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一章 予兆編

十一話 更なる襲撃

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朝日も昇りきらないうちに小川のほとりで二つの人影が動き回っていた。

「はあっ!」

ケラスターゼが木刀を振るう。

「フッ。甘い、甘い甘い、甘ィ!」

アリスが難なく受け止める。

「今度はこちらから行くぞ!」

今度はアリスが木刀を振るう。

「ホラホラ、どうした気合い入れろ!」

アリスの木刀がケラスターゼの顎を弾く。

「うぐっ」

ケラスターゼが倒れ込む。

「また私の勝ち~」

アリスが木刀をくるくる回しながら川に飛び込む。

そのまま魚を咥えて川から上がる。

「朝ごはんゲット~」

アリスが魔法で火を起こす。

「焼き魚はシンプルだが上手いんだ~!塩があればもっと良いんだけどね」

「そんな高級品この街にあるわけ無いでしょ」

顎を真っ赤に腫らしたケラスターゼがぼやく。

「おーい、二人とも~!」

レグルスが森から駆け出してくる。

後ろにデッカイ猪を連れている。

「助けてぇ~!」

レグルスが涙目で叫ぶ。

「なにやったの!?」

アリスが驚いて剣を抜く。

刃が炎に包まれる。

「炎天斬!」

アリスが加速スキルをフル使用して猪を一瞬で切り刻む。

『え、あの大きさの猪を一太刀で……?』

ケラスターゼが呆然とする。

レグルスもビックリしている。

「は、はやっ……」

「気を付けなよ」

アリスが剣を鞘に納める。

『いや、一太刀なんかじゃあない……!何回も斬ったんだ、とんでもない速度で、とんでもない回数を』

ケラスターゼが立ち上がる。

地面にアリスが移動した跡がくっきり残っている。

「神からもらったスキル……伊達じゃ無いわね」

ケラスターゼが呟く。

「こんだけあればアスフェンさんも喜びますね」

「師匠でもこんな量食べられないでしょ」

アリスとレグルスが大きめの肉片を担ぎ上げる。

「ブリエッタさんのところにも持っていきましょ」

ケラスターゼも足を二本担ぐ。


⭐⭐⭐

「……」

アスフェンが唖然とする。

「師匠、私が倒したんですよ、どうですか!」

アリスが得意気に胸を張る。

「俺猪キライ」

「……」

「……好き嫌いは良くないですよ」

レグルスがボソッと言う。

「うぐ、そんなことより、ギルドで討伐依頼を受けたのか?」

「いや、受けてないです」

「駄目だろ、余程の緊急事態じゃない限り在来生物の駆除は禁止されてるぞ。ケラスターゼは何をやってんだ」

アスフェンが呆れる。

「私が猪にちょっかいかけたから……」

レグルスがうつむく。

「とにかく……」

アスフェンがなにかを言おうとしたが、それは響き渡る爆音に掻き消された。

「アスフェンさーん!」

ケラスターゼの取り巻きが走ってくる。二人とも血まみれだ。

「ケラスターゼ様が……!」

「なぞの魔人が出現して、ケラスターゼ様が交戦中です!」

アスフェンが立ち上る煙を眺める。

「間に合えばいいが……」

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