ、だめだってば!」
1回で終わるキスを想像していた駿里は及川に解放されずに捕まって本気で焦った。だがもう時すでに遅し。キスまでという約束を絶対に守ってくれる及川だろうが…。
「キスならいいんだろ?男に二言はねぇぞ駿里。」
「や、やっぱ、だめ…うぶっ!」
駿里が言おうとした言葉を塞ぐように及川は駿里にキスをした。今度は深いキスを。
「ふっ…、ぅ、はぁ…っ、ぁ、や!」
舌を入れ歯茎を舐め口の中を堪能するように動かした。駿里は昨日の及川に対する嫌悪感は綺麗に消え去ったものの焦っていた。そしてやっぱりちょっとだけ怖かった。だって逃げられないのだから。下手したら及川は寛也よりも力が強いかもしれない。駿里がキスから逃げようと顔を背けようとするがそれすら出来ないのだから。それにいちばん怖いのはやめてくれないこと。及川はキスを辞める気配がなかった。そして案の定長いこと拘束され及川にキスをされ続けていた駿里が解放されたのは1時間がすぎてからだった。その頃には駿里の唇が腫れていたことは言うまでもないだろう。そしてそのあと2人でりくを迎えに行った。もしものことがあってはいけないと寛也はりくを部屋に隔離していた。だけどもうきっと大丈夫。及川は現実を受けいれたし駿里も及川に対する恐怖感が無くなったから。だからりくも及川を受け入れてくれるだろう。
「りく!」
部屋に着くやいなや駿里は満面の笑みでりくの名を呼んだ。その駿里に応えるようにりくは駿里に飛びつく。そして及川にも同じようにしっぽを振っていた。
あれから結局松下は泊まることにした。夜は駿里が疲れている演技をしたことでちょっかいを少しかけられた程度で終わりゆっくりと寝た。そして3人仲良く朝食を食べリビングでくつろいでいると及川が来た。レイプされたものの駿里は昨日ほどの恐怖感はなかった。それはきっと昨日の松下の話が関係している。駿里がその及川に関する全ての事実を知ったことを及川は知らない。だから及川は今日も清々しい顔をしてリビングに入ってきた。
「及川さん。おはようございます。」
「早かったな。」
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「はは、そうかそうか。ありがとな及川。ほんとに助かる。」
寛也は駿里の頭を撫でながら及川を褒めた。もちろんその時も駿里はずっと及川を重視していた。笑うこともせず真顔でずっと見ていた。そんな駿里を不審がった及川だったがあのことが寛也達にバレるわけにはいかなかったので駿里の行動にツッコミを入れることはせずに笑顔で寛也を見続けた。そんな及川の笑顔をとめたのは松下だった。
「組長、及川さんも来てくださったことですし我々はもう行きますか?早い方がいいと思うので。」
松下がそう言うと及川は嬉しそうにした。及川は表情には出さなかったものの駿里にはわかった。微妙に動いた顔の動きで。
「そうだな。じゃあ及川、駿里を頼んだぞ。いつも通りだが駿里に傷をおわせたらタダじゃおかねぇからな。」
「おっと、勿論です。」
寛也はそう話しながら駿里を抱きかかえると及川にそのまま渡した。急な事だったので及川は思わず声に出てしまったがその後は寛也の言ったことに答えるとよいしょと駿里を強く抱きかかえ直した。寛也たちがこの部屋を出ていったあと駿里に逃げられないように。
「りくとも喧嘩しないようによく見といてくれ。」
「はい。お気を付けて。」
念には念をと駿里のことが心配でたまらない寛也は及川にしつこいほどそう言って部屋を出ていった。松下もその後に続く。そして疑い深い及川は寛也たちが出てエレベーターに乗ったことを確認するまで駿里には手を出さなかった。そして寛也たちが行ったことを確認すると駿里を強い力で抱きかかえたままソファに座り駿里も向かい合わせになる形で座らせた。
