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6 全く性格の違う菜々子と夏子が入れ替わった! 会社は? 夫婦生活は? どうすればいいのよ~!

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「社長! いますか?」
ノックしてみたが何の反応も無い。扉を開けてみると、ソファにだらしなく横になって寝ている社長がいた。一企業の社長ともあろう人間が、こんな姿を社員にさらけ出していいの? うちの尚之だったらありえない事だ…。私の射るような視線に気付いたのか、社長は目を覚ますと飛び上がって驚いた。

「す、す、す、鈴原さんっ! 体の方は大丈夫なの?」
「…昼寝ですか…。いい御身分ですね…。」
「ごめんなさい…。」
社長ともある人がそんなに簡単に目下の者に向かって謝っていいのかね? 
「ちょっと社長! 前に私がもらった商品、他にもありますか?」
「え? もしかして、ボツになったやつ?」
「そうそう!」

 社長は奥の部屋から大きな段ボール箱を持ってきた。私はウキウキして、さっそく中を開けて見てみた。思った通り、こいつは宝を隠していやがった!
「鈴原さんが興味を持ってくれるなんて嬉しいなぁ。」
社長はニコニコしながら私にお茶を入れてくれた。それもその中にあったハーブティーだ。
「…美味しい! これ、ミントが入っていて、頭がスッキリしますね!」
「でしょ! 眠たくなった時とかいいよね。」
これ…パッケージは劇的にダサいけど、私が通っている高級エステサロンで出してくれるお茶より美味しいじゃない…。
「社長、こんなの、どこで見つけてきたんですか?」
「それはね…」

 社長は幼いころからいろんな所へ旅行に行き、その土地の名産品などを食べていた。昔ながらの手間がかかる製法で作った物や、オーガニックの物、それらを好んで食べ歩きをした。会長が金に糸目を付けなかったから、彼は幼いころから本物の味を理解できるようになっていた。大人になってからは、国内外問わず、そうした物を探すようになったという。ちなみにそのハーブティーは、県内の農家が作っているとの事だ。

「へえ…社長の嗅覚すごいですね! 人は見かけによらないな…。」
「そ、そっかな。」
社長は素直に誉め言葉と受け取って喜んでいた。
「これ、うちのスーパーで売らないんですか?」
「僕はそのつもりだったんだけど、親父からダメ出しされたんだ。」
「試しに売ってみればいいのに! これだけの品質なんだから!」
「一度売ったんだよ。でも、全く売れなかった。見向きもされなくてさ…。やっぱり親父は正しかったんだ…。」
「…あんたさ、社長でしょ? 物を売るには戦略ってもんがいるのよ! このド田舎でいきなりこんなの出したって売れる訳ないじゃん!」
「だから、もう止めたさ。僕だってわかったよ。やっぱりスーパーは普段使う食材を扱わないとダメなんだ。」
「そういう事じゃないの! 例えばこのハーブティー。何なの、このパッケージ。」

 そう! パッケージがあまりにダサくて安っぽい。ご当地キャラクターだか何だか知らないけど、余計なキャラクターに吹き出しが付いていて(飲んでくだ茶い!)と書かれている…。
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