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第二章 無計画な白い結婚
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最初の内は、それはもう楽しかった。マリアの住む家は二人の愛の巣である。感じ始めていたわずかな違和感は、ヨーゼフがマリアと体を繋げるようになると霧散した。
ヨーゼフは初めての経験に夢中になり、時間が空けばダミアンに無理を言ってマリアの下へと通った。
ヨーゼフの愛人騒動に関して諦めた国王夫妻は避妊を徹底することだけ指示をだし、全てを黙認した。
実際、ヨーゼフは本格的に公務に携わるようになるとメキメキと外交で頭角を現した。各国の大使たちと異国語で流ちょうに話し、交渉の席にも参加して顔を広げた。そうして三年も経つと、使節団のリーダーを任されて異国に派遣されるようなこともあるようになった。
そんなある日のことである。
「側近を辞させていただきます。」
長年、そばで仕えてくれていたダミアンが辞職を申し出てきたのである。
「だ、ダミアン、なぜ?」
この時、ヨーゼフは21歳になっていた。
「結婚を二月後に控えていますから。結婚後は相手の家に婿入りし、領地で働くことになっております。」
「結婚?待て、ダミアンが婚約したのは…。」
「三年前です。ご報告したのをお忘れですか?」
三年前と言うとちょうど学園を卒業したころだ。マリアの住処を整えるためにバタバタとしていたころだろう。…いろいろとダミアンに頼んでいたのでダミアンも忙しかったはずだが。
「相手は?」
「ビアンカ・アスマン辺境伯令嬢です。」
ビアンカ・アスマン…、ヨーゼフの脳裏に学園での日々がよみがえる。二学年年下の、凛とした令嬢だ。彼女がグループ課題に上手くマリアを巻き込んでくれなかったせいでマリアは留年したとも言える。
「あの令嬢か…。しかし、なぜ婿入りを?ダミアンなら継ぐ家はなくとも自力で爵位を取れたはずだ。」
「アスマン辺境伯家は軍事に長けた家でありますが、その代わり政治に疎いのです。外交の経験もあり、内政にも詳しい婿を迎えて、後々はお持ちの子爵位を継がせたいと。」
「なぜ、私の側近でありながらそのような縁談を受けたんだ…!」
声を荒げたヨーゼフにダミアンは悲しそうな顔をする。
「言わねば、わかりませんか?私が婚約したことを忘れていたことが答えです。」
「それは…。」
「最初のきっかけは、お嬢様のことです。ヨーゼフ様は私の再三の忠告を無視し、結局はお嬢様を愛人として外で囲うことになりましたね。また、その準備のほとんどを私に命じました。屋敷に通うための馬車も私に手配させ、どんなに忙しくとも、時間を作って会いに行く。その間の執務は私に任せて。」
「私しかできない執務は終わらせている!」
「ええ。ですが、ヨーゼフ様が忙しいということは側近の私も同様に忙しいのです。クラウスが辞めた後、あなたは新しい側近を入れる、ということをしませんでした。つまり、私の負担のことは、何も考えていなかったのでしょう。私にほとんど休みがなく、婚約者にわざわざ城まで来てもらっていた、この気持ちを考えてくれたことはないのです。」
「休みが欲しいと言えばよかったではないか!」
「言いましたよ。」
ヨーゼフの記憶にはなかった。
「しかし、あなたは私が休みをとっているはずの日にも仕事を回してきました。私が休みをとったということを認識していなかったのでしょう。結局、部下に呼び戻され、休日は返上です。」
「…側近を増やせばいいのか?」
「今後はそうしてください。」
「…お前は私の友ではなかったのか?」
ダミアンの顔はますます悲しそうに歪む。
「あなたの私への態度は友に対するそれではありません。」
そうしてダミアンはヨーゼフのもとを去って行った。執務室の窓から見えた去って行くダミアンは大きな花束を抱えていた。彼の部下たちが餞別に渡したのだろう。
歩いていく彼の行く手から、栗色の長い髪の令嬢が歩いてくる。令嬢はダミアンに抱き着くとこちらを一瞬睨みつけてから、二人で腕を組んで歩いて行った。
