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5 赤い月が昇る頃、オッドアイの瞳は見つめている。トンネルの向こうに開かれた世界で私を待っているのは誰?
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しおりを挟む「ただいま…。」
猫のルビーは私が帰って来ることをまるで予知していたかのように、玄関ドアを開けると目の前に座って待っていた。
「ミャア~。」
灰色の美しいこの子は、目の色が左右で違う、いわゆるオッドアイで、片方の目がレッド、もう片方がイエロー。
こういう子はとても珍しいらしく、めったに譲ってくれたりしないらしいのだが、幸運にも私の誕生日に母が知り合いから譲り受けた。
オッドアイの猫は幸運を運んでくると言われているらしい。
子猫の頃からうちで飼っていて、もう7年になる。
私はルビーを抱きかかえてリビングへ行った。
リビングに行くと、両親がバタバタと忙しそうにしていた。
「真子、お帰り! ちょっと話があるの。」
私は両親から呼ばれてリビングに行った。
「明日、スイスに行くから準備しなさい。」
「え! どういうこと?」
「とにかく…パパは急遽向こうの研究室に行かなくてはならなくなったんだ。ママも一緒に行く。真子も一緒に行こう。」
「ちょ、ちょっと待ってよ! 明日って…そんないきなり! ルビーはどうなるの? 飛行機に長時間乗せるのはかわいそうだし、置いて行くなんて出来ない! それに大学は? 私にだっていろいろあるのに!」
「わかってる! だけど時間が無いんだ。」
「嫌だよ。入学早々、休学なんてしたくないよ! 前期のテストだってもうじき始まるっていうのに…。」
父と母は顔を見合わせた。
「私、残る! パパとママだけ行ってきて! 大丈夫! 家の事ならちゃんとするし、私、ママとパパを心配させるような事、絶対しないから!」
「…わかった。」
父は静かに言った。
「じゃあ、夏休みに入ったらスイスに来なさい。出来るだけ早く! これは約束だよ。ルビーはパパの知り合いに預かってもらうように頼んでおくから。」
「わかった。そうする!」
「それから…この事は誰にも言ってはいけないよ。」
「わかった。」
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