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第三章 無計画な告白
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そうして即位式が行われ、オールディーに新女王が誕生した。式典にはなかなかお目にかかれないオールディーの大聖女まで参加していて、市民からも歓迎の声があふれていた。
オールディーの周辺国であるヒューゲン、ブルテン、ロマーノ、エスパルに加え、南方や海上の小国からも参加者がおり、とても立派な即位式であった。
即位式後の夜会ではここぞとばかりになかなか出会えない縁の薄い国々ともつながりをもつ。どの国の大使も王族もヨーゼフが扱う五か国語の内のどれかを使うことができるので会話に支障はない。
隣ではキャサリンが大使のエスコートする夫人たちと会話を盛り上げている。キャサリンはロマーノ語はできないようだが、それでも四か国語を操れる。
こういった場にキャサリンのような女性が同席してくれることがどれほど心強いことか。ヨーゼフの胸の内にキャサリンへの信頼の情が湧くのを感じた。
この日のキャサリンは髪をまとめてうなじを見せる、オフショルダーの赤いドレスだ。彼女の好みらしい、美しいドレープが入っており、首にはガーネットのネックレスが飾られている。
きつめの顔つきには驚くほど赤が似合った。
一曲ぐらいダンスを踊らなくては、とファーストダンスにキャサリンを誘おうとしたその時だった。
「ヨーゼフ様!」
現れたのは、もちろん、デジレ王女だ。王女は白いドレスにベルトのような大きな赤いリボンを背中にあしらっていた。赤はおそらくヨーゼフを意識したものだろう。オールディーの王族は外交がかかわる場では白か青のドレスを着るので、赤はありえないのだ。
20歳の女性であることを考えるといささか可愛らしい意匠だが、デジレの顔立ちが幼いのでよく似合ってしまっている。
「やっと見つけましたわ!…まあ、あなた。」
デジレは全身赤で身を包んだキャサリンを睨みつけた。キャサリンはお揃いの赤い扇子で口元を隠す。
「政略結婚の愛されていない妻なのに、そのように露骨にヨーゼフ様の色をまとうのはいかがなものかしら。」
公の場で直接的にキャサリンに嫌味を言ってくるのは一国の王女としてはありえない。しかし、やってしまうのがデジレ王女だ。すべて妄想なのに真実にかすめているのが恐ろしい。
「ヨーゼフ様もそのような妻を持ってお恥ずかしいことでしょうね。早く離縁して国に帰ることをお勧めするわ。」
さすがに聞き捨てならないとヨーゼフが反論しようとするのをキャサリンがやんわりと制す。
「デジレ王女殿下につきましてはご機嫌麗しゅう。このような女王殿下が即位された素晴らしい日にとんちんかんな余興を用意されるなど、私には真似できませんわ。さすがは一国の姫でいらっしゃいますこと。」
「な…!」
「今回、私が着用していますドレスはすべて旦那様がご用意されたものです。そこに私の希望は入っていませんの。愛されていない妻ですが、旦那様の希望には答えないといけませんもの。」
「そうよ!愛されていない自覚があるなら、さっさと離縁しなさいよ!」
「私たちの結婚は国同士の同盟が絡むものです。一国の王女であるならこの重要性がもちろんわかりますよね。」
「そんなの!ヒューゲンの力をあてにした軍事同盟だって言うじゃない!あなたの国が弱いのがいけないのよ!」
当然わかっているわ、といった様子でデジレは声高に主張するが、それはこの場では最も言ってはいけないことだった。ブルテンの大使も参加しているこの場では。
さっと視線を走らせたヨーゼフはすぐに視界にベネディクトをとらえた。その表情からは何も読み取れない。
一方のキャサリンもデジレの言葉を聞いて何も言わない。恐らく、この場での適切な返しを考えあぐねている。それはそうだ。今後の彼女の発言によってオールディーとブルテンの間に亀裂が入りかねない。
コンスタンス新女王はどこで何をしているんだ?あ、ダンスか。王配殿下とダンスを踊っている。
周囲の大使たちも会話を聞き、ざわつき始める。
「聞いたわ!あなたの前の婚約者、ポートレット帝国との戦で戦死したんですってね!それで行き遅れてヨーゼフ様の妻に収まったのね!ヨーゼフ様が可哀そうだわ!こんな行き遅れをもらうことになって!」
キャサリンを年増のように扱うが、彼女はデジレと一つしか違わない。
「全部あなたの国の兵が弱いのがいけないのよ!オールディーの誇る騎士団ならそのような下手はうたないわ!なさけないことね!」
この王女はブルテン海軍が世界最強と呼ばれていることを知らないのか?それを結界に守られているオールディーの騎士団と比較して馬鹿にするだなんて…!