「駿里。お前はほんとに肝が据わってるな。怖くないのか俺のことが。あんなことされた後なのによ。」
「怖いよ。怖いけどそれよりも今話したいことがあるから。」
怖くないわけが無い。今もものすごい力で逃げられないように拘束されているのだから。しかもその手は怪しげに動く。駿里のおしりを撫でるようにいやらしく動く。敏感な駿里は擽ったさから身を捩りたくなったがそれに耐えながら及川に言い返した。
「なんだよ。言ってみろ。」
「ちょ、待って、先に話を聞けっ!」
言ってみろと言ってきたのに及川は駿里のズボンの中に手を入れてきた。いや下着の中に入れてきたといった方が正しいだろう。そして及川はそのまま駿里の後孔に指を挿れ動かし始めた。その及川に焦った駿里は慌てながらそう言った。やられ始めては話すことが出来無くなるから。
「別にやりながらでも話せるだろ?」
「おい、かわさんっ、やめてってば!!」
ついに及川はポケットからローションを取りだしてそれを手に着けてぐちゅぐちゅと駿里の後孔をかき混ぜ始めた。その及川を止めようと駿里は身をよじるが彼の力は計り知れないほど強くビクともしなかった。
「早く話さないと何も言えなくなるぞ?記憶も飛んじまうかもな。」
大切な話がしたい駿里とは裏腹に早くやりたい及川は指をどんどんと増やしていく。グリっと前立腺を押してきたり中をかき混ぜたりと駿里が感じることばかりする。このままでは本当にいえなくなると思った駿里は叫ぶように話し始めた。
「…っ、おれは!」
「あ?」
「おれは、及川さんの弟じゃない…っ!!」
駿里がそう叫んだ瞬間及川は手を止めた。そして数秒間の沈黙が続いた。その沈黙を終わらせたのは及川だった。
「…誰から聞いた。」
「そんなの今どうだっていいっ、それよりもなんで及川さんは弟さんの苦しむことをするの!」
「黙れ。」
「こんなのおかしいよっ、いい加減目を覚ませよ!」
「黙れって言ってんだろ。」
「自分がされて苦しくて嫌だったのになんでそれを俺にすんだよっ、しかも弟さんが生きてたらこれをするつもりだって聞いた。ほんと信じられないっ、バカだ!!」
せっかく伝えたいことを昨日の夜1人で考えていたのに駿里は浮かんだ言葉をそのまま及川にぶつける形になってしまった。でもそれでももうよかった。及川に伝えられればなんでも良くなった。だが及川は駿里が話せば話すほど機嫌が悪くなっていった。そしてお仕置だと言わんばかりに駿里の後孔に挿れている指を増やした。
「お前に何が分かる。」
「ぅ゛っ…わ、分かるよ。俺だってこれまでいっぱい嫌なことされてきた。もちろん寛也にも康二さんにもいっぱいされた。怖かったし逃げたかったけど出来なかった。だけど俺は絶対それをしない。辛いのがわかってるから。」
「てめぇは俺か?俺じゃねぇ。人はそれぞれ考え方も違ってキャパも違う。お前が出来ても俺は出来ねぇんだよ。お前みたいにそんな寛大な心だって持ち合わせてない。そもそも生きてる世界が違う奴が調子乗んなよ。」
「生きてる世界が違う?そんなのただの言い訳に過ぎないだろ!」
「いい加減にしねぇとマジで痛い目見るぞ。」
痛いところをつかれた及川はそれ以上駿里に話すことを許さないと前立腺を摘みそこを擦り始めた。駿里が嫌という程感じると分かっていたから。だが駿里はそれでも負けじと話し続けた。
「っ、ぁ、ふっ、ぅ゛っ…べつ、にいい。おれは、及川さんを救いたいだけだから。」
「はっ…バカにも程がある。レイプされた相手を救いたいとか笑わせんじゃねぇ。」
