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しおりを挟むその日は朝からとても冷え込んでいた。
大陸から寒波がやって来て、例年よりも遥かに下回る気温だった。
そんな中、じーちゃんの葬儀はしめやかに営まれた。
じーちゃんの訃報を知らせを受けたのは、俺とノエルが施設を訪れてから何日か経った後だった。高齢で体が弱っているにせよ、あんなに元気だったじーちゃんが亡くなるなんて信じられなかった。
知らせを聞いて慌てて家族で駆けつけた時は、すでに亡くなった後だった。石田さんが言うには、前の晩までいつもと変わらず元気でいたそうだ。朝、部屋に行くと、普段ならすでに起きている時間なのに、じーちゃんは寝たままだった。声をかけたがしばらく待っても反応せず、体を触ってみたらすでに冷たくなっていたそうだ。じーちゃんは寝たまま逝ったらしい。死に顔はとても穏やかだった。枕元にはあのラジオが置かれていた。そしてじーちゃんの手には、澄子さんからの手紙があった。
あれからずっと、肌身離さず寝る前に読んだりしていたんだろう。
ラジオを持っていった日、俺はじーちゃんの施設に泊まった。夜はまた石田さんと食事をしながら話をした。ノエルを紹介した時に感じたとおり、石田さんはノエルの事がわかっていたみたいだ。
「君たち見てるとさ、運命って本当に緻密で、そして奇跡的に絡み合っているるんだな~って思う。」
石田さんはビールをぐいっと飲みながら言った。
「石田さん、ノエルを見た時、何か見えてたんじゃないですか?」
俺が聞くと、石田さんはフフフと笑った。
「ノエルちゃんの後ろに澄子さんがいたよ。」
「やっぱりそうか。」
「おじいちゃんには辛い知らせになったね…。」
「俺…罪悪感しかないです。もっと早く動けていたら、もしかしたら間に合ってたかもしれないし…。」
「それは乃海君のせいじゃない。やっぱりね、どうやってもダメな事ってあるよ。そうなる運命だったのかもしれない。でもさ、澄子さんのメッセージはおじいちゃんにちゃんと伝わったじゃない。君のおかげだよ。おじいちゃん、君の事、すごく感謝してると思う。」
「そうかな…。」
「そうだよ!君がいなきゃ、澄子さんのメッセージすら受け取ることが出来なかったんだから!」
石田さんの言葉に俺は救われた。
「さ、食べよ、食べよ!ここの焼き鳥、うまいぜー!」
その夜は焼き鳥と唐揚げと焼おにぎりとチョレギサラダを食べた。施設の近くに旨い焼き鳥屋があって、そこから調達してきた。ここの焼おにぎりは、焼き鳥のタレがたっぷり染み込んでいてとにかくうまい。旭がいたら1ダースくらい、あっという間に食べてしまいそうだ。
「この豚バラ最高ですね!」
「だろ!俺もそろそろ塩分を気にしなきゃいけないお年頃なんだけどね…。こんなのあったら何本でも食べちゃうよな~!」
石田さんは苦笑いした。
「澄子さん、じーちゃんと約束できたのかな…?」
「どうだろね?想いが強ければ、出来るんじゃないかな。」
「澄子さん、どんな感じでした?」
「ニコニコしながら君らを見てたよ。俺におじぎもしてくれた。」
「そっかー、見てくれているんですね。じゃ、変な事出来ないな…。」
「何?変な事したの?ノエルちゃんに?」
石田さんはニヤニヤしながら言った。
「いや、そんなことしてないですよっ!まだ…。」
石田さんは本当かね?と訝しげな目で俺を見ながらビールを飲んだ。
「澄子さん、もうすぐ上に行くんじゃないかな。そんな感じだった。心残りが無くなったからかな。お届け物は無事に届いたようだし。」
「そうなんですね。そういえば、もうすぐ四十九日みたいだしな。」
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