219 / 262
6 全く性格の違う菜々子と夏子が入れ替わった! 会社は? 夫婦生活は? どうすればいいのよ~!
18
しおりを挟む出社すると皆ギョっとした目で私を見た。
「す、鈴原さん…大丈夫なの? 意識不明の重体って聞いたけど…」
「この通りピンピンしてるわよ!」
「そ、そう…。元気そうで安心したわ…。」
年配の女性社員は訝し気に私を見た。元の席に戻って、私の方をチラチラ見ながら他の社員とコソコソ話をしている。何か感じ悪くな~い、この会社! ま、そんな事はどうでもいい! 小太り社長を探さなくては!
「ねぇ、社長って、どこいんの?」
私は目の前に座っていた若い男性社員に聞いた。
「社長室じゃ…ないですか?」
「あっそ。サンキュ。」
その男から社長室の場所を聞くと、私はさっさとこの冴えない部署を後にした。途中、トイレに寄ると、後から女子社員が数名中へ入ってきた。女子社員たちはトイレで用を足すでもなく、立ち話を始めた。
「鈴原さん、何か雰囲気変わったくない?」
「うんうん! 態度デカくなったよね~! 思いっきりタメ口だし! まるで別人!」
「事故って頭おかしくなっちゃったとか?」
「アハハハハ!」
コイツら…鈴原さんって…もしかして私の事言ってんの? 言いたい事抜かしやがって…。
「なんかさ、前はいかにも私いい子ちゃんですって感じで見ててイライラしたけど、今みたいに真逆になるのもムカつかない?」
「要するに、あの子はどうなっても存在がムカつくのよ! だいたいさ、さっさと辞めるように嫌がる仕事ばっか押し付けてきたのに、あの子それが嫌がらせって事、全く気付いてないのよ! それどころかどうでもいい仕事なのに一生懸命しちゃってさぁ。表の草むしりだって、汗ダラダラ流しながら一生懸命やっちゃってさ、健気な自分を男たちに見せつけたいって訳? てか、逆に私たちのこと悪者にしたいって事?」
「そうそう! いつも媚びててさ、私は清楚で可憐な菜々子です! 意地悪な同僚の妬みにも耐えて頑張ってますって、そう言いたいのよ! バカな社長はまんまと騙されちゃってさ!」
「あざといよね~! マジキモっ! さっさとあの小太りと結婚でもすりゃいいのよ!」
小太りと呼んでるのは私だけでは無かったか…。しかし菜々子…思いっきり虐められてんな…。でもあの子のことだからそれにさえも気付いて無かったんだろうね…。
「そうよ! 最初から社長夫人の座を狙ってたんだろっつの! でも、私だったらヤダね、あんな奴の嫁になるの!」
「絶対無理! 想像するだけで鳥肌立つわ!」
「さっさとリストラされるといいのよ。どうせ将来は安泰なんだし!」
リストラ? え、ちょっと待って。私、リストラされんの? この私がぁ~!
「ちょっとあんたたち! 黙って聞いてりゃ言いたい事言ってくれるわね!」
私はトイレのドアを叩き割る勢いで開けて彼女たちの前に出た。彼女たちは驚いて顔が引きつっていた。
「す、鈴原さん…いたの…。人が悪い…言ってくれればよかったのに…。」
「あぁぁ? あんた、人の事ボロカス言ってたその口でよく言うよね?」
「ちょ、ちょっと! その言い方は無いでしょ! 確かに言い方は悪かったかもしれないけど、言ってる事はほぼ事実じゃない…。何、いきなりキャラ変してるのよ! 気持ち悪い。」
女子社員グループの中でも一番若そうな女がいきり立って向かってきた。ふ~ん。この私に歯向かう気? 受けて立ってやろうじゃないの!
「あんたら! 右から順に名前言え!」
「何なのよ、偉そうに…。」
「言えっつってんだろーーーーーーーーーー!」
私は一番右端の女の耳を引っ張って思いっきり叫んだ。女は私に怯えて半泣き状態だ。
「内海です。」
「大橋です。」
「川田です。」
「三上です。」
「…よし。内海! 大橋! 川田! 三上! おまえらの言ったこと真実だって? そうか…真実なら公開されても文句言えねーよなー!」
私はポケットからケータイを取り出した。
「さっきのお前らの会話、全部録音してある。今から社内放送で流してくるわ。」
「…え?」
「おまえらが私にしたパワハラと、社長の悪口もキッチリ録音してあるから。あ~今日の社内放送、楽しみだわ~!」
「キャアアアアアー! ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい! 許して下さい、鈴原さん!」
「じゃあ、これからは仲良くしましょう! ねっ! 内海さん、大橋さん、川田さん、三上さん!」
私は睨みを利かして奴らに笑顔でそう怒鳴り上げた。私の迫力に恐れをなし、取り乱して泣き叫ぶ女たちを置いて、私はさっさと走り去った。ちなみにさっきの会話を録音なんてしてないけど、こうでも言っておいたら奴らも私に金輪際頭が上がらないだろう。これをネタにアイツらを牛耳ってやる! フッフッフッ…。 ハッ! こんなとこで時間を潰している暇は無い。社長室へ向かわなくては!
