人外さんと恋をする〜狼さんは怖くない〜

鈴屋埜猫

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 メイベルの手からクロードがランプを取る。背中をそっと押され、促されるまま並んでゆっくりと歩き出す。暫しの沈黙が降りる。

「あ、そうだ。クロードさん、すみません。私もうしばらく手伝いに行こうと思ってて」

 話題を探して、まずは言わなければならないことからと口に出す。

「白猫亭か? 確か欠員が出たと……」
「はい。ネリスはあと数日で戻って来れそうなんですけど、調理補助のコリンが」
「ああ、デュラハンの。彼も発情期に?」
「ええ、初めてだそうです」
「ああ……それなら終わったとしてもすぐに戻るのは難しいかもしれないな」

 考え込む様子のクロードを見て、マリリンたちの言葉を思い出す。発情期のことはメイベルにはわからないことだらけだ。だが、同じ獣人である彼らが大変だというなら、そうなのだろう。

「マリリンさんたちも言ってましたけど……そんなに大変なんですか?」
「発情期は、亜人の通過儀礼だ。成人は年齢によって定められてはいるが、発情期が来て初めて本当の意味で大人になったと認めてもらえる。だが、身体が大人に作り変わるということだから、本人には相当な負担がかかる」

 人族に発情期はないが、子供から大人に変わる時にはいろいろな変化が起こるものだ。身体の変化と心の変化。どちらが先に起こるかも個人差があるし、どちらかが追い付かず苦しむこともよくあることだ。

「発情期って、みんな定期的にくるものなんですか?」
「そこは種族や個体差があるな。季節とか、生理現象として月に一度とか、定期的に来るものが多い。あとは特定の相手にのみしか発情しないものもいる」
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