ざわつきが最高潮に達したその時、バチン!という音をさせてキャサリンが扇子を閉じた。
オールディーの周辺国であるヒューゲン、ブルテン、ロマーノ、エスパルに加え、南方や海上の小国からも参加者がおり、とても立派な即位式であった。
即位式後の夜会ではここぞとばかりになかなか出会えない縁の薄い国々ともつながりをもつ。どの国の大使も王族もヨーゼフが扱う五か国語の内のどれかを使うことができるので会話に支障はない。
隣ではキャサリンが大使のエスコートする夫人たちと会話を盛り上げている。キャサリンはロマーノ語はできないようだが、それでも四か国語を操れる。
こういった場にキャサリンのような女性が同席してくれることがどれほど心強いことか。ヨーゼフの胸の内にキャサリンへの信頼の情が湧くのを感じた。
この日のキャサリンは髪をまとめてうなじを見せる、オフショルダーの赤いドレスだ。彼女の好みらしい、美しいドレープが入っており、首にはガーネットのネックレスが飾られている。
きつめの顔つきには驚くほど赤が似合った。
一曲ぐらいダンスを踊らなくては、とファーストダンスにキャサリンを誘おうとしたその時だった。
「ヨーゼフ様!」
現れたのは、もちろん、デジレ王女だ。王女は白いドレスにベルトのような大きな赤いリボンを背中にあしらっていた。赤はおそらくヨーゼフを意識したものだろう。オールディーの王族は外交がかかわる場では白か青のドレスを着るので、赤はありえないのだ。
20歳の女性であることを考えるといささか可愛らしい意匠だが、デジレの顔立ちが幼いのでよく似合ってしまっている。
「やっと見つけましたわ!…まあ、あなた。」
デジレは全身赤で身を包んだキャサリンを睨みつけた。キャサリンはお揃いの赤い扇子で口元を隠す。
「政略結婚の愛されていない妻なのに、そのように露骨にヨーゼフ様の色をまとうのはいかがなものかしら。」
公の場で直接的にキャサリンに嫌味を言ってくるのは一国の王女としてはありえない。しかし、やってしまうのがデジレ王女だ。すべて妄想なのに真実にかすめているのが恐ろしい。
「ヨーゼフ様もそのような妻を持ってお恥ずかしいことでしょうね。早く離縁して国に帰ることをお勧めするわ。」
さすがに聞き捨てならないとヨーゼフが反論しようとするのをキャサリンがやんわりと制す。
「デジレ王女殿下につきましてはご機嫌麗しゅう。このような女王殿下が即位された素晴らしい日にとんちんかんな余興を用意されるなど、私には真似できませんわ。さすがは一国の姫でいらっしゃいますこと。」
「な…!」
「今回、私が着用していますドレスはすべて旦那様がご用意されたものです。そこに私の希望は入っていませんの。愛されていない妻ですが、旦那様の希望には答えないといけませんもの。」
「そうよ!愛されていない自覚があるなら、さっさと離縁しなさいよ!」
「私たちの結婚は国同士の同盟が絡むものです。一国の王女であるならこの重要性がもちろんわかりますよね。」
「そんなの!ヒューゲンの力をあてにした軍事同盟だって言うじゃない!あなたの国が弱いのがいけないのよ!」
当然わかっているわ、といった様子でデジレは声高に主張するが、それはこの場では最も言ってはいけないことだった。ブルテンの大使も参加しているこの場では。
さっと視線を走らせたヨーゼフはすぐに視界にベネディクトをとらえた。その表情からは何も読み取れない。
一方のキャサリンもデジレの言葉を聞いて何も言わない。恐らく、この場での適切な返しを考えあぐねている。それはそうだ。今後の彼女の発言によってオールディーとブルテンの間に亀裂が入りかねない。
コンスタンス新女王はどこで何をしているんだ?あ、ダンスか。王配殿下とダンスを踊っている。
周囲の大使たちも会話を聞き、ざわつき始める。
「聞いたわ!あなたの前の婚約者、ポートレット帝国との戦で戦死したんですってね!それで行き遅れてヨーゼフ様の妻に収まったのね!ヨーゼフ様が可哀そうだわ!こんな行き遅れをもらうことになって!」
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「全部あなたの国の兵が弱いのがいけないのよ!オールディーの誇る騎士団ならそのような下手はうたないわ!なさけないことね!」
この王女はブルテン海軍が世界最強と呼ばれていることを知らないのか?それを結界に守られているオールディーの騎士団と比較して馬鹿にするだなんて…!
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