19 / 61
2
5
しおりを挟む
「メイベルお疲れ様」
「ありがとう、助かったわ~」
「お疲れ様でした。また明日」
夜も深くなれば客足は落ち着く。あとは大丈夫、というマリリンの言葉に甘えメイベルが店を出たのはすでに真夜中。
歓楽街はまだまだ夜はこれからとばかりに明るいが、住民はすでに寝静まっている。街灯も最小限で道は暗い。マリリンから渡されたランプの灯りが頼りになる。
「メイベル?!」
「あれ? クロードさん?」
歩き出してすぐ、聞きなれた声に呼ばれ、顔を上げると前方から駆け足で近付いてくる大きな影がある。目の前まで来て足を止めたクロードに、メイベルは首を傾げた。
「どうしました?」
「どうしましたって……」
「あ、またルーカスの夜泣きが……」
「いや、大丈夫だ。今日は双子に挟まれて、寝てるよ」
心配から駆け出そうとしたメイベルを大きな手が制する。肩に置かれた手の温もりに、ホッと息を吐く。
「良かった……え、じゃあ何で?」
「迎えに来た」
一瞬思考が止まる。メイベルはさらに首を傾げた。
「私の?」
「いつもより遅い時間だからな」
「え、そんな。すみません、クロードさんもお疲れなのに」
誰かに迎えに来てもらうだなんて初めてじゃないだろうか。朝方帰ってきた彼は、昼には起きたはずで明日は朝一から仕事だったはず。夜は夜でゆっくりと休んでいたかっただろうに。
「構わない。人族より体力はあるからな。君こそ疲れただろう」
「私は慣れてますから」
「ありがとう、助かったわ~」
「お疲れ様でした。また明日」
夜も深くなれば客足は落ち着く。あとは大丈夫、というマリリンの言葉に甘えメイベルが店を出たのはすでに真夜中。
歓楽街はまだまだ夜はこれからとばかりに明るいが、住民はすでに寝静まっている。街灯も最小限で道は暗い。マリリンから渡されたランプの灯りが頼りになる。
「メイベル?!」
「あれ? クロードさん?」
歩き出してすぐ、聞きなれた声に呼ばれ、顔を上げると前方から駆け足で近付いてくる大きな影がある。目の前まで来て足を止めたクロードに、メイベルは首を傾げた。
「どうしました?」
「どうしましたって……」
「あ、またルーカスの夜泣きが……」
「いや、大丈夫だ。今日は双子に挟まれて、寝てるよ」
心配から駆け出そうとしたメイベルを大きな手が制する。肩に置かれた手の温もりに、ホッと息を吐く。
「良かった……え、じゃあ何で?」
「迎えに来た」
一瞬思考が止まる。メイベルはさらに首を傾げた。
「私の?」
「いつもより遅い時間だからな」
「え、そんな。すみません、クロードさんもお疲れなのに」
誰かに迎えに来てもらうだなんて初めてじゃないだろうか。朝方帰ってきた彼は、昼には起きたはずで明日は朝一から仕事だったはず。夜は夜でゆっくりと休んでいたかっただろうに。
「構わない。人族より体力はあるからな。君こそ疲れただろう」
「私は慣れてますから」
0
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説

番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない
ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。
既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。
未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。
後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。
欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。
* 作り話です
* そんなに長くしない予定です

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる