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お披露目の土曜日。
日課となりつつある、手を繋いで家が見えるまで歩く。
話題は取り留めないが優しい風が流れて口角があがるような楽しいもので。
翠のお気に入りはいつしかアキラのお気に入りに。洋楽を真剣に聴いたことのなかったアキラは今では口ずさむまでになった。発音は怪しいし、意味がわかってるなんてことはないけど、それでも適当な英語は翠を笑わせて二人で歌う。
「おはようございます」
今日はアキラを先に行かせて、縁側から顔を覗かせる。
亜実が戦隊ヒーローを見ているときと同じ、いやそれ以上の目の輝きと鼻息を荒くしてアキラに抱きつく。
「イケメン!!」
コアラのようにしがみ付いて離れない亜実はアキラがたいそう気に入った様子だ。
「亜実!アキラ君はこれから仕事なんだから邪魔しないの!」
「邪魔じゃないもん。アキラ君、亜実のこと邪魔?」
「うーん。今はいいけど仕事中にひっつかれてると邪魔かな」
アキラは好きな人の家族でも本音は好かれたいから言いたくないことだとしても容赦なく言うときは言う。それが子供相手なら尚更。
「わかった。じゃあ、邪魔しないようにする。それならいい?」
「いいよ。ありがとね。亜実ちゃん」
「アキラ君かっこいいから亜実の将来のお婿さんにしてあげようか?」
「ごめん。もうお婿さんにもらってもらったから無理だよ」
「誰のお婿さん?」
「翠さん」
後ろで恥ずかしそうに立っていた翠は目線を反らしてアキラと亜実の話が付くのを待っていた。
「翠くんのお婿さん?本当に?」
「うん、本当。だから翠さんが嫌だって思うことはできないよ」
「そっか。翠くん、ついにお婿さん見つけたんだ。わかった。亜実は愛人になってあげる」
諦めない亜実の頭に姉のげんこつが入り、「いい加減にしなさい!!」とアキラから剥がして学校の宿題をやらせ始めた。
姉の子供は一番上が勇吾で小学六年生、次が慎也で小学四年生、そして末っ子の亜実が小学一年生。
亜実は待望の女の子だったため、皆から愛されて育っている。
兄二人も亜実には過保護で亜実が怪我をしたなどと学校で聞こうものなら犯人捜しをして学校から姉が呼ばれたことが何度かある。
亜実はとても可愛らしい顔をしている。目が二重で大きく、小さな口に、利口な性格。
クラスでも人気者だし、いじめる者などいないが、それでも兄達は心配らしい。
家ではわがままばかりを言う亜実は学校では凜々しく学級委員に推薦されるぐらい賢く中立な立場に立てる、小学一年生なのだ。
「愛人もいらないよ。お兄さんは翠さんがいればいいから」
今で勉強していた亜実にアキラが言うと、「お幸せに!!」と返ってきた。
思ったより引き下がるのが早かった。
「ごめんね、アキラ君。どうやら好きな子が出来たみたいで、思ったより大丈夫みたい」
姉は事前調査でアキラの周りをうろうろするのでは?と考えていたが、話をしているとイケメン好きな亜実にも初恋の訪れがあったらしい。
相変わらずイケメンに見境はないが、それでも前ほど執着しなくなったらしい。
「お義兄さん、知ったら大変だね」
「大丈夫。知ってるから平気だよ」
いつの間にか立っていた姉の夫に翠は慌てながら、何か言おうとして居る姿に彼は笑う。
「好きな人がいるのに気付いたの僕なんだ。だからなのか傷は浅いよ」
子供達は宿題が終わると姉達の仕事を手伝う。遊びに行くのは昼からと決められているが、三人とも仕事が好きで遊びに行かず手伝いをして過ごす。
誰が仕向けたわけでもないが、英才教育されてしまっている。
