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14.叙任式
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近衛騎士団の叙任式へ向かう途中、回廊の向かい側から見知った人がやってくる事にファルリンは気がついた。
宮廷魔術師のメフルダードだ。宮廷魔術師の証である簡素なローブを身に纏い少しだけ不機嫌そうな表情で歩いている。
ファルリンは、挨拶だけしてすれ違おうとしていたところを、メフルダードに止められた。
「王の盾になったそうですね」
年若い女性が王の盾を宿していたということは王宮中の噂になっている。特に、若い男性達が色めき立っていることが、メフルダードは気に入らない。
だから、ついファルリンを呼び止めてしまった。様子を伺っている周囲の男達に、最初に目を付けたのは自分であることを認めさせたいのだ。
「はい。陛下にお力を認めていただいて、光栄なことです」
ファルリンは、王の盾として認められたことが嬉しいらしく、頬をほんのり赤くして目を伏せて笑った。可愛らしい表情に、メフルダードは、もやもやした気持ちが霧散していくのがわかった。
「これから叙任式ですか?」
「はい。若輩者ですが、お力になれるように努力していきます」
ファルリンの希望に溢れたきらきらした瞳を、メフルダードは眩しく感じた。ジャハーンダールとして、王として、人の裏側を幼い頃からみてきたのでそのようなキラキラした世界を久しく忘れていた。
「今度、合同訓練で一緒になるかも知れないですね。そのときは、よろしく」
「もちろんです」
ジャハーンダールは、あとで近衛騎士団と魔術師団の合同訓練の時に参加できるように調整しようと心に誓った。
叙任式は、謁見の間で行われる。玉座があると思われるところは、御簾で覆われていて中に人が居るのかすら分からない。
玉座の周囲には国王を支えている重臣達が並んでいる。ファルリンは、中央に立ちその背後には、近衛騎士団全員が整列している。
重臣達や近衛騎士たちはファルリンが、若い女性であること、実力が不明であることをひそひそと噂している。
近衛騎士団長が御簾越しに近衛騎士団の証である曲刀を受け取る。
近衛騎士団長は、ファルリンの父親ほどの年齢の男性で一介の騎士から近衛騎士団長まで上り詰めた精鋭である。名をアーラードという。鍛え上げられた体に、鋭い目つきに立派に整えられた髭、という容貌なので他人からよく怖がられている。
ファルリンは、緊張した面持ちでアーラードから曲刀を受け取った。
叙任式の会場に、宮廷魔術師であるヘダーヤトの姿はあったが、さきほど会ったメフルダードの姿はない。 ファルリンは少し残念に思いながら、叙任式の会場を後にした。
ファルリンは、近衛騎士団の訓練場に向かっていた。さきほど叙任式を行った時に一緒にいた近衛騎士の案内してもらっていた。
ファルリンに積極的に話しかけているのは、近衛騎士のピルーズだ。近衛騎士団のメンバーの殆どが色の濃い髪の毛に、色の濃い肌をしている典型的なヤシャール王国人であるのに対し、ピルーズは金髪に白っぽい肌という異国人の容貌だった。ちょうど、王都に来る途中であった旅人のジャック・スミスと同じような顔立ちだ。年の頃は、ファルリンより少し上といったところだろうか。
「砂漠に住む者なんだろ?やっぱり、弓は得意なのか?」
「そうですね。弓は物心ついたときにはすでに扱い始めます。他の得物よりは慣れ親しんでいます」
「へぇ。弓術もみたいな-。俺、槍だったら誰にも負けない自信があるんだよな」
軽い調子でピルーズは話を続ける。王宮の回廊を抜けて、一端外に出ると馬や駱駝が繋がれている厩舎へと向かう。厩舎の近くに近衛騎士団の訓練場があった。 訓練場は、飾り気のないレンガ造りの建物でかなりの広さがとられていた。近衛騎士団はここで毎日訓練をしているのだ。
ファルリンが新たなメンバーであることを、騎士団長が伝えると叙任式では出なかった不満が、近衛騎士達からでてきた。
(やっぱり、言われると思った)
ファルリンの不安は的中した。若い女性であることはこういう事に向いていないというのは、一般的なことだ。
「実力がみたいです!そうでなければ、納得いきません」
近衛騎士達からの意見を、アーラードは面白そうにきいている。一通り似たような意見を聞き終えると、アーラードは、ファルリンを見た。
「百聞は一見にしかずだ、前にでろファルリン」
ファルリンは、黙って立ち上がって整列している隊の前に出た。
「さきほどから、ずっと実力が見たいといっていた、モラード前にでろ」
移動する間もずっとファルリンの文句を、聞こえよがしに仲間達と言い合っていた男である。
「手加減はしない。怪我をしたくなければ、地位を返上し砂漠に帰れ」
「帰りません」
ファルリンははっきり答えて、訓練用の曲刀を構えた。ファルリンに言い換えされて、不機嫌な顔をしているモラードも剣を構えた。
宮廷魔術師のメフルダードだ。宮廷魔術師の証である簡素なローブを身に纏い少しだけ不機嫌そうな表情で歩いている。
ファルリンは、挨拶だけしてすれ違おうとしていたところを、メフルダードに止められた。
「王の盾になったそうですね」
年若い女性が王の盾を宿していたということは王宮中の噂になっている。特に、若い男性達が色めき立っていることが、メフルダードは気に入らない。
だから、ついファルリンを呼び止めてしまった。様子を伺っている周囲の男達に、最初に目を付けたのは自分であることを認めさせたいのだ。
「はい。陛下にお力を認めていただいて、光栄なことです」
ファルリンは、王の盾として認められたことが嬉しいらしく、頬をほんのり赤くして目を伏せて笑った。可愛らしい表情に、メフルダードは、もやもやした気持ちが霧散していくのがわかった。
「これから叙任式ですか?」
「はい。若輩者ですが、お力になれるように努力していきます」
ファルリンの希望に溢れたきらきらした瞳を、メフルダードは眩しく感じた。ジャハーンダールとして、王として、人の裏側を幼い頃からみてきたのでそのようなキラキラした世界を久しく忘れていた。
「今度、合同訓練で一緒になるかも知れないですね。そのときは、よろしく」
「もちろんです」
ジャハーンダールは、あとで近衛騎士団と魔術師団の合同訓練の時に参加できるように調整しようと心に誓った。
叙任式は、謁見の間で行われる。玉座があると思われるところは、御簾で覆われていて中に人が居るのかすら分からない。
玉座の周囲には国王を支えている重臣達が並んでいる。ファルリンは、中央に立ちその背後には、近衛騎士団全員が整列している。
重臣達や近衛騎士たちはファルリンが、若い女性であること、実力が不明であることをひそひそと噂している。
近衛騎士団長が御簾越しに近衛騎士団の証である曲刀を受け取る。
近衛騎士団長は、ファルリンの父親ほどの年齢の男性で一介の騎士から近衛騎士団長まで上り詰めた精鋭である。名をアーラードという。鍛え上げられた体に、鋭い目つきに立派に整えられた髭、という容貌なので他人からよく怖がられている。
ファルリンは、緊張した面持ちでアーラードから曲刀を受け取った。
叙任式の会場に、宮廷魔術師であるヘダーヤトの姿はあったが、さきほど会ったメフルダードの姿はない。 ファルリンは少し残念に思いながら、叙任式の会場を後にした。
ファルリンは、近衛騎士団の訓練場に向かっていた。さきほど叙任式を行った時に一緒にいた近衛騎士の案内してもらっていた。
ファルリンに積極的に話しかけているのは、近衛騎士のピルーズだ。近衛騎士団のメンバーの殆どが色の濃い髪の毛に、色の濃い肌をしている典型的なヤシャール王国人であるのに対し、ピルーズは金髪に白っぽい肌という異国人の容貌だった。ちょうど、王都に来る途中であった旅人のジャック・スミスと同じような顔立ちだ。年の頃は、ファルリンより少し上といったところだろうか。
「砂漠に住む者なんだろ?やっぱり、弓は得意なのか?」
「そうですね。弓は物心ついたときにはすでに扱い始めます。他の得物よりは慣れ親しんでいます」
「へぇ。弓術もみたいな-。俺、槍だったら誰にも負けない自信があるんだよな」
軽い調子でピルーズは話を続ける。王宮の回廊を抜けて、一端外に出ると馬や駱駝が繋がれている厩舎へと向かう。厩舎の近くに近衛騎士団の訓練場があった。 訓練場は、飾り気のないレンガ造りの建物でかなりの広さがとられていた。近衛騎士団はここで毎日訓練をしているのだ。
ファルリンが新たなメンバーであることを、騎士団長が伝えると叙任式では出なかった不満が、近衛騎士達からでてきた。
(やっぱり、言われると思った)
ファルリンの不安は的中した。若い女性であることはこういう事に向いていないというのは、一般的なことだ。
「実力がみたいです!そうでなければ、納得いきません」
近衛騎士達からの意見を、アーラードは面白そうにきいている。一通り似たような意見を聞き終えると、アーラードは、ファルリンを見た。
「百聞は一見にしかずだ、前にでろファルリン」
ファルリンは、黙って立ち上がって整列している隊の前に出た。
「さきほどから、ずっと実力が見たいといっていた、モラード前にでろ」
移動する間もずっとファルリンの文句を、聞こえよがしに仲間達と言い合っていた男である。
「手加減はしない。怪我をしたくなければ、地位を返上し砂漠に帰れ」
「帰りません」
ファルリンははっきり答えて、訓練用の曲刀を構えた。ファルリンに言い換えされて、不機嫌な顔をしているモラードも剣を構えた。
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