心なしか、ダミアンの足取りも軽くなり、二人が笑いあっているのが遠くからでもわかる。仲のいい婚約者同士なのだろう。
はたや、自分とマリアはどうだろう。あのような関係を気付けているのだろうか。
マリアが貴族令嬢のままだったとして、あのように信頼しあう関係になれたのだろうか。
それを教えてくれそうなダミアンはもうここにはいない。
ヨーゼフは初めての経験に夢中になり、時間が空けばダミアンに無理を言ってマリアの下へと通った。
ヨーゼフの愛人騒動に関して諦めた国王夫妻は避妊を徹底することだけ指示をだし、全てを黙認した。
実際、ヨーゼフは本格的に公務に携わるようになるとメキメキと外交で頭角を現した。各国の大使たちと異国語で流ちょうに話し、交渉の席にも参加して顔を広げた。そうして三年も経つと、使節団のリーダーを任されて異国に派遣されるようなこともあるようになった。
そんなある日のことである。
「側近を辞させていただきます。」
長年、そばで仕えてくれていたダミアンが辞職を申し出てきたのである。
「だ、ダミアン、なぜ?」
この時、ヨーゼフは21歳になっていた。
「結婚を二月後に控えていますから。結婚後は相手の家に婿入りし、領地で働くことになっております。」
「結婚?待て、ダミアンが婚約したのは…。」
「三年前です。ご報告したのをお忘れですか?」
三年前と言うとちょうど学園を卒業したころだ。マリアの住処を整えるためにバタバタとしていたころだろう。…いろいろとダミアンに頼んでいたのでダミアンも忙しかったはずだが。
「相手は?」
「ビアンカ・アスマン辺境伯令嬢です。」
ビアンカ・アスマン…、ヨーゼフの脳裏に学園での日々がよみがえる。二学年年下の、凛とした令嬢だ。彼女がグループ課題に上手くマリアを巻き込んでくれなかったせいでマリアは留年したとも言える。
「あの令嬢か…。しかし、なぜ婿入りを?ダミアンなら継ぐ家はなくとも自力で爵位を取れたはずだ。」
「アスマン辺境伯家は軍事に長けた家でありますが、その代わり政治に疎いのです。外交の経験もあり、内政にも詳しい婿を迎えて、後々はお持ちの子爵位を継がせたいと。」
「なぜ、私の側近でありながらそのような縁談を受けたんだ…!」
声を荒げたヨーゼフにダミアンは悲しそうな顔をする。
「言わねば、わかりませんか?私が婚約したことを忘れていたことが答えです。」
「それは…。」
「最初のきっかけは、お嬢様のことです。ヨーゼフ様は私の再三の忠告を無視し、結局はお嬢様を愛人として外で囲うことになりましたね。また、その準備のほとんどを私に命じました。屋敷に通うための馬車も私に手配させ、どんなに忙しくとも、時間を作って会いに行く。その間の執務は私に任せて。」
「私しかできない執務は終わらせている!」
「ええ。ですが、ヨーゼフ様が忙しいということは側近の私も同様に忙しいのです。クラウスが辞めた後、あなたは新しい側近を入れる、ということをしませんでした。つまり、私の負担のことは、何も考えていなかったのでしょう。私にほとんど休みがなく、婚約者にわざわざ城まで来てもらっていた、この気持ちを考えてくれたことはないのです。」
「休みが欲しいと言えばよかったではないか!」
「言いましたよ。」
ヨーゼフの記憶にはなかった。
「しかし、あなたは私が休みをとっているはずの日にも仕事を回してきました。私が休みをとったということを認識していなかったのでしょう。結局、部下に呼び戻され、休日は返上です。」
「…側近を増やせばいいのか?」
「今後はそうしてください。」
「…お前は私の友ではなかったのか?」
ダミアンの顔はますます悲しそうに歪む。
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はたや、自分とマリアはどうだろう。あのような関係を気付けているのだろうか。
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