「翠さんも仕事手伝ってたんですよね?」
「うん、俺も言われたわけじゃないけど、手伝ってたな」
「子供とか、欲しいですか?」
「要らない。昔からそういう願望全くなくて」
「マジですか。俺もです。自分の子供とか、ちょっと…って」
「わかる!嫌だよな?」
激しく頷き合いながら価値観が一緒というのはこんなにも気持ちがいいものだと気付きながら、果物を採りにそれぞれ畑へ向かった。
昼ご飯の時間になって帰ってくると、居間は狭くテーブルに乗る食事の数と子供のつまみ食いに姉の鉄拳が飛ぶ。
「今日は一段と賑やかよ」
母親が満面の笑みで孫の頭を撫でながら、座ってとアキラを翠の横に座らせる。
「ほら、あんたたち、用意したの渡しなさい」
姉の号令にそわそわしていた子供達が冷蔵庫にいき、箱を開けて見せた。
「結婚おめでとう、翠くん。アキラさん」
代表して勇吾が翠とアキラに箱を渡す。
「こっちが翠くんでこっちがアキラさんだよ」
似顔絵が描かれたケーキだった。ケーキは子供達がお金を出し合って買ったそうで、翠は胸が締め付けられる程、嬉しかった。
「ありがとう、アキラのことよろしくな?」
「うん、アキラさんはもう家族だよ」
「よろしくお願いします。勇吾くん、慎也くん、亜実ちゃん」
サプライズに成功した子供達は笑顔で任せて!と頷いた。
翠はスマホを取りだして写真に収めて、食べてという亜実に急かされてケーキをアキラの分を皿に置いて渡して翠も自分の分を皿に出して、アキラと声を合わせていただきます、とフォークを入れた。
「どう?」
「美味しい」
「アキラ君は?」
「とっても美味しいよ。素敵なプレゼントありがとう」
この日の帰り道、アキラと翠は子供達に何かお返しをしようと、何がいいか考えていたが決まらなくて数日どうするか悩むことになった。
日課となりつつある、手を繋いで家が見えるまで歩く。
話題は取り留めないが優しい風が流れて口角があがるような楽しいもので。
翠のお気に入りはいつしかアキラのお気に入りに。洋楽を真剣に聴いたことのなかったアキラは今では口ずさむまでになった。発音は怪しいし、意味がわかってるなんてことはないけど、それでも適当な英語は翠を笑わせて二人で歌う。
「おはようございます」
今日はアキラを先に行かせて、縁側から顔を覗かせる。
亜実が戦隊ヒーローを見ているときと同じ、いやそれ以上の目の輝きと鼻息を荒くしてアキラに抱きつく。
「イケメン!!」
コアラのようにしがみ付いて離れない亜実はアキラがたいそう気に入った様子だ。
「亜実!アキラ君はこれから仕事なんだから邪魔しないの!」
「邪魔じゃないもん。アキラ君、亜実のこと邪魔?」
「うーん。今はいいけど仕事中にひっつかれてると邪魔かな」
アキラは好きな人の家族でも本音は好かれたいから言いたくないことだとしても容赦なく言うときは言う。それが子供相手なら尚更。
「わかった。じゃあ、邪魔しないようにする。それならいい?」
「いいよ。ありがとね。亜実ちゃん」
「アキラ君かっこいいから亜実の将来のお婿さんにしてあげようか?」
「ごめん。もうお婿さんにもらってもらったから無理だよ」
「誰のお婿さん?」
「翠さん」
後ろで恥ずかしそうに立っていた翠は目線を反らしてアキラと亜実の話が付くのを待っていた。
「翠くんのお婿さん?本当に?」
「うん、本当。だから翠さんが嫌だって思うことはできないよ」
「そっか。翠くん、ついにお婿さん見つけたんだ。わかった。亜実は愛人になってあげる」
諦めない亜実の頭に姉のげんこつが入り、「いい加減にしなさい!!」とアキラから剥がして学校の宿題をやらせ始めた。
