極道の密にされる健気少年

安達

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番外編

通りすがりの女 気分転換

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「おいおいお前ら随分楽しそうじゃねぇか。俺も混ぜろよ。」



そう言ってエレベーターから松下が降りてきた。駿里は松下がかなりご立腹思っていたがさほど怒っていなさそうなので安心した。



「何キレてんだお前。」

「それは駿里に聞いた方が早いんじゃねぇの?」



松下は圷に問いかけられたことをそのまま返すように駿里の方を見てそう言った。その松下からの視線が痛くて駿里は焦り目を松下から背ける。



「ぁ、えっと……ごめんなさいっ…。」


「たく、お前は。ちょっと目離したらすぐ居なくなっちまうんだから。」

「康二も悪ぃからな。」

「へいへい。」



駿里が逃げ出した元の原因は圷が言った通り松下だ。こういう時圷がいてくれると駿里は本当に助かる。志方と松下だけだったらとんでもないことになっていただろう。想像するだけでも恐ろしい。そんなことを思いながら駿里がビクビクしていると圷が駿里の肩を抱いてきた。



「駿里、そろそろ部屋戻んねぇとまずいぞ。」



寛也の部屋には複数の監視カメラがある。初めは駿里の監視目的であったが今は必要ない。だが寛也は監視カメラを取ることはなかった。なぜなら仕事の合間なのに駿里をみて癒されているからだ。だがその癒しである駿里がいないとなると寛也は必ず怒る。しかも今は外出禁止中。怒らないわけがなかった。だから圷はそろそろ本当に駿里を寛也の部屋に返したかった。だが駿里は少しそれが嫌そうだった。なぜなら既に絶対寛也にバレている気がしたから。だから今更戻っても変わらないと思ったのだ。



「どうせ怒られるなら楽しみたいや…。」

「何怒られる前提なんだよ。まだバレてねぇだろ。」



圷には謎の自信があるようでそう言いきった。普段頼りがえがあるのに圷はこういう時だけ何故か頼りない。そんな圷を呆れ顔で見ながら松下が口を開いた。



「いや、バレてるだろ。相手は組長だぞ?」

「…まぁそれもそうだな。」



普通に考えて見ればそうだな、と圷は頷いた。そして重くなってしまった空気を変えるように志方が明るく駿里の肩に手を置き笑顔で口を開いた。



「駿里、外行くか?」

「…いいの?」

「たまにはいいだろ。壮大に怒られようぜ。」



いつも自分たちのせいで監獄のような場所にいる駿里を楽しませられるこんなチャンスなんてそうそうない。志方はせっかく掴んだこのチャンスを無駄にしないようにそう言ったのだ。



「志方の言う通りだな。どっか行きたいとこあんなら言えよ。普段自由じゃない分今日は楽しもうぜ。いいだろ?圷。」

「たまにはそれもありだな。」

「よし。圷も来るなら心配ねぇな。そんで駿里。どこ行くが決まったか?」

「ここ行きたいっ!」



そう言って駿里は目をきらきらさせながらスマホで検索してでてきた画像を3人に見せた。



「ほんっとにお前は。健気なやつだなぁ。」

「じゃあ、着替えねぇとな。」

「おう。駿里は俺についてこい。着替える間俺の部屋で待ってろ。」

「……うん?」


いつもならどこに行くにしてもスーツで行くのに圷らは着替えると言った。駿里はそれが不思議だったが松下に言われた通り彼の部屋に行き皆が着替え終わるのを待っていた。



「悪ぃな待たせちまってよ。」

「全然待ってないよ。」



そういった駿里の顔を見て松下は急に笑い出した。しかも腹を抱えて。駿里は何が面白いのか全然分からなかったが自分のことで笑われていることはすぐにわかったのでなんだか恥ずかしくなった。



「何がそんなに面白いんだっ、人の顔見て笑うなんて最低だ…!!」

「はは、まじで可愛いやつ。頭の中にあることが顔に出てんぞ。」

「うそっ…!」

「嘘つかねぇよ。はは、ほんとにおもしれぇな。」



そう言って松下は腹を抱えて笑い続けた。そんな松下をみてムスッとしていた駿里だったが松下があまりにも笑うのでつられて自分も一緒に笑い出してしまった。そして一頻り2人で大笑いすると松下は駿里が気になっていたことを話してくれた。



