極道の密にされる健気少年

安達

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番外編

〜オメガバース〜 証拠隠滅

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「チッ、遅せぇ!」


エレベーターは2個ある。そのうちの一つは駿里が乗って既に50階ほどまで行っていた。そしてもう1つのエレベーターは運が悪いことに中々来ない。松下は焦りが怒りに変わっていた。



「怒っても意味が無いだろ。冷静になれ。」

「無理に決まってんだろ。駿里が死のうとしてっかもしれねぇんだそ。俺は階段で行く。」

「待て松下!」



焦りは失敗しか産まない。それは松下も分かっているはずだ。だが、駿里の命が危うくなっている今そんなことすら考える余裕が無いのだ。



「落ち着け。ここ何階だと思ってんだ。エレベーターが来るのを待とう。」

「くそ…!」

「松下。」

「分かってる。」









*********



駿里は誰にも気づかれることなくエレベーターの中に乗れて壁にもたれかかっていた。自分で決めたはずなのにいざ死ぬとなれば涙が溢れ出てくる。寛也にもう会えなくなる。それが何よりも駿里にとって辛いことだった。



「なんで、こうなっちゃったんだろ…っ、。」



静まり返ったエレベーターのこの空間で駿里の嗚咽だけが聞こえている。そしてに遂にエレベーターは家がある最上階まで到着した。ドアが開くと駿里は震える足で歩き始めた。



「っ…!」



玄関に入ると寛也が置いたものだろう。駿里と寛也のツーショット写真が飾られていた。2人とも満面の笑みで笑い、幸せそうな顔をしている。



「俺は弱すぎる…。」



決めたはずなのに意思が揺らぐ。駄目だ。駿里は写真立てを倒し、写真が見えないようにしてそのままリビングの方へと歩いて行った。キッチンに着くと事務所から持ってきた注射器とヤクを台の上に乗せた。そして涙を流しながら駿里は注射器に薬品を入れていく。震える手で少しずつ丁寧に一滴たりとも零さぬよう慎重にやった。



「ごめん寛也…。」



死んで楽になるという選択肢しかなかった。生きているだけで思い出す。震える。怖い。辛すぎるんだ。これ以上耐えることが出来なかった。これまで駿里は何度もレイプをされた過去がある。それが積み重なりついに爆発したのだ。でもその胸の内をうち明かす勇気もなかった。なぜならその痛みはレイプを受けた本人にしか分からないから。レイプをされたことの無い人から見れば駿里の行動は大袈裟に見えると思う。でもそれでいいのだ。レイプなんてされる必要が無いんだから。どれだけ辛いくて怖いことか。駿里は心の中で助けて欲しい。抱きしめて欲しい。傍から離れないで欲しい。一生外に出たくないと思っていた。だけど、その言葉が口から出なかった。まるで喉の奥にその言葉を発することが出来ないよう鍵がかかっているかのようだった。



「いたっ…!」



駿里は焦りからか躓いてしまった。それだけならまだ良かったが、手に持っていた注射器を落としてしまった。そのせいで注射器の先端が折れてしまった。



「予備持ってきといてよかった。」



今度は失敗しないように駿里は床に座った。その後今ヤクが入っている注射器から一旦液体を抜き出して別の注射器の中にそれを入れた。1度失敗をしたこともあり今度はさらに慎重にやったのでかなりの時間がかかってしまった。だが、時間をかけた分完璧に準備をすることが出来た。準備万端になると駿里は立ち上がり腕をまくった。そして二の腕あたりに注射器の先端を当て目をつぶって勢いよく針を自分に刺した。



「だめだ…。」



刺せたのはいいものの血管に針が入っていない。これではヤクが体に回るのが遅くなってしまう。もう一度やろうと駿里が一旦針を抜き、再び刺そうとした時…。



バァン!!



その衝撃音に驚き駿里は持っていた注射器を落としてしまった。注射器が2本とも駄目になってしまった。しかし、駿里はその焦りよりも今は違うことで焦っていた。さっき鳴った音は見えなくともドアが勢いよく開いた音だと分かった。どうしよう。バレる。幸い先程の衝撃音は玄関の方のドアだった為入ってきた人達がリビングに来るまで時間がある。その間に駿里が証拠隠滅を図ろうとしてヤクと注射器を急いで隠そうとした時リビングに入ってきた松下の姿が見えて手に持っていたそれらを咄嗟に背中に隠した。
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