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しおりを挟む何をどうしたら良いのか分からないままただ流されて3年と少し経って最終学年になった。
もう14歳だ。年齢と体つきが大人に近づくにつれ、殿下たちのスキンシップはどんどん酷くなっていく。
実技の後にジークラン様が私の首元を伝う汗を指ですくって舐めた。美味しいねって言われた。気持ち悪い。
殿下には彼の指を口の中に入れられた。舐めて?ってトロリとした笑顔で言われた。気持ち悪い。
ホスレティード様からは下着を贈られた。サイズがピッタリだった。気持ち悪い。
モンドリア先生はことあるごとに先生の研究室に私を呼び出す。そしていつも隣に座って肩とか手とか膝に触れてくる。気持ち悪い。
だけどやめてくださいって言っていいのかすら分からない。
入学前に、領主様から学院にいる人たちはみんな私より身分が上だから逆らっちゃだめだよって言われていたし、その領主様にも相談したいとお手紙を書いたけど、返事が来たことはない。
トト兄ちゃんが王都に来た時に街で会って相談してみようとしたけど、ろくに挨拶も済ませられないうちに殿下方がやってきて勝手に男と会っちゃダメって叱られた。
そんなとき、授業で禁術と呼ばれる特殊魔術が存在すると知った。
詳細を知ることすら禁止されている最悪の魔術。
万が一にも係らないようにするために名前だけは覚えるようにと教えられた五つの術。そのうちの一つが"魅了”というものだった。
気になった。ものすごく気になったの。詳細は当然分からなかったけど、名前からだいたいの想像はつくでしょ?
だっておかしいじゃない。
私は色の組み合わせが珍しいだけで特別優れた容姿ってわけじゃない。
アレクサンドラ様のような美の結晶とでもいえるような婚約者がいるのになぜ私に見惚れるの?
下民のものと言われて忌諱されている土魔法が一番得意な私を褒めるの?
これってまさか・・・って思うじゃない?
だけど余計に誰にも相談できなくなってしまった。無意識に私が殿下たちに魅了をかけていたらどうしよう。
だからこっそり調べたの。
半分はそうだったら良いなって思いながら。無意識にかけてしまったなら意識すれば解除することができるかもしれないから。
もう半分はそうだったら嫌だなって思いながら。だって解除して殿下たちが正気に戻ったら処刑確定じゃない?
それでも、秘密裏に平穏を取り戻せる可能性があると思ったら調べないわけにはいかなかった。
だけどまあ禁術だもん、当然なにも分からなかった。
そうして時間だけが過ぎていき、卒業まであと4ヶ月という頃、学院に魔法局の局長さんが来るという噂が広がった。
友達がいない私にまで聞こえてくるほどに学院内は騒がしかった。
魔法局はエリート中のエリートのさらにその中から選び抜かれた最高位の魔法使いだけが入れるところだから。
採用される事自体が数年に一人。
学院卒業生がストレートで入れることなんてそれこそ10年に一度あるかどうかというレベル。
そんな魔法局の局長が直接スカウトに来るのかもしれないと大騒ぎだ。
そうこうしているうちに、局長さんが学院にやってきた当日。
呼び出されたのは私だった。
学院中に声を届ける魔道具でわたしの名前が呼ばれたときも殿下方は私の側にいた。
そして何故か一緒について来て、面談室の前で止められていた。止められた殿下は権力を盾に同席を強行しようとしたけれど、面談室のドアを通り抜けることができなかった。
メズラー局長がワンドを手にしていたので結界のようなものだろうか。
「仕方ない・・・ララ、大丈夫だよ。私たちも城でメズラー局長と面会したけれど聞かれたことに答えるだけだから」という殿下に送り出されて私だけが扉をくぐる。
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