及川自身もレイプ経験があるからこそその相手を救いたいと思う思考が理解できなかった。呆れた及川は駿里の後孔から指を抜いた。そしてソファに押し倒し駿里を犯そうとした。だが駿里はそれを全力で拒み後孔を隠すように手で押えた。その手を直ぐに退けようとした及川だったが駿里が話し始めたことでそれをやめた。
「今まではそう思わなかったよ。寛也のせいでたくさんのことに巻き込まれて痛い目に遭った。その度に苦痛で早く忘れたかったけど及川さんは違う。目が悲しんでるから。」
及川は昔の駿里のようだった。ご機嫌取りのために笑っていたけど本心ではない。全然面白くないのに笑っていた。もうそれをしなくていい、と及川に伝えたかった駿里だったが及川が急に乳首を思いっきり摘んできたために出来なかった。
「い゛っ…。」
「殺されてぇの?」
「やれるもんならやってみろよ。及川さんには絶対出来ないから。」
「てめぇ…。」
「及川さんはずっと弟さんは自分のせいで死んだと思ってるんだよね。でもそれは違うよ。」
「もう喋んな。」
「及川さんは悪くないんだよ。そもそも周りの大人が悪いんだ。」
そう。周りの大人が悪い。駿里の親がそうだった。母親はクズで毎日男を連れ込む。挙句の果てに結婚した。それで義理の父親に毎日犯される日々が続いた。
「でも子供はそれに気づかない。それが当たり前だから。大人も子供を苦しめてることに気づかない。」
泣き叫んでる駿里を見ても母親は助けなかった。駿里も助けを求め無かった。それは母親に怒られたくなかったから。怒らせて母親に嫌な気持ちになって欲しくなかったから。抱きしめられたかったから。ただいい子だねって言って欲しかったから。
「でも大人になってからも環境によっては自分が酷い目に遭ってることに気づかない。それで最悪の場合自分がされて嫌だったことを自分の子供にする。今の及川さんがそうだよ。弟さんの記憶を塗り替えるなんてできるわけが無い。」
駿里はよく知ってる。レイプされたあとどれだけ心の傷が塞がるのに時間がかかるのかを。だが駿里にはその傷を塞いでくれる存在はいなかった。及川もそうだ。駿里は自分と及川の過去を重ね合わせていたのだ。
「大事なのは塗り替えることじゃない。支えてあげることだよ。」
結局遊ぶだけ遊ばれた駿里は義理の父親に捨てられた。そこから自力で生きた。生きて生きて必死に生きていた時寛也が現れた。
「支えて貰うだけで救われる。誰かがただいまって言ってくれるだけで嬉しくなる。誰とご飯を食べる幸せ。誰かとしょうもない雑談をする幸せ。そのどれもが記憶を塗り替えることよりも大切なんだよ。」
初めは駿里に言うことを聞かせるために酷くしていた寛也だったがちゃんと大切にしてくれた。お風呂にも入れてくれてご飯も食べさせてくれた。ほとんどが口移しでちょっと嫌だったこともあるけどそれでも抱きしめてくれた。駿里はその時初めて知った。人ってこんなに暖かいんだなって。
「だから及川さん。もうやめよう。」
及川はいつからか駿里の話を黙って聞いていた。そしてその及川の瞳が潤ってきた。乾いて期待することを諦めていた及川の目が潤い変わりそうになっていた。
「及川さんも自由になっていいんだよ。及川さんのせいじゃない。悪い大人のせい。弟さんはそれを伝えたかったんだと思うよ。だから言わなかった。及川さんが弟さんを守りたいって思うのと同じで弟さんも及川さんを守りたかった。そんな弟さんに守られた大切な命なのにこんなことしちゃダメだよ。」
昨日犯されたばかりなのに…。今も犯されようと押し倒されているのになんでこいつはこんなことをするんだ…と及川は駿里が分からなくなった。
「…ほんと馬鹿なやつ。お前普通じゃねぇよ。」
「うん。よく言われる。」
「だから俺みたいなクソ人間に掴まんだよ。」
「そうだね。」
「もっと人を突き放せよ。やられたことはやりかせよ。」
