121 / 309
第三部 ルートン王国交換留学編
水流がフェリシー先生を直撃、元隣国王女が骨折したことが判りました
しおりを挟む
大量の水は私の制御できる量を超えてしまったのだ。
水滴を出そうとしたところにシルビアが現れて、私は水を出し始めていたことを忘れていたのだ。更にシルビアがアドの余計な事を言うから、私の怒りが水の量を知らない間に増やしていて、気づいたら私の制御できる範囲を超えていたのだ。
すさまじい大量の水が私たちの真上から襲ってきた。
バケツをひっくり返した……というより風呂桶の水がひっくり返った、いや違う、巨大なプールをひっくり返したような大量の水が私たちの頭の上から叩きつけられたのだ。
一瞬息ができなくて、私は死ぬかと思った。
巨大な水流にみんな流されたのだ。
でも、水はずぶ濡れの私達を残してすぐに屋上から流れ落ちたのだ。
水死しなくてよかった。
一瞬の大洪水の跡、私は何とか立ち上がった。
「ゲホゲホ、皆大丈夫?」
「俺はなんとかな」
「俺も」
男たちが立ち上がる。
皆完全に濡れネズミだった。
「皆、ずぶ濡れで、大変じゃない」
「ああ、フランはこれ以上やらなくていいから」
私が巨大な焚火をしようとして慌ててメラニーに止められた。
「えっ、でも」
「今度は校舎を燃やす気?」
「えっ、いや、そこまでは」
メラニーに言われて、私は慌てて火の玉をひっこめる。
そうだ。私がやると確実に校舎が燃えてしまう所だった。
私は何も無くてほっとした。
「風魔術得意な人は温風出して周りの人を乾かして。オーレリアンとエドガルドとガスペルは皆いるか点呼を、テオドラとルフィナはけが人の治療をして」
メラニーがてきぱきと指示をしだした。
屋上にフェンスがあったので、外に弾き飛ばされる者が居なくて本当に良かった。
「クラスの全員の無事を確認したぞ」
「けが人はほとんどいないわ」
オーレリアン達が、報告してくれた。
「ちょっとフラン、あんたも悲惨よ」
メラニーが乾かしてくれる。
「あっ、有難う」
私はみんなが無事でほっとしていた。
私は何かを忘れていた。誰か足りない人がいることを……
「しかし、本当にフランは規格外だよな」
「あんな巨大な水塊初めて見たよ」
「本当に死ぬかと思ったわ」
皆、口々に言い出した。
「だって、シルビアが変なこと言うから」
「そういえば殿下は?」
メラニーが聞いてきた。
「あれ、確かさっきまでいたよね?」
「どこ行ったんだろう?」
私達はきょろきょろした。
そういえば階段の扉が開いていた。
ひょっとしてそこから落ちた?
大丈夫だろうか?
私は、慌てて下を見に行こうとした。
そこに全身濡れ鼠のおばさんがぬっと現れたのだ。
誰だ? これは?
私は一瞬誰か判らなかった。
「フランソワーズさん」
地獄からの使者の声もかくやというガラガラ声がした。
この声は?
私はその女性をまじまじと見て、固まってしまったのだ。
これはやばい奴だ。何故、この先生がここにいるのだろう?
「あなたはいったい何をしてくれたのですか」
そこにはフェリシー先生の罵声が響いたのだった…………
それからが大変だった。
フェリシー先生の罵声が延々二時間続いたのだ。
叱責の中で、この先生がここにいた理由が分かった。
私の声がしたので、心配して先生は見に来たというのだ。本当に余計な事をしてくれた……先生が聞けばまた一時間余分に怒りそうなことを私は思わず考えてしまった。
そして、階段を上っている途中で水の大洪水の直撃を受けて、下まで落ちていたそうだ。
私の事なんて見に来なければ良かったのに!