「だってよ、俺らがスーツで行ったらお前楽しめねぇだろ?」

「…え?」

「今日は全部忘れて楽しむんだろ?だったら俺らも私服にしねぇと周りの視線が気になって買い物どころじゃねぇ。そうだろ?」

「うんっ!」

「よし行くぞ。アイツらも待ってるからな。」



松下はそう言うと駿里の肩を抱き足を進めていった。駿里も松下同様に楽しみでたまらないというように上機嫌で足を進める。



「悪ぃ、待たせた。」

「遅ぇぞお前ら。」



志方はそう言いながらも笑顔で手を振ってきた。そして4人でマンションを出ると駿里が先程行きたいと言った場所に行き、お目当てのものを買った。そこからは寄り道なりなんだりしては写真を撮ったりお土産を買ったりしていた。幹部たち皆が普段見せることのない無邪気な顔をして楽しんでいた。だが駿里だけはなんとも言えない気持ちになっていた。修学旅行生や親子連れ、カラオケに行くのであろう放課後の学生たち。親子で楽しそうに買い物をしていたり打ち上げをする人たち。全て駿里たちにはなかった人生だ。やっぱりこうやって表の世界で明るく家族と友達と笑いあっている姿を見ると駿里は悲しくなる。表の世界であれだけ傷ついた人生を送ってきたというのにそうやって幸せそうに親子で買い物してる姿や友達同士で笑いあっている姿を見ると自分もこんな人生があったのかなぁ、なんて思ってしまう。一度、目にしてしまうとと駿里は彼らから目が離せなくなってしまった。そんな駿里を見た松下は…。



「羨ましいよな、駿里。俺も心底そう思うよ。幸せそうに生きやがってってな。俺はこんなに苦労して裏社会の人間になって手を汚してきたのによ。なんにも知らない顔して生きてんだからな。でもな、駿里。恨んでも仕方ねぇんだよ。だって俺らはあいつらに負けねぇぐらい幸せだろ?笑ってんだろ?だから胸張って生きろ。」



ありきたりな言葉なのに毎回松下のこういう所に駿里は救われる。松下はいつもどれだけ楽しんでいたとしても駿里の感情の変化にいち早く気づき、助け舟をだす。だから駿里はなんだかんだ言って松下のことが大好きなのだ。何をされても嫌いにはなれないのだ。それを伝えようと駿里が松下の方を向いた瞬間、何者かによって腕を引かれそれを妨げられた。



「まーた康二がくせぇセリフ言ってんぞ。駿里、こんなやつ無視しとけ。それよりこっち来てみろよ。お前こーゆーの似合いそうじゃん。」



そう言って志方が変なお面を駿里に被せてきた。志方は松下が駿里のことを励ましたあと大抵こんな風にしてしんみりとした空気を一瞬で変える。明るくしてくれる。駿里は涙が溢れそうになったが、それをグッとこらえ被せられたお面を取り志方に抗議した。



「どこがだっ、全然似合ってない!」

「はは、似合ってんじゃねぇか。」

「駿里、ちょっとこっち向け。」

「あ、何すんだっ…!!」



カシャ



駿里が取ったはずのお面を圷によって再び被せられると何やら音がした。嫌な予感。シャッター音がなる理由なんて写真をとった時以外ない。



「はは、傑作だな。」

「今すぐ消せっ!!」

「嫌だね。ははは、にしてもおもしれねぇな。」


そこからは松下らのおかげで周りの人なんてなんにも気にならなくなった。駿里は心からこの時間を楽しんでいた。だがそろそろ帰らなければならない時間が迫ってしまっていた。寛也がそろそろ家に帰ってきてしまう。いくらバレていると言っても寛也が帰るまでに家に戻りたい3人は急いで走り出した。



「やべぇぞ。もうこんな時間だ。お前ら走んぞ。」

「猛ダッシュだ!急げ駿里!」
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