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北から南
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ルックナー クラウス、エンジンの調子はどうだ?
クラウス 問題ありません。現在、全力で運転中。
クリンチ なんてことだ。エンジンを用いた航行でもほとんど前に進まない。
ルックナー これがホーン岬だ。オレも昔拿捕した「ピンモア」号で越えたが、予定を3か月もオーバーした。
ロイデマン こうも荒天が続くとは。
ルックナー オレの時よりマシだ。「ゼーアドラー」にはエンジンがあるからな。
クリンチ それでも大して進めません。下手をすれば難破しかねませんぞ。「ゼーアドラー」は所詮仮装巡洋艦。船体の強度は、戦闘艦に及びません。
ロイデマン 念のため、沿岸部によって航海すべきでしょう。
ルックナー ダメだ。嵐は総員の技量で乗り切れるが、ジョンブルどもの巡洋艦はそうはいかない。あの東洋艦隊のシュペー提督がコロネル沖海戦で勝ちながら、フォークランド諸島沖海戦で敗れたのは、艦の性能で装甲巡洋艦が巡洋戦艦に及ばなかったからだ。「ゼーアドラー」とジョンブルの巡洋艦の性能差は、その比じゃない。
そんな艦が「ケント」をはじめとして6隻もホーン岬には展開しているんだ。かわすためにも、南の方を航行するしかない。
ロイデマン そうですが、結構キツイですぜ。
ルックナー 耐えろ。オレ達は北極圏でも耐え抜いたではないか。太平洋に出て日本やオーストラリアの航路に打撃を与えてやるんだ。ドイツのために。
ロイデマン この暴風じゃ、帆が使えませんね。
ルックナー 風向きが一定じゃないからな。下手に帆を張ってもかえって痛めることになる。
クリンチ 帆だけではありません。船底の付着物もエライことになっているでしょう。
ルックナー 一度、陸で整備した方がいいか。休養も兼ねて。南太平洋には小島が多いから、どこかに潜むとしよう。
ロイデマン 南洋の穏やかな海を眺めがら一杯やりたいものですな。
ルックナー いいな。ハンモックを吊るして夕日を眺めながら一杯やりたい。
ロイデマン 自分としてはバーボンやライをハイボールで飲みたいですな。
ルックナー オーストラリアのカンガルーのジャーキーをつまみに欲しいな。あれは結構うまい。
ロイデマン 艦長、オーストラリアにいたことがあるんですな。
ルックナー おぉ、ティーンエイジャーの頃にな。レストランの皿洗い、救世軍、灯台守の下働き、製材所、猟師と色々やった。
ロイデマン 猟師でカンガルーを?
ルックナー そうだ、カンガルーやワラビーが主な獲物だった。その時はシンプルにステーキだったが、うまかった。
ロイデマン いいですね、オーストラリアの船舶を拿捕していただきましょう。
クリンチ 悪くありませんが、まずはホーン岬を抜けましょう。全てはそれからです。
ルックナー そうだな。手すきの者を見張りに回す。敵巡洋艦や氷山の発見に努める。
クリンチ 交代制にしませんと、疲労が蓄積してかえって発見確率を下げます。
ルックナー ローテーションの編成を頼めるか?
クリンチ かしこまりました。
ルックナー すまんな、貴官に負担をかける。
ナレーション かくして見張り体制が構築され、「ゼーアドラー」は南極圏を航行する。
プライス 前方に氷山発見!
舞台 上手に氷山を模したセットが配置される。
ルックナー 結構でかいな。
クリンチ あれで見えているのがほんの一部だと言うのが驚きです。
ロイデマン キルヒアイス、すまねえが手伝ってくれ。舵輪が言うこと聞きやがらねえ。
キルヒアイス 北極と同じだな。
キルヒアイス 舵輪に取り付く。
ルックナー 結構、接近しそうだな。南極圏に近寄り過ぎたか。
ロイデマン 氷山から離れるため北に進路を取ります。
ルックナー 構わないが、舵は言うことを聞くか?
ロイデマン・キルヒアイス 聞かせます!
ルックナー すまんな、頼むぞ。
クリンチ 氷山が!
轟音とともに氷山のセットが崩れ、奈落に消えていく。
ルックナー 氷山が。大自然の絶景だな。すごい迫力だ。
キルヒアイス もっと崩れてくれればな、回避しやすくなるかもしれねえな。
クリンチ それは違う。氷山とは見えている物より、海中の方が巨大なのだ。見えている部分など、僅かなものだ。
ルックナー クリンチの言う通りだ。氷山は、北極の流氷と違う。海中の方が巨大で、尖った部分があるのだ。
突然、セットが揺れる。
クラウス 艦底より浸水!