姉の子供は一番上が勇吾で小学六年生、次が慎也で小学四年生、そして末っ子の亜実が小学一年生。
亜実は待望の女の子だったため、皆から愛されて育っている。
兄二人も亜実には過保護で亜実が怪我をしたなどと学校で聞こうものなら犯人捜しをして学校から姉が呼ばれたことが何度かある。
亜実はとても可愛らしい顔をしている。目が二重で大きく、小さな口に、利口な性格。
クラスでも人気者だし、いじめる者などいないが、それでも兄達は心配らしい。
家ではわがままばかりを言う亜実は学校では凜々しく学級委員に推薦されるぐらい賢く中立な立場に立てる、小学一年生なのだ。
「愛人もいらないよ。お兄さんは翠さんがいればいいから」
今で勉強していた亜実にアキラが言うと、「お幸せに!!」と返ってきた。
思ったより引き下がるのが早かった。
「ごめんね、アキラ君。どうやら好きな子が出来たみたいで、思ったより大丈夫みたい」
姉は事前調査でアキラの周りをうろうろするのでは?と考えていたが、話をしているとイケメン好きな亜実にも初恋の訪れがあったらしい。
相変わらずイケメンに見境はないが、それでも前ほど執着しなくなったらしい。
「お義兄さん、知ったら大変だね」
「大丈夫。知ってるから平気だよ」
いつの間にか立っていた姉の夫に翠は慌てながら、何か言おうとして居る姿に彼は笑う。
「好きな人がいるのに気付いたの僕なんだ。だからなのか傷は浅いよ」
子供達は宿題が終わると姉達の仕事を手伝う。遊びに行くのは昼からと決められているが、三人とも仕事が好きで遊びに行かず手伝いをして過ごす。
誰が仕向けたわけでもないが、英才教育されてしまっている。
「翠さんも仕事手伝ってたんですよね?」
「うん、俺も言われたわけじゃないけど、手伝ってたな」
「子供とか、欲しいですか?」
「要らない。昔からそういう願望全くなくて」
「マジですか。俺もです。自分の子供とか、ちょっと…って」
「わかる!嫌だよな?」
激しく頷き合いながら価値観が一緒というのはこんなにも気持ちがいいものだと気付きながら、果物を採りにそれぞれ畑へ向かった。
昼ご飯の時間になって帰ってくると、居間は狭くテーブルに乗る食事の数と子供のつまみ食いに姉の鉄拳が飛ぶ。
「今日は一段と賑やかよ」
母親が満面の笑みで孫の頭を撫でながら、座ってとアキラを翠の横に座らせる。
「ほら、あんたたち、用意したの渡しなさい」
姉の号令にそわそわしていた子供達が冷蔵庫にいき、箱を開けて見せた。
「結婚おめでとう、翠くん。アキラさん」
代表して勇吾が翠とアキラに箱を渡す。
「こっちが翠くんでこっちがアキラさんだよ」
似顔絵が描かれたケーキだった。ケーキは子供達がお金を出し合って買ったそうで、翠は胸が締め付けられる程、嬉しかった。
「ありがとう、アキラのことよろしくな?」
「うん、アキラさんはもう家族だよ」
「よろしくお願いします。勇吾くん、慎也くん、亜実ちゃん」
サプライズに成功した子供達は笑顔で任せて!と頷いた。
翠はスマホを取りだして写真に収めて、食べてという亜実に急かされてケーキをアキラの分を皿に置いて渡して翠も自分の分を皿に出して、アキラと声を合わせていただきます、とフォークを入れた。
「どう?」
「美味しい」
「アキラ君は?」
「とっても美味しいよ。素敵なプレゼントありがとう」
この日の帰り道、アキラと翠は子供達に何かお返しをしようと、何がいいか考えていたが決まらなくて数日どうするか悩むことになった。
応援ありがとうございます!
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