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
くちびるからラブソング
石田空
ライト文芸
人前だとまともにしゃべれない愛莉は、ひとりでSNSで歌い手として活動している。特に大きくネットで取り上げられることもなく、掃除当番していたところで、歌っているのを聞かれてしまう。
同じクラスで勝手に類友だと思っていた無口な萩本は、有名歌い手のカズスキーだった。
最初はふたりでこっそりと歌い手同士で親しくしていたが、リアルでもネットでも、人の交流をとやかく言ってくる声は消えなくて。
上手くしゃべることはできないけど、歌うことはできるよ。
愛莉は萩本に届ける歌を歌いはじめる。
他サイトでも掲載しています。
エッセイのプロムナード
多谷昇太
ライト文芸
題名を「エッセイのプロムナード」と付けました。河畔を散歩するようにエッセイのプロムナードを歩いていただきたく、そう命名したのです。歩く河畔がさくらの時期であったなら、川面には散ったさくらの花々が流れているやも知れません。その行く(あるいは逝く?)花々を人生を流れ行く無数の人々の姿と見るならば、その一枚一枚の花びらにはきっとそれぞれの氏・素性や、個性と生き方がある(あるいはあった)ことでしょう。この河畔があたかも彼岸ででもあるかのように、おおらかで、充たされた気持ちで行くならば、その無数の花々の「斯く生きた」というそれぞれの言挙げが、ひとつのオームとなって聞こえて来るような気さえします。この仏教の悟りの表出と云われる聖音の域まで至れるような、心の底からの花片の声を、その思考や生き様を綴って行きたいと思います。どうぞこのプロムナードを時に訪れ、歩いてみてください…。
※「オーム」:ヘルマン・ヘッセ著「シッダールタ」のラストにその何たるかがよく描かれています。
幽霊事務局長の穏やかな日常=大病院の平和は下っぱ事務員と霊が守ります=
藤島紫
ライト文芸
【アルファポリス版】
医師でも看護師でもない。大病院の平和は、ただの事務員が体当たりで守っています。
事務仕事が苦手な下っ端事務員、友利義孝(ともりよしたか)。
ある日、彼が出会ったクロネコは、実は幽霊でした。
ところが、同僚の桐生千颯(きりゅうちはや)に言わせれば、それはクロネコではなく、伝説の初代事務局長とのこと。
彼らが伝えようとしていることは何なのか。
ミステリーテイストの病院の日常の物語。
=表紙イラスト、キャラデザイン=
クロ子さん
女装男子は百合乙女の夢を見るか? ✿【男の娘の女子校生活】学園一の美少女に付きまとわれて幼なじみの貞操が危なくなった。
千石杏香
ライト文芸
✿【好きな人が百合なら女の子になるしかない】
男子中学生・上原一冴(うえはら・かずさ)は陰キャでボッチだ。ある日のこと、学園一の美少女・鈴宮蘭(すずみや・らん)が女子とキスしているところを目撃する。蘭は同性愛者なのか――。こっそりと妹の制服を借りて始めた女装。鏡に映った自分は女子そのものだった。しかし、幼なじみ・東條菊花(とうじょう・きっか)に現場を取り押さえられる。
菊花に嵌められた一冴は、中学卒業後に女子校へ進学することが決まる。三年間、女子高生の「いちご」として生活し、女子寮で暮らさなければならない。
「女が女を好きになるはずがない」
女子しかいない学校で、男子だとバレていないなら、一冴は誰にも盗られない――そんな思惑を巡らせる菊花。
しかし女子寮には、「いちご」の正体が一冴だと知らない蘭がいた。それこそが修羅場の始まりだった。
桜吹雪と泡沫の君
叶けい
BL
4月から新社会人として働き始めた名木透人は、高校時代から付き合っている年上の高校教師、宮城慶一と同棲して5年目。すっかりお互いが空気の様な存在で、恋人同士としてのときめきはなくなっていた。
慣れない会社勤めでてんてこ舞いになっている透人に、会社の先輩・渡辺裕斗が合コン参加を持ちかける。断り切れず合コンに出席した透人。そこで知り合った、桜色の髪の青年・桃瀬朔也と運命的な恋に落ちる。
だが朔也は、心臓に重い病気を抱えていた。
一条春都の料理帖
藤里 侑
ライト文芸
一条春都の楽しみは、日々の食事である。自分の食べたいものを作り食べることが、彼にとっての幸せであった。時にはありあわせのもので済ませたり、誰かのために料理を作ってみたり。
今日も理想の食事を追い求め、彼の腹は鳴るのだった。
****
いつも読んでいただいてありがとうございます。
とても励みになっています。これからもよろしくお願いします。
出来損ないの王妃と成り損ないの悪魔
梅雨の人
恋愛
「なぜ助けを求めないんだ?」
あの時あなたはそう私に問いかけてきた。
「あなたの手を取ったらあなたは幸せになれますか、嬉しいですか?」
私がそう問いかけたらあなたは手を差し伸べくれた。
「お前は充分苦しんだ。もう充分だ。」
私をまっすぐに見てくれるあなた、帰る場所を私に与えてくれたあなたについて行きたい、その時、そう心から思えた。
ささやかな毎日を与えてくれるあなたのおかげでようやく私は笑うことも冗談も言えるようになったのに、それなのに…私を突き放したひとがなぜ今更私に会いに来るのですか…?
出てくる登場人物は皆、不器用ですが一生懸命生きてります(汗)
完璧な空想上(ファンタジーよりの)話を書いてみたくて投稿しております。
宜しければご覧くださいませ。
がんばれ、わたしたちのラストダンス
早稲 アカ
ライト文芸
ストリートダンスをがんばっている私。せっかく仲間ができたのに、ママが転勤になってしまい・・・ちょっと切ないけど、それでも明るく前を向く物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる