51 / 66
或いは夢のようなはじまり
50 決着
しおりを挟む
「…ふん、こんなもんだろ」
肩で息をしながらも、直樹は努めてクールに言い放った。
予断を許さぬ展開は神経を削るものでこそあったが、終わってみれば呆気ないものかもしれない。
勿論まだ終わってなどいないが、鵺の尾と対峙した時間は10秒にも満たないものであり、鵺の本体が回復できるほどの余裕はない筈だ。
…筈だった、が。
「――っ!?」
香月の息を呑む雰囲気に、そうではない現実に気付かされる。
直樹の背後に、鵺が覆い被さるように立ち上がっていた。
四肢を喪った状態の鵺が立ち上がるなど幽霊絵図そのものだが、霊的な存在である鵺であり、そこに疑問を抱いてしまうようでは思考に柔軟性が欠けているというものである。
問題は香月が予見できていなかった状況であり、明らかに直樹は後手に回ってしまっていたという事だ。
(いかん。これアウトだ…)
人を食ったような笑顔の猿ではなく、太い牙を剥いた虎でもなく、イヌ科である狸というよりはネコ科に近い顔をした鵺がこれでもかとばかりに大きく口を開いていた。
だが、その顎が直樹に襲い掛かる事はなかった。
――散れよ、花!!
最期を迎えたのは鵺の方だった。
その首筋に銀色の閃きが奔ったかと思うと、次の瞬間には鵺の頭部が胴体から滑り落ちていた。
ひと呼吸おいて胴体も頭部を追うように力なく崩れ落ち、そこで初めて直樹は危機が去った事を実感した。
「ふむ。まずまずのタイミングだったな」
そこに立っていたのは銀髪の男、玲怏だった。
飛び込んできた勢いのままに長い髪を揺らめかせ、何も持っていない右手を大きく払った。
(手刀で?)
目に焼き付いた銀色の閃きは武器によるものだと思ったが、どうやら髪の方だったらしい。
どちらにせよ直樹の目で捉えきれなかったという事は、それだけの技量差があるのだという事の証明だ。
そこに少なからず悔しさも感じてしまうが、自身と――なによりも香月の身の安全が保たれた事を素直に喜ぼうと直樹は思った。
「ナイスファイトだったわね」
玲怏が居るのであれば、当然のように黒髪の少女もそこに居る。
ゆったりとした歩みで姿を現し、控え目ながら拍手を送ってきた。
肩で息をしながらも、直樹は努めてクールに言い放った。
予断を許さぬ展開は神経を削るものでこそあったが、終わってみれば呆気ないものかもしれない。
勿論まだ終わってなどいないが、鵺の尾と対峙した時間は10秒にも満たないものであり、鵺の本体が回復できるほどの余裕はない筈だ。
…筈だった、が。
「――っ!?」
香月の息を呑む雰囲気に、そうではない現実に気付かされる。
直樹の背後に、鵺が覆い被さるように立ち上がっていた。
四肢を喪った状態の鵺が立ち上がるなど幽霊絵図そのものだが、霊的な存在である鵺であり、そこに疑問を抱いてしまうようでは思考に柔軟性が欠けているというものである。
問題は香月が予見できていなかった状況であり、明らかに直樹は後手に回ってしまっていたという事だ。
(いかん。これアウトだ…)
人を食ったような笑顔の猿ではなく、太い牙を剥いた虎でもなく、イヌ科である狸というよりはネコ科に近い顔をした鵺がこれでもかとばかりに大きく口を開いていた。
だが、その顎が直樹に襲い掛かる事はなかった。
――散れよ、花!!
最期を迎えたのは鵺の方だった。
その首筋に銀色の閃きが奔ったかと思うと、次の瞬間には鵺の頭部が胴体から滑り落ちていた。
ひと呼吸おいて胴体も頭部を追うように力なく崩れ落ち、そこで初めて直樹は危機が去った事を実感した。
「ふむ。まずまずのタイミングだったな」
そこに立っていたのは銀髪の男、玲怏だった。
飛び込んできた勢いのままに長い髪を揺らめかせ、何も持っていない右手を大きく払った。
(手刀で?)
目に焼き付いた銀色の閃きは武器によるものだと思ったが、どうやら髪の方だったらしい。
どちらにせよ直樹の目で捉えきれなかったという事は、それだけの技量差があるのだという事の証明だ。
そこに少なからず悔しさも感じてしまうが、自身と――なによりも香月の身の安全が保たれた事を素直に喜ぼうと直樹は思った。
「ナイスファイトだったわね」
玲怏が居るのであれば、当然のように黒髪の少女もそこに居る。
ゆったりとした歩みで姿を現し、控え目ながら拍手を送ってきた。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【R18】幼馴染の男3人にノリで乳首当てゲームされて思わず感じてしまい、次々と告白されて予想外の展開に…【短縮版】
うすい
恋愛
【ストーリー】
幼馴染の男3人と久しぶりに飲みに集まったななか。自分だけ異性であることを意識しないくらい仲がよく、久しぶりに4人で集まれたことを嬉しく思っていた。
そんな中、幼馴染のうちの1人が乳首当てゲームにハマっていると言い出し、ななか以外の3人が実際にゲームをして盛り上がる。
3人のやり取りを微笑ましく眺めるななかだったが、自分も参加させられ、思わず感じてしまい―――。
さらにその後、幼馴染たちから次々と衝撃の事実を伝えられ、事態は思わぬ方向に発展していく。
【登場人物】
・ななか
広告マーケターとして働く新社会人。純粋で素直だが流されやすい。大学時代に一度だけ彼氏がいたが、身体の相性が微妙で別れた。
・かつや
不動産の営業マンとして働く新社会人。社交的な性格で男女問わず友達が多い。ななかと同じ大学出身。
・よしひこ
飲食店経営者。クールで口数が少ない。頭も顔も要領もいいため学生時代はモテた。短期留学経験者。
・しんじ
工場勤務の社会人。控えめな性格だがしっかり者。みんなよりも社会人歴が長い。最近同棲中の彼女と別れた。
【注意】
※一度全作品を削除されてしまったため、本番シーンはカットしての投稿となります。
そのため読みにくい点や把握しにくい点が多いかと思いますがご了承ください。
フルバージョンはpixivやFantiaで配信させていただいております。
※男数人で女を取り合うなど、くっさい乙女ゲーム感満載です。
※フィクションとしてお楽しみいただきますようお願い申し上げます。
【R18】やがて犯される病
開き茄子(あきなす)
恋愛
『凌辱モノ』をテーマにした短編連作の男性向け18禁小説です。
女の子が男にレイプされたり凌辱されたりして可哀そうな目にあいます。
女の子側に救いのない話がメインとなるので、とにかく可哀そうでエロい話が好きな人向けです。
※ノクターンノベルスとpixivにも掲載しております。
内容に違いはありませんので、お好きなサイトでご覧下さい。
また、新シリーズとしてファンタジーものの長編小説(エロ)を企画中です。
更新準備が整いましたらこちらとTwitterでご報告させていただきます。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
完結【R―18】様々な情事 短編集
秋刀魚妹子
恋愛
本作品は、過度な性的描写が有ります。 というか、性的描写しか有りません。
タイトルのお品書きにて、シチュエーションとジャンルが分かります。
好みで無いシチュエーションやジャンルを踏まないようご注意下さい。
基本的に、短編集なので登場人物やストーリーは繋がっておりません。
同じ名前、同じ容姿でも関係無い場合があります。
※ このキャラの情事が読みたいと要望の感想を頂いた場合は、同じキャラが登場する可能性があります。
※ 更新は不定期です。
それでは、楽しんで頂けたら幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる