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5 赤い月が昇る頃、オッドアイの瞳は見つめている。トンネルの向こうに開かれた世界で私を待っているのは誰?
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しおりを挟むなんとか私の気持ちを考慮してくれて、試験が終わってから長い夏休みの間、向こうに滞在することで折り合いをつけた。
この年になっても親って娘が心配なのかな…。
地方から来た同級生は、ほとんどが一人暮らしだというのに…。
明日は早朝から両親を送りに成田へ行く。
早めに寝よう。
カーテンを閉めようと窓の方へ行った。
見上げると月が怪しげなくらい美しく輝いていた。
ふと家の前の道路を見て背筋が凍り付いた。
倉田君がこっちを見上げて立っていた。
しばらく金縛りにかかったように動けなかった。
倉田君は微笑んだまま、口元をゆっくりと動かした。
…お…や…す…み…
そして手を振って去って行った。
私は急いでカーテンを閉めた。
怖くなってベッドに横たわって布団を頭まで被せた。
「ニャ~。」
オッドアイの美しい瞳が私を心配そうに見ている。
「本当は真子もパパとママと一緒に行った方がいいよ。」
ルビーは言う。
「だけど、ルビーはどうなるの? あなたを置いてなんて行けるわけないでしょ?」
「心配してくれてありがとう。だけど私は真子が心配だわ。」
ルビーは私の頬に頭を擦り付けた。
そんな事を彼女が言っているような気がした。
……§§§…§……§§…
「もしこの世界とは別の世界が存在していたらどうする?」
ベッドに横たわったまま、蒼は私の頭を撫でながら聞いてきた。
「う~ん…別にどうすることもないかな…。だって、こっちの世界とは関係ないってことでしょ?」
「じゃ、もし俺がそっちの世界で別の女と付き合ってたらどうすんの?」
「…ま、いい気はしないけど。でもそっちの世界だと私たちそもそも付き合ってないんでしょ? だったらヤキモチ焼きようが無くない?」
「俺、絶対やだ! 違う世界でも真子が他の男と付き合うなんて考えたくも無い! あ~、イライラする!」
蒼はそういうと私をギュっと抱きしめた。
「何? 自分が聞いてきといて…。だいたい在りもしない…」
蒼は私の言葉を遮ってキスしてきた。
そして私の上に追いかぶさって長い長いキスをした。
「絶対嫌だ。俺、何があっても、どこにいても、ずっと真子と一緒にいる…」
「…一緒に………」
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