「それはだめ。」
「なんなんだよお前。ほんと調子が狂う。」
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「俺は漲 駿里。どこにでもいる普通の人間だよ。」
「知ってるよ名前なんか。俺はずっとお前に目をつけてきたんだから。」
「やっぱりそうだったんだね。」
「なんだよ知ってたのか。」
「康二さんと散歩に行くたびにいつも見かけてたから。でもここに来た時は気づかなかった。格好も髪型も全然違ったから。でも今分かった。及川さん俺の事好きでしょ。」
駿里がそう言うと及川は分かりやすく動揺した。そして及川は駿里を押し倒していたが起き上がりそっぽ向く。
「調子乗んな。なわけねえだろ。俺が好きなのは…。」
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そっぽ向いていた及川だったが駿里の方を向くと上着をつかみ駿里を引き寄せてキスをした。唇が重なり合うだけの軽いキスだ。
「したかったら俺が勝手にする。調子乗んなガキ。」
「なんだよ及川さん。ただのツンデレじゃん。」
「黙れ。」
「否定しないんだ。」
「駿里。」
なんだか及川にスイッチが入ってしまったようで駿里の名前を色っぽく呼んだ。だがその声にはもう脅しが入っていなかった。優しい声だ。これが本来の及川の姿なのだろう。だが止めなければ。駿里には寛也という尊い存在がいるから。
「だめ。」
「なんで。」
「俺には寛也がいるから。」
「………。」
「だからキスまでね。」
「…分かった。キスまで、な?」
及川はそう言うと駿里を引き寄せ再び自分の膝に座らせた。そして今度は優しく…でも逃げられないように駿里を抱きかかえて後頭部に手を当て顔を近づけた。本当はダメな行為だ。寛也がいるのに他の男とキスなんて…。逆の立場だったらきっと耐えられない。だけどここでキスさえもさせなければ及川が暴れだしそうで駿里は怖かったのだ。キスさえすれば及川を抑えられると、そう思っていたが…。
「え、ちょ、だめだってば!」
1回で終わるキスを想像していた駿里は及川に解放されずに捕まって本気で焦った。だがもう時すでに遅し。キスまでという約束を絶対に守ってくれる及川だろうが…。
「キスならいいんだろ?男に二言はねぇぞ駿里。」
「や、やっぱ、だめ…うぶっ!」
駿里が言おうとした言葉を塞ぐように及川は駿里にキスをした。今度は深いキスを。
「ふっ…、ぅ、はぁ…っ、ぁ、や!」
舌を入れ歯茎を舐め口の中を堪能するように動かした。駿里は昨日の及川に対する嫌悪感は綺麗に消え去ったものの焦っていた。そしてやっぱりちょっとだけ怖かった。だって逃げられないのだから。下手したら及川は寛也よりも力が強いかもしれない。駿里がキスから逃げようと顔を背けようとするがそれすら出来ないのだから。それにいちばん怖いのはやめてくれないこと。及川はキスを辞める気配がなかった。そして案の定長いこと拘束され及川にキスをされ続けていた駿里が解放されたのは1時間がすぎてからだった。その頃には駿里の唇が腫れていたことは言うまでもないだろう。そしてそのあと2人でりくを迎えに行った。もしものことがあってはいけないと寛也はりくを部屋に隔離していた。だけどもうきっと大丈夫。及川は現実を受けいれたし駿里も及川に対する恐怖感が無くなったから。だからりくも及川を受け入れてくれるだろう。
「りく!」
部屋に着くやいなや駿里は満面の笑みでりくの名を呼んだ。その駿里に応えるようにりくは駿里に飛びつく。そして及川にも同じようにしっぽを振っていた。
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