そんなことは本人の前では言えないけれど。
その叱責の間に飛んで来た騎士たちやほかの先生たちは、これ以上先生の機嫌を損ねないために、静かに去っていった。
そして、嬉しいことに……決して喜んではいけないんだけど、怒りのあまり乾かそうと言い出せなかった濡れ鼠で説教した先生は風邪でしばし寝込んでくれた。
でも、休校と喜んだ私がばかだった。
私達は宿題で一万字の反省文を書かされたのだ。それなら余程授業の方がましだった。なおかつ私だけ特別補講が課せられたのだ。
もう踏んだり蹴ったりだった。
屋上は何も無かったからまだ被害は少なかったけれど、階下はそれ以上に悲惨な状況になっていたのだ。
階段から水と一緒に落ちたシルビアは何故か怪我一つしなかったそうだ。ソニアはシルビアの下敷きになったのか骨折したそうだ。
本当にシルビアに付き合わされただけなのに、可哀そうなことをした。
これで演劇での私の魔術の使用禁止が決まった。
本番でこれをやると講堂内の人が水死しかねないから良かったけれど。
罰として校舎中の水を拭くのがまた大変だった……
私はしばらくは魔術を使うのは止めようと心に誓ったのだった。
水滴を出そうとしたところにシルビアが現れて、私は水を出し始めていたことを忘れていたのだ。更にシルビアがアドの余計な事を言うから、私の怒りが水の量を知らない間に増やしていて、気づいたら私の制御できる範囲を超えていたのだ。
すさまじい大量の水が私たちの真上から襲ってきた。
バケツをひっくり返した……というより風呂桶の水がひっくり返った、いや違う、巨大なプールをひっくり返したような大量の水が私たちの頭の上から叩きつけられたのだ。
一瞬息ができなくて、私は死ぬかと思った。
巨大な水流にみんな流されたのだ。
でも、水はずぶ濡れの私達を残してすぐに屋上から流れ落ちたのだ。
水死しなくてよかった。
一瞬の大洪水の跡、私は何とか立ち上がった。
「ゲホゲホ、皆大丈夫?」
「俺はなんとかな」
「俺も」
男たちが立ち上がる。
皆完全に濡れネズミだった。
「皆、ずぶ濡れで、大変じゃない」
「ああ、フランはこれ以上やらなくていいから」
私が巨大な焚火をしようとして慌ててメラニーに止められた。
「えっ、でも」
「今度は校舎を燃やす気?」
「えっ、いや、そこまでは」
メラニーに言われて、私は慌てて火の玉をひっこめる。
そうだ。私がやると確実に校舎が燃えてしまう所だった。
私は何も無くてほっとした。
「風魔術得意な人は温風出して周りの人を乾かして。オーレリアンとエドガルドとガスペルは皆いるか点呼を、テオドラとルフィナはけが人の治療をして」
メラニーがてきぱきと指示をしだした。
屋上にフェンスがあったので、外に弾き飛ばされる者が居なくて本当に良かった。
「クラスの全員の無事を確認したぞ」
「けが人はほとんどいないわ」
オーレリアン達が、報告してくれた。
「ちょっとフラン、あんたも悲惨よ」
メラニーが乾かしてくれる。
「あっ、有難う」
私はみんなが無事でほっとしていた。
私は何かを忘れていた。誰か足りない人がいることを……
「しかし、本当にフランは規格外だよな」
「あんな巨大な水塊初めて見たよ」
「本当に死ぬかと思ったわ」
皆、口々に言い出した。
「だって、シルビアが変なこと言うから」
「そういえば殿下は?」
メラニーが聞いてきた。
「あれ、確かさっきまでいたよね?」
「どこ行ったんだろう?」
私達はきょろきょろした。
そういえば階段の扉が開いていた。
ひょっとしてそこから落ちた?
大丈夫だろうか?
私は、慌てて下を見に行こうとした。
そこに全身濡れ鼠のおばさんがぬっと現れたのだ。
誰だ? これは?
私は一瞬誰か判らなかった。
「フランソワーズさん」
地獄からの使者の声もかくやというガラガラ声がした。
この声は?
私はその女性をまじまじと見て、固まってしまったのだ。
これはやばい奴だ。何故、この先生がここにいるのだろう?
「あなたはいったい何をしてくれたのですか」
そこにはフェリシー先生の罵声が響いたのだった…………
それからが大変だった。
フェリシー先生の罵声が延々二時間続いたのだ。
叱責の中で、この先生がここにいた理由が分かった。
私の声がしたので、心配して先生は見に来たというのだ。本当に余計な事をしてくれた……先生が聞けばまた一時間余分に怒りそうなことを私は思わず考えてしまった。
そして、階段を上っている途中で水の大洪水の直撃を受けて、下まで落ちていたそうだ。
私の事なんて見に来なければ良かったのに!
そんなことは本人の前では言えないけれど。
その叱責の間に飛んで来た騎士たちやほかの先生たちは、これ以上先生の機嫌を損ねないために、静かに去っていった。
そして、嬉しいことに……決して喜んではいけないんだけど、怒りのあまり乾かそうと言い出せなかった濡れ鼠で説教した先生は風邪でしばし寝込んでくれた。
でも、休校と喜んだ私がばかだった。
私達は宿題で一万字の反省文を書かされたのだ。それなら余程授業の方がましだった。なおかつ私だけ特別補講が課せられたのだ。
もう踏んだり蹴ったりだった。
屋上は何も無かったからまだ被害は少なかったけれど、階下はそれ以上に悲惨な状況になっていたのだ。
階段から水と一緒に落ちたシルビアは何故か怪我一つしなかったそうだ。ソニアはシルビアの下敷きになったのか骨折したそうだ。
本当にシルビアに付き合わされただけなのに、可哀そうなことをした。
これで演劇での私の魔術の使用禁止が決まった。
本番でこれをやると講堂内の人が水死しかねないから良かったけれど。
罰として校舎中の水を拭くのがまた大変だった……
私はしばらくは魔術を使うのは止めようと心に誓ったのだった。
1
お気に入りに追加
4,165
あなたにおすすめの小説
【完結】薔薇の花をあなたに贈ります
彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。
目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。
ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。
たが、それに違和感を抱くようになる。
ロベルト殿下視点がおもになります。
前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!!
11話完結です。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
【完】前世で種を疑われて処刑されたので、今世では全力で回避します。
112
恋愛
エリザベスは皇太子殿下の子を身籠った。産まれてくる我が子を待ち望んだ。だがある時、殿下に他の男と密通したと疑われ、弁解も虚しく即日処刑された。二十歳の春の事だった。
目覚めると、時を遡っていた。時を遡った以上、自分はやり直しの機会を与えられたのだと思った。皇太子殿下の妃に選ばれ、結ばれ、子を宿したのが運の尽きだった。
死にたくない。あんな最期になりたくない。
そんな未来に決してならないように、生きようと心に決めた。
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。