ルックナー まさか、海中の氷山と接触したか!
クラウス 問題ありません。現在、全力で運転中。
クリンチ なんてことだ。エンジンを用いた航行でもほとんど前に進まない。
ルックナー これがホーン岬だ。オレも昔拿捕した「ピンモア」号で越えたが、予定を3か月もオーバーした。
ロイデマン こうも荒天が続くとは。
ルックナー オレの時よりマシだ。「ゼーアドラー」にはエンジンがあるからな。
クリンチ それでも大して進めません。下手をすれば難破しかねませんぞ。「ゼーアドラー」は所詮仮装巡洋艦。船体の強度は、戦闘艦に及びません。
ロイデマン 念のため、沿岸部によって航海すべきでしょう。
ルックナー ダメだ。嵐は総員の技量で乗り切れるが、ジョンブルどもの巡洋艦はそうはいかない。あの東洋艦隊のシュペー提督がコロネル沖海戦で勝ちながら、フォークランド諸島沖海戦で敗れたのは、艦の性能で装甲巡洋艦が巡洋戦艦に及ばなかったからだ。「ゼーアドラー」とジョンブルの巡洋艦の性能差は、その比じゃない。
そんな艦が「ケント」をはじめとして6隻もホーン岬には展開しているんだ。かわすためにも、南の方を航行するしかない。
ロイデマン そうですが、結構キツイですぜ。
ルックナー 耐えろ。オレ達は北極圏でも耐え抜いたではないか。太平洋に出て日本やオーストラリアの航路に打撃を与えてやるんだ。ドイツのために。
ロイデマン この暴風じゃ、帆が使えませんね。
ルックナー 風向きが一定じゃないからな。下手に帆を張ってもかえって痛めることになる。
クリンチ 帆だけではありません。船底の付着物もエライことになっているでしょう。
ルックナー 一度、陸で整備した方がいいか。休養も兼ねて。南太平洋には小島が多いから、どこかに潜むとしよう。
ロイデマン 南洋の穏やかな海を眺めがら一杯やりたいものですな。
ルックナー いいな。ハンモックを吊るして夕日を眺めながら一杯やりたい。
ロイデマン 自分としてはバーボンやライをハイボールで飲みたいですな。
ルックナー オーストラリアのカンガルーのジャーキーをつまみに欲しいな。あれは結構うまい。
ロイデマン 艦長、オーストラリアにいたことがあるんですな。
ルックナー おぉ、ティーンエイジャーの頃にな。レストランの皿洗い、救世軍、灯台守の下働き、製材所、猟師と色々やった。
ロイデマン 猟師でカンガルーを?
ルックナー そうだ、カンガルーやワラビーが主な獲物だった。その時はシンプルにステーキだったが、うまかった。
ロイデマン いいですね、オーストラリアの船舶を拿捕していただきましょう。
クリンチ 悪くありませんが、まずはホーン岬を抜けましょう。全てはそれからです。
ルックナー そうだな。手すきの者を見張りに回す。敵巡洋艦や氷山の発見に努める。
クリンチ 交代制にしませんと、疲労が蓄積してかえって発見確率を下げます。
ルックナー ローテーションの編成を頼めるか?
クリンチ かしこまりました。
ルックナー すまんな、貴官に負担をかける。
ナレーション かくして見張り体制が構築され、「ゼーアドラー」は南極圏を航行する。
プライス 前方に氷山発見!
舞台 上手に氷山を模したセットが配置される。
ルックナー 結構でかいな。
クリンチ あれで見えているのがほんの一部だと言うのが驚きです。
ロイデマン キルヒアイス、すまねえが手伝ってくれ。舵輪が言うこと聞きやがらねえ。
キルヒアイス 北極と同じだな。
キルヒアイス 舵輪に取り付く。
ルックナー 結構、接近しそうだな。南極圏に近寄り過ぎたか。
ロイデマン 氷山から離れるため北に進路を取ります。
ルックナー 構わないが、舵は言うことを聞くか?
ロイデマン・キルヒアイス 聞かせます!
ルックナー すまんな、頼むぞ。
クリンチ 氷山が!
轟音とともに氷山のセットが崩れ、奈落に消えていく。
ルックナー 氷山が。大自然の絶景だな。すごい迫力だ。
キルヒアイス もっと崩れてくれればな、回避しやすくなるかもしれねえな。
クリンチ それは違う。氷山とは見えている物より、海中の方が巨大なのだ。見えている部分など、僅かなものだ。
ルックナー クリンチの言う通りだ。氷山は、北極の流氷と違う。海中の方が巨大で、尖った部分があるのだ。
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