魔王を倒した勇者

大和煮の甘辛炒め

文字の大きさ
上 下
37 / 60
三章 人魔戦線

三十七話 最強の魔術師(1)

しおりを挟む
アスフェンに突き飛ばされたフュートレックが涙を浮かべながら落ちていく。

「私の……愛しのアスフェン」

額に青筋が浮かぶ。

「フフフ、これはアスフェンからの試練なのね。あなたの前に立ちはだかる障害を乗り越えて、あなたを手に入れる!」

フュートレックがドラゴンの翼を生やして飛び上がる。

「来るぞ!」

パワードスーツを装着したパンタロンが叫ぶ。

アスフェンとアリスが身構える。

「この人たちは私が守るから!」

チュンチュンがバーミックスとユスナを庇うように立つ。

「フフフ、殺してあげる」

フュートレックが雷魔術を放つ。

パンタロンが叫ぶ。

「避けろ!」

雷が炸裂する。

「ぐうう……!」

アリスが倒れ込む。

身体の痙攣が止まらない。

『雷なんか避けられるかよ!身体の痙攣が止まらない、やられる!』

フュートレックが杖をアリスに向ける。

「まず一人」

「やらせるかよ!」

空中に退避したパンタロンが銃器でフュートレックを攻撃する。

「ちっ、鬱陶しい蝿が!」

フュートレックが魔弾丸を素手で弾く。

『魔弾丸を素手で弾いちまうのか……しかも雷魔術まで使いやがった。やってることの次元が違いすぎる……帰りてぇー』

パンタロンがうんざりしたようにため息をつく。

「アイスジャベリン」

フュートレックが何十発もの氷のミサイルを発射する。

「マジかよ!」

パンタロンがジェットパックをフルスロットルにする。

『パワードスーツを着た状態で魔力切れになる可能性が見えてきたな。いくら俺の魔力を最高効率で動力に変換出来るとはいえ、ジリ貧か?いや、奴なら俺の魔力をゴッソリ没収できるかもしれん。そうなると厄介だ、アスフェン達の近くで戦闘すべきだな』

巨大な炎が氷のミサイルを溶かした。

「やるじゃねぇか、アリス!」

パンタロンが嬉しそうに叫ぶ。

アリスが巨大な炎を放ったのだ。

「飛竜」

アリスが剣を構え直す。

『まだ身体がビリビリする!くっそー、空なんか飛びやがって』

「アリス、チュンチュンとスイッチしろ」

アスフェンがパンタロンを見ながら言う。

「え?」

「奴を空中から叩き落とす。空を飛べる奴が必要だ」

「分かった!その前に……」

チュンチュンがアリスの首筋にかぶりつく。

「フアェー、やだぁ~」

アリスの表情がとろけ、火照る。

「よし!血の補給完了!」

チュンチュンが翼を生やして飛び上がる。

パンタロンがチュンチュンの隣に並ぶ。

「大丈夫なのか?ちびっこ!」

「チュンチュンだよ!取り敢えずアイツを空から引きずり下ろすよ!」

「了解したぜ、ちびっ子!」

フュートレックがチュンチュンを睨む。

「吸血鬼、アスフェンの敵……!」

フュートレックの攻撃が激しさを増す。

『こいつ、ギアを上げやがった』

パンタロンが必死に避ける。

「わわわ!さっきより激しくなってない!?」

チュンチュンも慌てて逃げる。

『あの技通用するかしら』

「ブラッドカッター!」

血の刃がフュートレックに向かう。

フュートレックは避けもしない。

「痛くも痒くもないわよ」

『よし、服に血がついた!』

チュンチュンがブラッドカッターを連発する。

フュートレックの服が血に濡れていく。

「ちょっと、しつこいわよ」

フュートレックがアイスジャベリンを放つ。

「こんなもんか」

チュンチュンが逃げ回る。

『なにがしたかったんだ?』

パンタロンがチュンチュンを追うミサイルを爆破する。

「必殺技打って!」

チュンチュンがパンタロンの隣に並ぶ。

「お、おう」

パンタロンがチャージを開始する。

『部下たちが一向に上がってこない。気付きそうなもんだがな。まさか、ご丁寧に殺してきやがったのか?一発じゃ弾かれる可能性もあるが、ちびっ子の動きを見るにその心配はなさそうだ』

「チャージ完了!究極電磁波アルティメットレールキャノン!」

破壊的なエネルギーがフュートレックを襲う。

「くだらない」

フュートレックがエネルギーを掻き消す。

「そうなるわな」

パンタロンが呟く。

「今度はこっちの番よ」

フュートレックが魔砲を放とうとする。

パンタロンが危機を察知する。

「おい、ちびっ子、逃げるぞ……」

パンタロンの後ろにはアンデラートがある。

『避けたらアンデラートが消し飛ぶ!最悪だ』

パンタロンがチャージを開始しようとした瞬間、フュートレックの服についた血が縄になってきつく縛り上げる。

フュートレックが驚く。

『体外に出た血液の操作!こいつ、帝王種カイザーだったのか』

チュンチュンが叫ぶ。

「いまだ!アスフェーン!アリース!」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

核醒のカナタ -First Awakening-

ヒロ猫
ファンタジー
日本に住む高校二年生永田カナタはひょんな事から同級生のワキオとマルタと共に別の世界に転移してしまう。様々な困難が待ち受ける中、果たしてカナタは無事に元の世界に戻ることができるのだろうか... ⚠この小説には以下の成分が含まれています。苦手な方はブラウザバックして下さい ・漢字 ・細かい描写 ・チートスキル無し ・ざまぁ要素ほぼ無し ・恋愛要素ほぼ無し ※小説家になろう、カクヨムでも公開中

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

処理中です...